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第二編 物権/第二章 占有権/第二節 占有権の効力

民法 第196条(占有者による費用の償還請求)

分野:占有権

出題試験:宅建重要度 中行政書士重要度 中司法書士重要度 高賃貸不動産経営管理士重要度 中マンション管理士重要度 中

重要度は過去問の出題年度などをもとにした当サイトの評価です。

この条の要点

  • 有益費償還における金額選択権の帰属:有益費は増価が現存する場合だけ認められ、支出額か増価額かを選ぶのは占有者ではなく回復者。
  • 果実取得と通常必要費の負担帰属:果実を取得した占有者は通常の必要費を自己負担する。果実の収益と費用の償還は両立しない。

条文原文

色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。

第196条(占有者による費用の償還請求)

占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。

②占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

条文の要点

占有者の費用償還請求とは、占有物を返還するときに必要費を回復者から償還させられる権利で、果実を取得した占有者の通常の必要費は除かれます(196条1項)。

必要費は悪意の占有者も請求できます。有益費は価格の増加が現存する場合に限り、支出額か増価額かの選択は占有者ではなく回復者がします。

占有者の費用償還請求の範囲

償還請求は占有者の善意・悪意を問いませんが、果実を取得した占有者は通常の必要費を自己負担します。有益費については、悪意の占有者に対し、回復者の請求で裁判所が償還に相当の期限を許与できます。

項役割内容
1項本文効果返還時に保存のための必要費を回復者から償還させられる
1項ただし書例外果実を取得した占有者は通常の必要費を自己負担する
2項本文効果有益費は増価が現存する場合に限り、回復者の選択で支出額又は増価額を償還させられる
2項ただし書例外悪意の占有者の有益費について、回復者の請求で裁判所が償還に相当の期限を許与できる

具体例

BがAの建物を悪意で占有し、台風による損壊の修繕費を支出してから返還しました。

必要費は悪意の占有者も償還させられるため、Bは修繕費をAに請求できます。

反例(結論が変わる)

同じ設定で、Bが支出したのが修繕ではなく増築の費用で、建物の増価が残っていない場合に変えます。

有益費は増価の現存が要件のため、Bはこの費用の償還を請求できません。

関連条との違い

  • 民法 第189条:善意の占有者は果実を取得できる。果実の収取が通常の必要費の自己負担と引き換えの構造
  • 民法 第190条:悪意の占有者は果実を返還し、消費・損傷・収取懈怠の代価を償還する。果実を取る側の対価
  • 民法 第191条:占有者の責めに帰すべき滅失・損傷では、悪意なら全額、善意で所有の意思があれば現存利益の限度で賠償する。所有の意思がなければ善意でも全額賠償となる

過去問で誤りとされた肢の型

  • 司法書士令和8年度 問8イ

    悪意の占有者は必要費の償還を請求できないとする誤り。必要費は悪意でも請求できる

  • 司法書士令和4年度 問18ウ

    有益費は増価が残っていなくても償還されるとする誤り。増価の現存が要件

  • 司法書士平成27年度 問9ウ

    有益費は善意の占有者だけが請求できるとする誤り。悪意の占有者も請求できる

ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。

法令版: 2026年6月24日施行版

この条文の〇×問題(2問)

有益費償還における金額選択権の帰属

占有者が占有物の改良のために支出した費用についてその価格の増加が現存する場合、占有者は、支出した金額と増加した価格の額のうち自己に有利な方を選択して、回復者に償還させることができる。

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正解 ×

誤り。有益費の償還は価格の増加が現存する場合に限られ、支出金額と増価額のどちらを償還させるかは回復者の選択に委ねられている。費用を支出した占有者が有利な方を選べるわけではない。なお、悪意の占有者に対しては、回復者の請求により裁判所が償還に相当の期限を許与できる。

学習ポイント:有益費は増価が現存する場合だけ認められ、支出額か増価額かを選ぶのは占有者ではなく回復者。

第196条2項

果実取得と通常必要費の負担帰属

善意の占有者が占有物から果実を収取して取得していた場合、その占有者は、占有物の保存のために支出した通常の必要費をみずから負担し、回復者に償還を請求することができない。

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正解 ○

正しい。占有物の保存のために支出した金額その他の必要費は原則として回復者に償還させられるが、占有者が果実を取得したときは通常の必要費は占有者の負担に帰する。善意の占有者は占有物から生ずる果実を取得できるため、その収益と引き換えに通常の必要費を自己負担とする仕組みである。

学習ポイント:果実を取得した占有者は通常の必要費を自己負担する。果実の収益と費用の償還は両立しない。

第196条1項ただし書、関連:第189条1項

この条文を解説で参照する過去問

司法書士令和8年度 問8イ

A所有の甲建物をBが悪意で占有している間に、甲建物が台風で一部損壊したため、損壊部分の修繕費をBが支出した場合において、BがAに甲建物を返還するときは、Bは、Aに甲建物の修繕費用の償還をさせることができない。

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誤り

誤り。必要費の償還請求は悪意の占有者にも認められる(196条1項)。

司法書士令和6年度 問14オ

抵当不動産の第三取得者が抵当不動産について必要費を支出した場合において、抵当権の実行により抵当不動産が競売されたときは、当該第三取得者は、競売による抵当不動産の売却代金から抵当権者に優先してその支出した額の償還を受けることができない。

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誤り

誤り。第三取得者が支出した必要費は、抵当不動産の代価から他の債権者より先に償還を受けることができる(391条・196条の区別に従う)。「償還を受けることができない」は誤り。

司法書士令和4年度 問18ウ

借主が目的物の改良のための費用を支出したときは、それによる目的物の価格の増加が現存していなくても、貸主は、その支出した金額の償還をしなければならない。

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誤り

誤り。有益費は価格の増加が現存する場合に限り償還される(595条2項準用583条2項・196条2項)。増価が現存しない場合は償還不要。

司法書士平成31年度 問9ウ

Aは、B所有の甲建物を自己の所有物であると信じて占有し、その修繕や管理を行うとともに、第三者に賃貸して賃料を収受していた。この場合において、Aは、Bに甲建物を返還する際、修繕・管理のために支出した通常の必要費をBから償還させることはできない。

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正しい

正しい。善意の占有者(他主占有でも自主占有でも)は果実を取得し(民法189条1項)、必要費は原則として償還請求できるが、果実を取得したときの通常の必要費は占有者の負担となる(民法196条1項)。通常の必要費は果実を取得する占有者から請求できない。

司法書士平成27年度 問9ウ

占有者がその占有物について有益費を支出したときは、善意の占有者は占有の回復者に対しその償還を請求することができるが、悪意の占有者は占有の回復者に対しその償還を請求することができない。

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誤り

誤り。有益費は価額の増加が現存する場合に回復者の選択に従い償還させることができ(民法196条2項)、悪意の占有者も請求できる。

司法書士平成27年度 問9エ

占有者は、その占有物を第三者に賃貸して賃料を取得していたときは、通常の必要費を支出していたとしても、占有の回復者に対しその償還を請求することができない。

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正しい

正しい。占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は占有者の負担となり償還を請求できない(民法196条1項但書)。

問題で確認する

第196条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。