第四章 債務者の財産状況の調査/第一節 財産開示手続
民事執行法 第197条(実施決定)
この条の要点
- 財産開示申立ての要件(弁済不能):財産開示申立てには債務名義+既知財産への執行でも弁済不能であることが必要。
- 過去の開示実施による申立て制限と例外:3年内の前回開示でも、未開示財産判明・新財産取得・雇用終了なら再申立て可(例外3号)。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第197条(実施決定)
執行裁判所は、次の各号のいずれかに該当するときは、執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者の申立てにより、債務者について、財産開示手続を実施する旨の決定をしなければならない。ただし、当該執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行を開始することができないときは、この限りでない。
一 強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より六月以上前に終了したものを除く。)において、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得ることができなかつたとき。
二 知れている財産に対する強制執行を実施しても、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得られないことの疎明があつたとき。
②執行裁判所は、次の各号のいずれかに該当するときは、債務者の財産について一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者の申立てにより、当該債務者について、財産開示手続を実施する旨の決定をしなければならない。
一 強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より六月以上前に終了したものを除く。)において、申立人が当該先取特権の被担保債権の完全な弁済を得ることができなかつたとき。
二 知れている財産に対する担保権の実行を実施しても、申立人が前号の被担保債権の完全な弁済を得られないことの疎明があつたとき。
③前二項の規定にかかわらず、債務者(債務者に法定代理人がある場合にあつては当該法定代理人、債務者が法人である場合にあつてはその代表者。第一号において同じ。)が前二項の申立ての日前三年以内に財産開示期日(財産を開示すべき期日をいう。以下同じ。)においてその財産について陳述をしたものであるときは、財産開示手続を実施する旨の決定をすることができない。ただし、次の各号に掲げる事由のいずれかがある場合は、この限りでない。
一 債務者が当該財産開示期日において一部の財産を開示しなかつたとき。
二 債務者が当該財産開示期日の後に新たに財産を取得したとき。
三 当該財産開示期日の後に債務者と使用者との雇用関係が終了したとき。
④第一項又は第二項の決定がされたときは、当該決定(同項の決定にあつては、当該決定及び同項の文書の写し)を債務者に送達しなければならない。
⑤第一項又は第二項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
⑥第一項又は第二項の決定は、確定しなければその効力を生じない。
この条文の〇×問題(2問)
財産開示申立ての要件(弁済不能)
財産開示手続の申立ては、金銭債権の債務名義の正本を有する債権者であれば、強制執行によっても完全な弁済を得られないことを問わず、いつでもすることができる。
正解と解説を見る
正解 ×
誤り。財産開示手続の申立ては、債務名義を有するだけでなく、知れている財産に対する強制執行をしても完全な弁済を得られないこと(弁済不能)が要件である。債務名義があれば随時使える手続ではなく、執行不能の実害が前提となる。
学習ポイント:財産開示申立てには債務名義+既知財産への執行でも弁済不能であることが必要。
第197条1項1号・2号
過去の開示実施による申立て制限と例外
債務者が申立ての日前三年以内に財産開示期日で財産について陳述していた場合でも、前回の手続で開示されなかった財産の存在を債権者が知ったときや、債務者が陳述後に新たに財産を取得したときは、財産開示手続を実施することができる。
正解と解説を見る
正解 ○
正しい。債務者が申立ての日前3年以内に財産開示期日で財産について陳述していたときは、原則として財産開示手続を実施する旨の決定をすることができない(197条3項本文)。ただし、前回開示されなかった財産があったとき、陳述後に新たに財産を取得したとき、陳述後に雇用関係が終了したときは、この限りでない(同項ただし書各号)。
学習ポイント:3年内の前回開示でも、未開示財産判明・新財産取得・雇用終了なら再申立て可(例外3号)。
第197条3項各号
根拠・関連条文
この条文を解説で参照する過去問
司法書士令和6年度 問42ア
債務者の財産について一般の先取特権を有する債権者であっても、その被担保債権について執行力のある債務名義の正本を有しない場合には、当該債務者について、財産開示手続を申し立てることができない。
正誤と理由を見る
誤り
誤り。一般の先取特権を有する債権者は、その旨を証する文書を提出すれば、債務名義の正本がなくても財産開示手続を申し立てることができる(民執197条2項)。
司法書士令和2年度 問42オ
正誤と理由を見る
誤り
誤り。財産開示手続の申立ては、強制執行等で完全な弁済を得られなかったことを疎明した場合に限られず、知られた財産に対する強制執行を実施しても完全な弁済を得る見込みがないことを疎明した場合や、債務者が強制執行の目的となる財産を有しないことを疎明した場合にも認められる(民執197条1項)。
解説で第197条を参照している問
問題で確認する
第197条の内容は2問の〇×問題と2問の条文穴埋めで確認できます。