第二編 物権/第八章 先取特権/第一節 総則
民法 第304条(物上代位)
重要度は過去問の出題年度などをもとにした当サイトの評価です。
この条の要点
- 物上代位における差押えの時期:物上代位には払渡し・引渡し前の差押えが不可欠で、後の差押えでは間に合わない。
- 賃料債権への物上代位:物上代位の対象は売却代金だけでなく、賃料・滅失・損傷の代価にも及ぶ。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第304条(物上代位)
先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
②債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。
条文の要点
物上代位とは、目的物の売却・賃貸・滅失・損傷で債務者が受けるはずの金銭などの代価にも先取特権が及ぶ効力です(304条1項)。
行使には、代価が債務者に払い渡され、又は引き渡される前の差押えが要ります。既に渡った後では差し押さえるべき債権が残らず、目的物に設定された物権の対価にも同じ仕組みで及びます。
物上代位の要件となる差押えの時期
「払渡又は引渡」には債権譲渡が含まれません。抵当権への準用の場面では、登記が対抗要件になるため、目的債権が譲渡され対抗要件が備わった後でも差押えによる代位ができます(判例)。これに対し、公示方法のない動産売買の先取特権では、譲渡・対抗要件具備後は代位できないとされています(判例)。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項本文 | 効果 | 目的物の売却・賃貸・滅失・損傷から生じる代価にも権利の効力が及ぶ |
| 1項ただし書 | 要件 | 代価が債務者に渡る前に、先取特権者が差押えをしなければならない |
| 2項 | 効果 | 目的物に設定された物権の対価にも、同様に効力が及ぶ |
具体例
Aは機械をBに売り、代金が払われないまま引き渡しました(動産売買の先取特権)。Bはその機械をCに転売しました。
AはCへの転売代金債権がBに支払われる前に差し押さえれば、その債権に物上代位できます。
反例(結論が変わる)
同じ設定で、CからBへの転売代金の支払が済んだ後にAが差押えをした場合に変えます。
払渡し後は差押えの対象となる債権が債務者Bに残っていないため、物上代位できません。
関連条との違い
過去問で誤りとされた肢の型
- 宅建平成25年 問5肢1
賃料債権への物上代位は被担保債権の弁済期を待たずにできるとする誤り。競売と同様に弁済期の到来が要る(判例)
- 行政書士平成26年 問30肢3
動産売買の先取特権でも目的債権の譲渡・対抗要件具備後に差押えによる代位ができるとする誤り。公示のない先取特権では譲受人の保護が優先される
- 宅建平成24年 問7肢1
一般債権者が先に賃料債権を差し押さえれば抵当権者は物上代位できないとする誤り。抵当権は登記が対抗要件になるので先後で負けない
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
判例
動産売買先取特権の物上代位と目的債権の譲渡最高裁判所第三小法廷 2005年2月22日
公示方法のない動産売買の先取特権では、物上代位の目的債権が譲渡され第三者対抗要件が備えられた後は、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使できない
抵当権の物上代位と「払渡又は引渡」の意義最高裁判所第二小法廷 1998年1月30日
抵当権に準用される304条1項の「払渡又は引渡」には債権譲渡が含まれず、抵当権者は目的債権が譲渡され第三者対抗要件が備えられた後でも、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使できる
法令版: 2026年6月24日施行版
この条文の〇×問題(2問)
物上代位における差押えの時期
先取特権の目的物が売却され、債務者が売却代金の支払を既に受けた後であっても、先取特権者はその代金に対して先取特権を行使することができる。
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正解 ×
誤り。民法304条1項ただし書は、先取特権者はその払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならないと定める。代金が債務者に払い渡された後では差押えの時機を既に失っており、その代金に対する物上代位は認められない。
学習ポイント:物上代位には払渡し・引渡し前の差押えが不可欠で、後の差押えでは間に合わない。
第304条1項ただし書
賃料債権への物上代位
先取特権の目的物が賃貸に付された場合にも、債務者が受けるべき賃料債権に対して先取特権を行使することができる。
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正解 ○
正しい。民法304条1項は、目的物の売却だけでなく賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物にも先取特権を行使できるとする。賃料債権は賃貸の対価として物上代位の対象となる(払渡し前の差押えは別途必要)。
学習ポイント:物上代位の対象は売却代金だけでなく、賃料・滅失・損傷の代価にも及ぶ。
第304条1項
根拠・関連条文
この条文を解説で参照する過去問
行政書士平成26年 問30肢1
対抗要件を備えた抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され、譲受人が第三者に対する対抗要件を備えた後であっても、第三債務者がその譲受人に対して弁済する前であれば、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。
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正しい
目的債権の譲受人が対抗要件を備えた後でも第三債務者が弁済する前なら抵当権者は目的債権を差し押さえて物上代位できる(判例・372条による304条準用)。正しい。
行政書士平成26年 問30肢3
動産売買の先取特権に基づく物上代位につき、動産の買主が第三取得者に対して有する転売代金債権が譲渡され、譲受人が第三者に対する対抗要件を備えた場合であっても、当該動産の元来の売主は、第三取得者がその譲受人に転売代金を弁済していない限り、当該転売代金債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。
正誤と理由を見る
誤り
先取特権の物上代位は差押えの先後で効力を争うため、転売代金債権が譲渡され対抗要件が備えられた後は売主は差押えによる物上代位ができない(判例)。誤り。
行政書士平成26年 問30肢4
動産売買の先取特権に基づく物上代位につき、買主がその動産を用いて第三者のために請負工事を行った場合であっても、当該動産の請負代金全体に占める価格の割合や請負人(買主)の仕事内容に照らして、請負代金債権の全部または一部をもって転売代金債権と同視するに足りる特段の事情が認められるときは、動産の売主はその請負代金債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。
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正しい
請負代金債権について転売代金債権と同視しうる特段の事情があれば差押えによる物上代位が可能(判例)。正しい。
司法書士令和8年度 問13ア
抵当権者は、抵当権設定登記がされた後に物上代位の目的となる金銭債権が転付命令の確定により差押債権者に移転したときであっても、その後に当該金銭債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。
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誤り
誤り。転付命令の確定により物上代位の目的債権が差押債権者に移転した後は、抵当権者はその債権を差し押さえて物上代位を行使できない(判例)。
司法書士令和8年度 問13イ
動産売買の先取特権を有する者は、債務者が第三者に当該先取特権の目的である動産を売却したときは、その売却に係る代金債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。
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正しい
正しい。動産売買の先取特権者は、目的動産の売却代金債権を差し押さえて物上代位権を行使できる(321条・304条)。
司法書士令和8年度 問13ウ
抵当権者は、抵当権設定登記がされた後、物上代位の目的となる金銭債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が備えられたときは、当該金銭債権を差し押さえて物上代位権を行使することができない。
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誤り
誤り。抵当権の物上代位は抵当権設定登記により対抗要件を備えているため、目的債権が第三者に譲渡され対抗要件が具備された後でも、抵当権者はその債権を差し押さえて物上代位を行使できる(判例)。
司法書士令和7年度 問12イ
動産の売買の先取特権者は、物上代位の目的債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が備えられた後においては、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができない。
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正しい
正しい。動産売買の先取特権者は、物上代位の目的債権が譲渡されて第三者対抗要件が備えられた後は、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使できない(最判平17.2.22)。304条1項ただし書は公示方法のない動産売買の先取特権では譲受人等第三者保護の趣旨を含むとされた。
司法書士令和3年度 問11ウ
動産の売主は、その動産が転売され、その転売に係る売買代金請求権が他の債権者によって差し押さえられた場合には、当該売買代金請求権について動産売買先取特権に基づく物上代位権を行使することができない。
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誤り
誤り。先取特権は、債務者が目的動産を第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使できない(333条)が、物上代位により転売代金請求権について行使できる(304条)。
司法書士令和3年度 問13ウ
建物の抵当権者による当該建物の賃料請求権に対する物上代位権の行使は、被担保債権について債務不履行がなくても、することができる。
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誤り
誤り。賃料債権への物上代位権の行使は、被担保債権について不履行があったとき(弁済期到来後)に限りできる(371条・304条、最判平元.10.27)。債務不履行前の賃料債権には及ばない。
司法書士令和3年度 問13オ
Aのための抵当権の設定の登記がされた後に、抵当権の設定者Bが抵当不動産をCに賃貸し、その賃料債権をDに譲渡した場合には、当該債権譲渡について第三者対抗要件が具備された後においても、Aは自らその賃料債権を差し押さえて、物上代位権を行使することができる。
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正しい
正しい。物上代位の目的債権が譲渡され第三者対抗要件を備えた後でも、抵当権者は自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使できる。304条の「払渡又は引渡」に債権譲渡は含まれない(最判平10.1.30)。
ほか7肢は、各過去問のページで確認できます。
問題で確認する
第304条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。