第四章 登記手続/第一節 総則
不動産登記法 第22条(登記識別情報の提供)
この条の要点
- 登記識別情報の提供義務:共同申請では義務者の識別情報提供が原則。正当理由で免れる。
- 識別情報提供不能時の扱い:識別情報を提供できない正当理由があれば通知・申出手続へ。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第22条(登記識別情報の提供)
登記権利者及び登記義務者が共同して権利に関する登記の申請をする場合その他登記名義人が政令で定める登記の申請をする場合には、申請人は、その申請情報と併せて登記義務者(政令で定める登記の申請にあっては、登記名義人。次条第一項、第二項及び第四項各号において同じ。)の登記識別情報を提供しなければならない。ただし、前条ただし書の規定により登記識別情報が通知されなかった場合その他の申請人が登記識別情報を提供することができないことにつき正当な理由がある場合は、この限りでない。
条文の要点
登記識別情報とは、権利に関する登記の申請で、登記義務者等の本人確認のため申請情報と併せて提供する情報です(22条1項)。
共同申請等では義務者の識別情報を原則として提供します。提供不能の正当理由があれば不要で、23条の事前通知によります。ただし同条4項の本人確認情報や公証人の認証を登記官が相当と認める場合には、事前通知を要しません。
登記識別情報の提供義務
提供するのは申請人が持つ登記義務者の識別情報で、政令で定める申請では登記名義人のものです。仮登記の名義人が単独で抹消を申請するときも、抹消される側が義務者の立場なので提供を要します。提供できない正当理由があるときは原則として23条の通知と申出によります。同条4項の例外では事前通知を要しません。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項本文 | 要件 | 共同申請等では義務者の識別情報を申請情報と併せて提供しなければならない |
| 1項ただし書 | 例外 | 識別情報が通知されない等、提供できない正当理由がある場合は提供を要しない |
具体例
売主Aと買主Bが共同で、AからBへの所有権移転登記を申請する。BはAの登記識別情報を申請情報と併せて提供する。
申請人が義務者Aの識別情報を提供したので、22条の提供要件を満たす。
反例(結論が変わる)
同じ設定で、Aには識別情報が通知されておらず、BがAの識別情報を提供できない正当理由がある場合に変える。
22条ただし書により提供を要しない。23条4項の例外がなければ、登記官はAへの事前通知と申出による手続を行う。
関連条との違い
- 不動産登記法 第21条:21条は登記名義人になる申請人へ識別情報を通知する側の規定。22条はその情報を後の申請で使って義務者の本人確認をする側
- 不動産登記法 第23条:23条は原則として事前通知・申出で本人性を確認し、4項では資格者代理人の本人確認情報等による例外を定める。22条は情報提供義務と免除の規定
- 不動産登記法 第60条:60条の共同申請の原則と組で働く。義務者が申請に関与したことを識別情報で担保する
過去問で誤りとされた肢の型
- 司法書士令和4年度 問61エ
仮登記名義人の単独抹消では識別情報が要らないとする誤り。仮登記の抹消でも名義人の識別情報を提供する
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
法令版: 2026年6月24日施行版
この条文の〇×問題(2問)
登記識別情報の提供義務
売買による所有権移転登記のように権利者と義務者が共同で権利に関する登記を申請する際は、原則として申請情報と一緒に登記義務者の登記識別情報を提供することが求められる。
正解と解説を見る
正解 ○
正しい。共同申請の場合は本人確認のため登記義務者の登記識別情報の提供が原則として必要である。ただし識別情報が通知されなかった場合等の正当な理由があるときは提供を要しない。識別情報の提供は登記義務者が確かに申請に関与していることを確認する本人確認手段として機能する原則的義務である。
学習ポイント:共同申請では義務者の識別情報提供が原則。正当理由で免れる。
第22条本文
識別情報提供不能時の扱い
申請人が登記義務者の登記識別情報を提供することができない場合は、いかなる事情があっても登記の申請は受理されず、例外的な救済手続は用意されていない。
正解と解説を見る
正解 ×
誤り。登記識別情報が通知されなかった場合その他提供できないことにつき正当な理由がある場合は提供を要しない。この場合、登記官が登記義務者に通知して申出を求める手続に移行する。識別情報が通知されなかった場合等の正当理由があるときは提供を要せず、登記官の通知・申出手続に移行する仕組みがある。
学習ポイント:識別情報を提供できない正当理由があれば通知・申出手続へ。
第22条但書、第23条1項
根拠・関連条文
この条文を解説で参照する過去問
司法書士令和4年度 問61エ
Bが売買予約の解除を原因とする本件仮登記の抹消を単独で申請する場合には、本件仮登記が完了した際に通知された登記識別情報を提供することを要しない。
正誤と理由を見る
誤り
誤り。仮登記名義人が単独で抹消を申請する場合は登記義務者の立場であり、登記識別情報の提供を要する(22条・令8条1項9号)。
司法書士平成31年度 問53オ
登記権利者と登記義務者が共同して ( )の設定の登記の抹消を申請するときは、登記義務者の登記識別情報を提供することを要しない。
正誤と理由を見る
対象外
対象外。賃借権の設定の登記の抹消では、登記義務者である賃借権者の登記識別情報を提供しなければならない(不動産登記法22条)。地役権の設定の登記の抹消でも、登記義務者である要役地の所有権の登記名義人が、要役地についての登記識別情報を提供する(登記先例)。いずれも提供を要するから、どちらを入れても誤りとなる。
司法書士平成28年度 問52エ
Aが所有権の登記名義人である甲土地について、Aを債務者とする抵当権が設定されている場合において、Aの債務をBが引き受けたときは、登記識別情報を提供した上でする当該抵当権の債務者を変更する登記の申請に際して、Aの印鑑に関する証明書を添付情報とすることを要しない。
正誤と理由を見る
正しい
正しい。所有権の登記名義人が登記義務者となる抵当権の債務者の変更の登記を、登記識別情報を提供して申請する場合には、登記義務者の印鑑に関する証明書の添付を要しない(不動産登記令16条2項・不動産登記規則47条)。
司法書士平成26年度 問47ア
甲土地にAを抵当権者とする抵当権の設定の仮登記がされている場合において、Aが単独で当該仮登記の抹消を申請するときは、Aに対して通知された登記識別情報を提供しなければならない。
正誤と理由を見る
正しい
正しい。仮登記の登記名義人が単独で仮登記の抹消を申請する場合、申請人は登記識別情報を提供しなければならない(不動産登記法22条・不動登令8条1項9号)。
司法書士平成25年度 問60イ
A社を抵当権者とする抵当権について、会社分割を登記原因とするB社への抵当権の移転の登記を申請するときは、当該抵当権の設定の登記の際に通知された登記識別情報を提供しなければならない。
正誤と理由を見る
正しい
正しい。会社分割による権利の移転の登記も原則どおり共同申請であり(不登法60条)、登記義務者であるA社の登記識別情報の提供を要する(不登法22条)。
問題で確認する
第22条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。