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第二章 強制執行/第二節 金銭の支払を目的とする債権についての強制執行/第四款 債権及びその他の財産権に対する強制執行/第一目 債権執行等

民事執行法 第156条(第三債務者の供託)

分野:強制執行/金銭の支払を目的とする債権についての強制執行/債権及びその他の財産権に対する強制執行・強制執行/金銭の支払を目的とする債権についての強制執行/扶養義務等に係る金銭債権についての強制執行の特例

出題試験:司法書士

この条の要点

  • 第三債務者の供託の法的性質:第三債務者の供託は権利だが、超過差押・配当要求送達・供託命令で義務供託となる。
  • 供託の場所と届出:第三債務者の供託先は債務の履行地の供託所。供託したら執行裁判所へ届出義務。

条文原文

色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。

第156条(第三債務者の供託)

第三債務者は、差押えに係る金銭債権(差押命令により差し押さえられた金銭債権に限る。以下この条及び第百六十一条の二において同じ。)の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託することができる。

②第三債務者は、次条第一項に規定する訴えの訴状の送達を受ける時までに、差押えに係る金銭債権のうち差し押さえられていない部分を超えて発せられた差押命令、差押処分又は仮差押命令の送達を受けたときはその債権の全額に相当する金銭を、配当要求があつた旨を記載した文書の送達を受けたときは差し押さえられた部分に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託しなければならない。

③第三債務者は、第百六十一条の二第一項に規定する供託命令の送達を受けたときは、差押えに係る金銭債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託しなければならない。

④第三債務者は、前三項の規定による供託をしたときは、その事情を執行裁判所に届け出なければならない。

条文の要点

第三債務者の供託とは、差押命令で差し押さえられた金銭債権について、第三債務者が債権全額相当の金銭を履行地の供託所に供託する制度です(156条1項)。

任意の全額供託に対し、2項では訴状送達前の差押競合等により全額又は差押部分相当額の義務供託になります。3項の供託命令送達による全額供託義務は別の類型で、2項の期限は掛かりません。供託後は事情を執行裁判所に届け出ます。

第三債務者の供託の場所と範囲

供託する場所は債務の履行地の供託所で、債務者の住所地や執行裁判所の所在地ではありません。供託後に執行裁判所へ届け出る義務は第三債務者自身が負います。対象は差押命令による差押えに限られ、滞納処分による差押えだけでは供託できません。仮差押え同士の競合だけでは任意供託にとどまります。

項役割内容
1項効果差押命令による差押えの金銭債権の全額相当を、履行地の供託所に供託できる(権利)
2項例外取立訴訟の訴状送達までに未差押部分を超える差押命令等の送達なら全額を、配当要求文書の送達なら差押部分相当を供託しなければならない
3項要件供託命令の送達を受けたときは債権全額相当を供託しなければならない
4項手続供託を済ませた第三債務者は、その経緯を執行裁判所に報告する義務を負う

具体例

BはAに対する100万円の買掛金債務を負い、Aの債権者Cの差押命令で60万円を差し押さえられた。取立訴訟の訴状送達前に、別の債権者Dの50万円の差押命令もBへ送達された。他に配当要求や供託命令はない。

第二の差押額50万円は未差押部分40万円を超えるため、Bは2項により100万円全額を履行地の供託所に供託しなければならない。

反例(結論が変わる)

同じ設定で、Dの差押命令の金額だけを50万円から30万円に変える。

第二の差押額30万円は未差押部分40万円を超えないため、2項による義務供託にはならない。Bは1項による全額の任意供託はできる。

関連条との違い

  • 民事執行法 第155条:155条は差押債権者が第三債務者から債権を取り立てる側の権限。156条は第三債務者が自ら供託して対応する側の規定
  • 民事執行法 第161条の2:161条の2は差押債権者の申立てで執行裁判所が供託を命ずる手続。156条3項はその命令の送達で義務供託になる受け手側
  • 民事執行法 第154条:154条2項で送達される配当要求の文書が、156条2項の義務供託の一つの契機になる

過去問で誤りとされた肢の型

  • 司法書士令和6年度 問45ア

    債務者の住所地の供託所に供託するとする誤り。供託先は債務の履行地の供託所

  • 司法書士令和6年度 問45ウ

    供託の事情を執行裁判所に届け出るのが供託官とする誤り。届出義務者は第三債務者自身

  • 司法書士平成29年度 問45イ

    仮差押えの競合だけでも債権全額の供託が義務になるとする誤り。仮差押えだけの競合では供託は任意

ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。

法令版: 2026年5月21日施行版

この条文の〇×問題(2問)

第三債務者の供託の法的性質

差し押さえられた金銭債権の第三債務者がする供託は、どのような場合にもその者の自由な判断に委ねられた権利であり、供託しなければならないとされる義務を負う場面は存在しない。

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正解 ×

誤り。全額供託は基本的に第三債務者の権利だが、超過差押命令・差押処分・仮差押命令の送達を受けた場合や配当要求文書の送達を受けた場合、さらに供託命令の送達を受けた場合には供託義務が生ずる。義務供託の類型が法定されている。

学習ポイント:第三債務者の供託は権利だが、超過差押・配当要求送達・供託命令で義務供託となる。

第156条1項〜3項、関連:第161条の2

供託の場所と届出

差押えられた金銭債権の全額に相当する金員を第三債務者が供託する場合には、当該債務が弁済されるべき場所を定める供託所宛てに供託する必要がある。

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正解 ○

正しい。第三債務者が供託する場所は、債務の履行地の供託所と定められており、執行裁判所の所在地ではない。また、供託をしたときはその事情を執行裁判所に届け出る義務がある。履行地の供託所への供託と執行裁判所への届出の両義務が課されている。

学習ポイント:第三債務者の供託先は債務の履行地の供託所。供託したら執行裁判所へ届出義務。

第156条1項・4項

この条文を解説で参照する過去問

司法書士令和8年度 問45ア

AがBに対して有する100万円の金銭債権につき、Cから強制執行による差押え(差押金額60万円)がされた後、Cが提起した取立訴訟の訴状の送達を受ける時までに、Dを差押債権者とする差押命令(差押金額30万円)の送達を受けたときは、Bは、当該金銭債権の全額に相当する100万円を供託しなければならない。

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誤り

誤り。差押え(60万)の後、取立訴訟の訴状送達までに発せられた差押命令(30万)は「差し押さえられていない部分(40万)を超えて」いないため、債権全額の供託義務は生じない(民執156条2項)。

司法書士令和8年度 問45イ

AがBに対して有する100万円の金銭債権につき、Cから強制執行による差押え(差押金額60万円)がされた後、Cが提起した取立訴訟の訴状の送達を受ける時までに、Dを仮差押債権者とする仮差押命令(仮差押金額50万円)の送達を受けたときは、Bは、当該金銭債権の全額に相当する100万円を供託しなければならない。

正誤と理由を見る

正しい

正しい。差押え(60万)後に残余部分(40万)を超える仮差押命令(50万)の送達があった場合、第三債務者は債権全額100万円を供託しなければならない(民執156条2項)。

司法書士令和6年度 問45ア

金銭債権が差し押さえられた場合において、第三債務者が差押金額に相当する金銭を供託するときは、債務者の住所地の供託所にしなければならない。

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誤り

誤り。第三債務者の執行供託は、債務の履行地の供託所にしなければならない(民執156条1項)。債務者の住所地の供託所ではない。

司法書士令和6年度 問45ウ

金銭債権が差し押さえられた場合において、第三債務者が差押金額に相当する金銭を供託したときは、供託官は、その事情を執行裁判所に届け出なければならない。

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誤り

誤り。供託の事情を執行裁判所に届け出なければならないのは第三債務者自身である(民執156条4項)。供託官ではない。

司法書士令和6年度 問45オ

金銭債権に対して滞納処分による差押えのみがされた場合には、第三債務者は、差押金額に相当する金銭を供託することができない。

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正しい

正しい。執行供託の対象は差押命令により差し押さえられた金銭債権に限られ(民執156条1項)、滞納処分による差押えのみの場合は供託できない。

司法書士令和4年度 問46ウ

金銭債権の全部に対して仮差押えの執行がされた後、当該金銭債権の一部に対して差押えがされたときは、第三債務者は、当該金銭債権の全額に相当する金銭を供託しなければならない。

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正しい

正しい。仮差押えと差押えが競合した場合、第三債務者は当該債権の全額に相当する金銭を供託しなければならない(民執156条2項・民保50条5項)。

司法書士平成31年度 問46ア

金銭債権が差し押さえられた場合において、第三債務者が差押金額に相当する金銭を供託するときは、債務の履行地の供託所にしなければならない。

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正しい

正しい。金銭債権の差押えにおいて第三債務者が差押金額に相当する金銭を供託するときは、債務の履行地の供託所にしなければならない(民執156条1項)。

司法書士平成29年度 問45ア

第三債務者は、取立訴訟に係る訴状の送達を受ける時までに、差押えに係る金銭債権のうち差し押さえられていない部分を超えて発せられた差押命令の送達を受けたときは、その債権の全額に相当する金銭を供託しなければならない。

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正しい

正しい。第三債務者は、取立訴訟の訴状送達を受ける時までに、差押債権の未差押部分を超えて差押命令の送達を受けたときは、債権全額を供託しなければならない(民執156条2項)。

司法書士平成29年度 問45イ

第三債務者は、金銭債権の一部に対して仮差押えの執行がされた後、当該金銭債権のうち仮差押えの執行がされていない部分を超えて発せられた仮差押命令の送達を受けたときは、その債権の全額に相当する金銭供託しなければならない。

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誤り

誤り。仮差押えの執行が競合したにとどまる場合、第三債務者は債権の全額に相当する金銭を供託することができるが、供託する義務は負わない(民事保全法50条5項・民事執行法156条1項)。仮差押債権者は取立てができず取立訴訟も起こり得ないため、差押えが競合した場合の義務供託(同条2項)は働かない。

司法書士平成29年度 問45エ

第三債務者は、金銭債権である給与に係る債権につき差押可能額の限度で差し押さえられたときは、その債権の全額に相当する金銭を供託することはできない。

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誤り

誤り。第三債務者は差押えに係る金銭債権の全額を供託することができ(民執156条1項)、給与債権が差押可能額の限度で差し押さえられた場合でも同様である。

問題で確認する

第156条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。