資格ジュピター条文穴埋め・判例演習

第二編 物権/第二章 占有権/第二節 占有権の効力

民法 第200条(占有回収の訴え)

分野:占有権

出題試験:宅建重要度 中行政書士重要度 中司法書士重要度 高

重要度は過去問の出題年度などをもとにした当サイトの評価です。

この条の要点

  • 悪意の特定承継人に対する回収の訴え:特定承継人への回収の訴えは原則不可だが、侵奪を知っていた悪意の承継人には例外的に許される。
  • 占有回収の訴えの一年の提訴期間:回収の訴えは奪取の時から一年で打ち切られる。侵害の継続を理由に期間を延ばせるのは保持・保全の訴え。

条文原文

色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。

第200条(占有回収の訴え)

占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。

②占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。

条文の要点

占有回収の訴えとは、占有を奪われた占有者が物の返還と損害賠償を請求する訴えで、侵奪者の特定承継人には原則提起できません(200条)。

特定承継人が侵奪の事実を知っていたときだけ対象になり、侵奪の可能性を認識していただけでは足りません(判例)。詐欺による引渡しや遺失物の拾得は占有の侵奪に当たらず、提訴期間は奪取の時から1年です。

占有回収の訴えの相手方と侵奪の意味

本権がなくても占有を奪った者が対象で、所有者が実力で奪い返しても侵奪になります。請求できる損害賠償は不法行為責任の賠償を指し、返還と併せて請求できます。

項役割内容
1項効果占有を奪われたときは、物の返還と損害賠償を請求できる
2項本文例外占有を侵奪した者の特定承継人には提起できない
2項ただし書要件特定承継人が侵奪の事実を知っていた(悪意)ときは提起できる

具体例

Aが占有する動産をBが盗み、Bが盗品と秘して善意のCに売り渡しました。

AはBには提起できますが、侵奪を知らない善意の特定承継人Cには占有回収の訴えを提起できません。

反例(結論が変わる)

同じ設定で、CがBからの買受け時に動産が盗まれたものだと知っていた場合に変えます。

悪意の特定承継人には但書により提起でき、AはCに返還を請求できます。

関連条との違い

  • 民法 第198条:占有保持の訴えは妨害の継続中の停止請求。回収は占有を完全に奪われた場合の訴え
  • 民法 第201条:回収の訴えの提訴期間は奪取の時から1年。保持の訴えは妨害の存する間又は消滅後1年以内
  • 民法 第202条:占有の訴えは本権の訴えと互いに妨げず、本権に関する理由では裁判できない

過去問で誤りとされた肢の型

  • 司法書士令和8年度 問8オ

    善意の特定承継人にも占有回収の訴えを提起できるとする誤り。悪意の承継人に限る

  • 司法書士令和3年度 問9イ

    遺失物の拾得者に占有回収の訴えを提起できるとする誤り。拾得は占有者の意思に反する侵奪でない

  • 司法書士平成29年度 問9イ

    盗品の可能性を認識していれば悪意の承継人とする誤り。侵奪の事実の認識が要る

ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。

判例

  • 特定承継人の悪意の認識の程度最高裁判所 1981年3月19日

    侵奪の事実を知っていたとは、何らかの形で侵奪があったことの認識があれば足りるが、単なる可能性のある事実として認識していただけでは足りない

法令版: 2026年6月24日施行版

この条文の〇×問題(2問)

悪意の特定承継人に対する回収の訴え

占有を奪った者から占有物の譲渡を受けた者が、その譲渡の時に侵奪の事実を知っていた場合、占有者はその譲受人に対して占有回収の訴えを提起することができる。

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正解 ○

正しい。占有回収の訴えは占有を侵奪した者の特定承継人に対しては原則として提起できないが、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは例外的に提起できる。悪意で占有物を取得した特定承継人は侵奪者と同視して保護に値しないと考えられているからである。善意の特定承継人に対しては提起できない。

学習ポイント:特定承継人への回収の訴えは原則不可だが、侵奪を知っていた悪意の承継人には例外的に許される。

第200条2項本文・ただし書

占有回収の訴えの一年の提訴期間

占有を奪われた状態が現在も継続している場合、占有者は、占有を奪われた時から一年を経過した後でも、占有回収の訴えを提起して占有物の返還を請求できる。

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正解 ×

誤り。占有回収の訴えは占有を奪われた時から一年以内に提起しなければならず、侵奪状態が継続していても期間は延長されない。妨害が存する間又はその消滅した後一年以内という提訴期間は占有保持の訴えに関するものであり、回収の訴えにその考え方を持ち込むことはできない。

学習ポイント:回収の訴えは奪取の時から一年で打ち切られる。侵害の継続を理由に期間を延ばせるのは保持・保全の訴え。

第200条1項、関連:第201条3項・1項

この条文を解説で参照する過去問

行政書士令和4年 問28肢4

Aが所有する動産丁(以下「丁」)を保管することをBに寄託し、これに基づいてBが丁を占有していたところ、丁をCに盗取された場合、Bは、占有回収の訴えにより、Cに対して丁の返還を請求することができる。

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妥当である

占有回収の訴えは占有者Bにも認められる(民法200条)。妥当。

司法書士令和8年度 問8オ

Aが所有し占有する甲絵画をBが窃取した後、Bが盗品であることを秘して窃取の事実を知らないCに甲絵画を売り渡した場合には、Aは、Cに対し、占有回収の訴えにより甲絵画の返還を求めることができる。

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誤り

誤り。占有回収の訴えは占有を侵奪した者及びその悪意の特定承継人に対してのみ認められ、善意のCには提起できない(200条2項)。

司法書士令和3年度 問9ア

Aが占有する動産甲をBが盗み、その事情を知っているCがこれをBから買い受けた場合には、Aは、Cに対し、占有回収の訴えにより、動産甲の返還を請求することができる。

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正しい

正しい。占有の侵奪者から物を取得した特定承継人であっても、侵奪があったことを知っていた者に対しては、占有回収の訴えによる返還請求ができる(200条2項)。

司法書士令和3年度 問9イ

Aがその占有する動産甲を公園で紛失し、Bがこれを拾得した場合には、Aは、Bに対し、占有回収の訴えにより、動産甲の返還を請求することができる。

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誤り

誤り。遺失物を拾得した者は占有を「侵奪」したとはいえず、占有回収の訴えの相手方とならない(200条1項)。

司法書士令和3年度 問9ウ

Aがその所有する動産甲をBに賃貸したが、Bが賃貸借契約終了後も動産甲を返還しなかったため、AがBに無断で動産甲の占有を取り戻した場合には、Bは、Aに対し、占有回収の訴えにより、動産甲の返還を請求することができる。

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正しい

正しい。賃貸借終了後に賃借人が占有を継続している場合でも、賃貸人が実力で占有を奪い返したときは占有の侵奪となり、賃借人は占有回収の訴えを提起できる(大判大8.4.8)。

司法書士令和3年度 問9エ

Aが占有する動産甲をBが盗んだが、Aが適法に動産甲の占有を取り戻した場合には、Aは、Bに対し、占有回収の訴えにより、占有侵害により生じた損害の賠償を請求することができない。

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誤り

誤り。占有回収の訴えにより請求できる損害の賠償は不法行為に基づく損害賠償(709条)を意味し、占有を侵害したBに故意・過失があれば、適法に占有を取り戻したAでも損害賠償を請求できる。

司法書士平成31年度 問12ア

動産質権者は、他人によって質物の占有を奪われた場合には、動産質権に基づいて目的物の返還を請求することができる。

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誤り

誤り。動産質権者が質物の占有を他人に奪われた場合は、占有回収の訴え(民法200条・353条)によるのであり、質権に基づく目的物の返還請求権(物上請求権)は認められない(判例)。

司法書士平成29年度 問9ア

動産甲の占有者Aは、Bの詐欺によって、Bに動産甲を現実に引き渡した。この場合において、Aは、Bに対し、占有回収の訴えにより動産甲の返還を求めることはできない。

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正しい

正しい。詐欺による引渡しは占有の侵奪に当たらないため、占有回収の訴え(民法200条)による返還は求められない。

司法書士平成29年度 問9イ

Bは、Aが占有する動産甲を盗み、盗品であることを秘して動産甲をCに売却した。その際、Cは、動産甲が盗品である可能性があることは認識していたものの、動産甲が盗品であることを知ることはできなかった。この場合において、Aは、Cに対し、占有回収の訴えにより動産甲の返還を求めることができる。

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誤り

誤り。侵奪者の特定承継人に対しては、その者が侵奪の事実を知っていれば占有回収の訴えを提起できるが(民法200条2項)、盗品である可能性を認識していただけでは足りない(最判昭56.3.19)。

司法書士平成29年度 問9ウ

Aがその所有する動産甲をBに賃貸したが、Bは貸借期間が終了しても動産甲をAに返還しなかったことから、Aは実力でBから動産甲を奪った。この場合において、Bは、Aに対し、占有回収の訴えにより動産甲の返還を求めることができる。

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正しい

正しい。実力で占有を奪われた占有者は、占有を奪った者が所有者であっても占有回収の訴えを提起できる(大判大4.9.20)。

ほか1肢は、各過去問のページで確認できます。

問題で確認する

第200条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。