資格ジュピター条文穴埋め・判例演習

行政不服審査法と行政事件訴訟法の違い

行政書士試験の行政法では、行政不服審査法(行審法)と行政事件訴訟法(行訴法)を比べる問題が繰り返し出ます。 どちらも「違法な処分への救済」の制度ですが、判断する機関、期間、執行停止、教示などで細かく違います。 このページでは、資格ジュピターに収録した現行条文の番号つきで、違いを対照表にまとめました。

仕組みの違い

まず全体像です。申立先、審理の対象、期間、審理の進め方、そして違法でも請求を棄却する場合(事情裁決・事情判決)を比べます。 カッコ内の数字は、行審法の欄は行審法、行訴法の欄は行訴法の条番号です(「両者の関係」の行は行訴法の条文です)。

論点行政不服審査法行政事件訴訟法
申立先審査庁に審査請求をする。審査庁は、処分庁等に上級行政庁がないときは処分庁等、あるときは最上級行政庁などになる(4条)裁判所に取消訴訟などを提起する
審理の対象違法又は不当な処分(1条1項)と不作為処分の違法性。裁量処分は、裁量権の範囲を超え又はその濫用があった場合に限り取り消せる(30条)
期間(処分の取消しを求める場合)処分があったことを知った日の翌日から3か月、処分の日の翌日から1年(18条1項・2項)。正当な理由があれば例外処分又は裁決があったことを知った日から6か月、処分又は裁決の日から1年(14条1項・2項)。正当な理由があれば例外
両者の関係審査請求ができる処分でも、直ちに取消訴訟を提起できる(自由選択主義。行訴法8条1項本文)法律に「裁決を経た後でなければ提起できない」旨の定め(審査請求前置)があるときは、先に裁決を経る(8条1項ただし書)
審理の進め方審理員が指名され(9条)、弁明書(29条)・反論書などの書面のやり取りが中心。申立てがあれば口頭で意見を述べる機会を与える(31条)口頭弁論を行い、この法律に定めのない事項は民事訴訟の例による(7条)。裁判所は職権で証拠調べもできる(24条)
違法でも請求を棄却する場合事情裁決:公共の福祉に適合しないときは棄却し、裁決の主文で処分が違法又は不当であることを宣言する(45条3項)事情判決:公共の福祉に適合しないときは請求を棄却し、判決の主文で処分が違法であることを宣言する(31条1項)
結論の拘束力「裁決は、関係行政庁を拘束する。」(52条1項)「処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、…関係行政庁を拘束する。」(33条1項)
処分の差止め処分の差止めを求める不服申立ての明文規定はない差止めの訴えがある(3条7項・37条の4)

執行停止の違い(どちらも25条)

執行停止は、条番号が同じ25条で、出題されやすいところです。原則が「執行不停止」であること、 「重大な損害を避けるため緊急の必要」が要件の中心であることは共通ですが、誰が決めるか、義務的な執行停止があるか、 内閣総理大臣の異議があるかが違います。

論点行政不服審査法(25条)行政事件訴訟法(25条)
原則審査請求は処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない(執行不停止。1項)取消訴訟の提起は処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない(執行不停止。1項)
誰が、どのように決めるか処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁は、申立てにより又は職権で行う(2項)。そのどちらでもない審査庁は、申立てにより、処分庁の意見を聴取したうえで行う(3項)裁判所が、申立てにより、決定で行う(2項)。職権ではできない
とれる措置処分の効力・執行・手続の続行の停止その他の措置(2項)。上級行政庁・処分庁のいずれでもない審査庁は、停止以外の措置はとれない(3項ただし書)処分の効力・執行・手続の続行の全部又は一部の停止(2項)。処分の効力の停止は、執行又は手続の続行の停止で目的を達せるときはできない(2項ただし書)
要件必要があると認める場合(2項・3項)重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき(2項)。「償うことができない損害」ではない
義務的な執行停止申立てがあり、重大な損害を避けるため緊急の必要があると認めるときは、執行停止をしなければならない(4項本文)規定はない(することができる、という規定)
できない場合公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、義務的な執行停止の対象外(4項ただし書)公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、することができない(4項)
手続・不服申立て審理員は、執行停止をすべき旨の意見書を提出できる(40条)。申立てがあれば、審査庁は速やかに執行停止をするかどうかを決定する(7項)疎明に基づいてし(5項)、口頭弁論を経ないですることができる(6項)。即時抗告ができるが、執行を停止する効力はない(7項・8項)
事情の変更公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが明らかとなったとき、その他事情が変更したときは、審査庁は取り消すことができる(26条)決定が確定した後に理由が消滅し、その他事情が変更したときは、相手方の申立てにより、決定で取り消すことができる(26条1項)
内閣総理大臣の異議規定はない申立てがあった場合(決定後も)、内閣総理大臣は異議を述べることができる。異議があれば執行停止はできず、すでにした決定は取り消される(27条)

教示の違い

教示は、処分の相手方が「どこに、いつまでに、何ができるか」を知るための制度で、両法に定めがあります。 教示する事項と、教示がなかったときの救済が違います。

論点行政不服審査法行政事件訴訟法
教示が必要な場合(行審法82条1項、行訴法46条1項)審査請求・再調査の請求などの不服申立てができる処分をするとき取消訴訟を提起することができる処分又は裁決をするとき
教示する事項不服申立てができる旨、不服申立てをすべき行政庁、不服申立てができる期間取消訴訟の被告とすべき者、出訴期間、審査請求前置の定めがあるときはその旨
教示の相手方処分の相手方。利害関係人から求められたときも教示する(82条2項)。書面での教示を求められたときは書面でする(同条3項)処分又は裁決の相手方
方式書面でする。ただし、処分を口頭でするときは不要書面でする。ただし、処分を口頭でするときは不要
教示に関する救済教示がなかったときは、処分庁に不服申立書を提出できる(83条1項)。処分庁以外の行政庁に審査請求ができる処分なら、処分庁が書面を送付し、初めからその行政庁に審査請求があったものとみなす(同条3項・4項)行政庁が誤って審査請求ができる旨を教示した場合に、審査請求をしたときは、裁決を知った日から6か月、裁決の日から1年で提起できる(14条3項)

判断のポイント

  • 内閣総理大臣の異議は、行訴法27条だけの制度です。行審法の執行停止には、この制度はありません。

    出題:行政書士 令和6年度 問16

  • 「正当な理由があるときは、この限りでない」というただし書きは、行訴法14条だけでなく、行審法18条の審査請求期間にもあります。

    出題:行政書士 令和6年度 問16

  • 執行停止の要件は「重大な損害を避けるため緊急の必要があること」で、「償うことができない損害」ではありません。決定は疎明に基づき、口頭弁論は不要、申立てが必要です(行訴法)。

    出題:行政書士 令和元年度 問17

  • 上級行政庁でも処分庁でもない審査庁も、申立てにより執行停止ができます。ただし、処分庁の意見を聴取したうえで、停止に限られます。

    出題:行政書士 令和3年度 問14

  • 処分を口頭でする場合は、行審法でも行訴法でも教示は不要です。「口頭でも書面で教示しなければならない」は誤りです。

    出題:行政書士 令和4年度 問16

この論点が出た過去問

行政書士試験で、行審法と行訴法の違いを直接問うた問題です。表の内容を確認してから、肢ごとの正誤の理由を見てください。

  • 令和6年度 問16行審法と行訴法の違い(期間のただし書き、教示、拘束力、執行停止、差止め)
  • 令和3年度 問14行審法の執行停止(義務的な執行停止、取消し、再調査の請求、審理員の意見書)
  • 令和元年度 問17行訴法の執行停止(疎明・口頭弁論、申立て、要件、効力の停止)
  • 令和4年度 問16行審法の教示(口頭の処分、利害関係人への教示、教示がなかったとき、再審査請求)

条文は、行政不服審査法と行政事件訴訟法の全文ページで確認できます。 ほかの年度の問題は行政書士の過去問から探せます。

よくある質問

行政不服審査法と行政事件訴訟法の一番大きな違いは何ですか?
判断する機関と審査の範囲です。行審法は行政庁(審査庁)が、処分の違法だけでなく不当についても審査します。行訴法は裁判所が、処分の違法性を審査します。どちらを先に使うかは原則として自由で、法律に審査請求前置の定めがあるときだけ、先に裁決を経る必要があります。
執行停止の要件は、行審法と行訴法で同じですか?
行訴法は、重大な損害を避けるため緊急の必要があるときに、裁判所が申立てにより執行停止をすることができます。行審法は、必要があると認めるときに審査庁が執行停止をすることができ(2項・3項)、重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、執行停止をしなければなりません(4項)。どちらも、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときや本案について理由がないとみえるときは認められません。また、内閣総理大臣の異議(27条)は行訴法にだけある制度です。
教示は、口頭で処分をする場合も必要ですか?
不要です。行審法82条1項と行訴法46条1項は、どちらも「処分を口頭でする場合は、この限りでない」とするただし書きを置いています。
審査請求と取消訴訟は、どちらを先にしなければなりませんか?
原則として自由に選べます(自由選択主義。行訴法8条1項本文)。個別の法律に「審査請求に対する裁決を経た後でなければ取消訴訟を提起できない」という定めがあるときだけ審査請求が先になります。この場合も、審査請求から3か月たっても裁決がないとき、緊急の必要があるとき、その他正当な理由があるときは、裁決を経ないで訴えを提起できます(同条2項)。

条文は資格ジュピターに収録した現行の条文(e-Gov法令検索)に基づきます。試験では出題時の法令が基準になるため、法改正のあった年度の問題は条文を確認してください。