第一編 総則/第二章 人/第五節 不在者の財産の管理及び失踪の宣告
民法 第32条(失踪の宣告の取消し)
重要度は過去問の出題年度などをもとにした当サイトの評価です。
この条の要点
- 取消し請求の権者に検察官が含まれない:失踪宣告の取消しを請求できるのは本人又は利害関係人のみ。検察官の請求権の有無は手続ごとに確認する。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第32条(失踪の宣告の取消し)
失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
②失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。
条文の要点
失踪の宣告の取消しとは、失踪者の生存又は別時期の死亡が証明されたときに家庭裁判所がする取消しで、本人又は利害関係人の請求が要ります(32条1項)。
取消しは宣告後取消前に善意でした行為の効力を覆しません。宣告で財産を得た者は権利を失いますが、返還義務は現に利益を受けている限度に限られます。
失踪の宣告の取消しの効力と善意の保護
請求権者は本人か利害関係人だけで、検察官は含まれません。善意でした行為の保護は当事者双方の善意を要し、片方が悪意なら効力は維持されません。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項前段 | 要件 | 失踪者が生存する又はみなし時期と異なる時に死亡したことの証明と、本人・利害関係人の請求 |
| 1項後段 | 例外 | 宣告後取消前に善意でした行為の効力は変わらない |
| 2項 | 効果 | 宣告で財産を得た者は権利を失うが、返還義務は現存利益の限度 |
具体例
Aの失踪宣告で財産を得たBが、Aの生存を知らずにCにもその財産を売りました。CもAの生存を知りませんでした。その後Aの生存が判明し宣告が取り消されました。
双方が善意でした譲渡は効力を失わず、Cは財産を保有できます。Bが得た権利だけが失われます。
反例(結論が変わる)
同じ設定で、Bが譲渡時にAの生存を知っていた場合に変えます。
Bが悪意なら善意行為の保護がなく、譲渡の効力に取消しが影響します。
関連条との違い
過去問で誤りとされた肢の型
- 行政書士令和6年 問27肢3
取消しの請求を本人に限るとする誤り。利害関係人も請求できる
- 行政書士令和6年 問27肢4
財産を得た者は利益の全部を返還するとする誤り。返還義務は現存利益の限度
- 司法書士令和2年度 問4ウ
譲受人が善意なら相手方が悪意でも効力が維持されるとする誤り。保護には当事者双方の善意が要る
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
法令版: 2026年6月24日施行版
この条文の〇×問題(1問)
取消し請求の権者に検察官が含まれない
失踪した者が生存していると判明した場合には、検察官も家庭裁判所に対して失踪宣告の取消しを請求することができる。
正解と解説を見る
正解 ×
誤り。民法32条1項が定める取消しの請求権者は本人又は利害関係人のみであり、検察官は含まれない。不在者の財産管理の処分や管理人の改任では検察官も請求できるが、失踪宣告の取消しにはその明文の規定がない。
学習ポイント:失踪宣告の取消しを請求できるのは本人又は利害関係人のみ。検察官の請求権の有無は手続ごとに確認する。
第32条1項、関連:第25条1項・第26条
根拠・関連条文
この条文を解説で参照する過去問
行政書士令和6年 問27肢3
失踪の宣告の取消しは、必ず本人の請求によらなければならない。
正誤と理由を見る
妥当でない
失踪宣告の取消しは本人だけでなく利害関係人も請求できる(民法32条)。
行政書士令和6年 問27肢4
失踪の宣告によって失踪者の財産を得た者は、失踪の宣告が取り消されたときは、その受けた利益の全部を返還しなければならない。
正誤と理由を見る
妥当でない
失踪宣告取消しの場合、財産を得た者は現存利益の限度で返還すれば足りる(民法32条2項の趣旨・判例)。
行政書士平成24年 問27肢2
失踪の宣告を受けた者は、死亡したものとみなされ、権利能力を喪失するため、生存することの証明がなされ失踪の宣告が取り消された場合でも、失踪の宣告後その取消し前になされた行為はすべて効力を生じない。
正誤と理由を見る
妥当ではない
失踪宣告が取り消されても、宣告後取消前に善意でなされた行為の効力は変わらない(32条)。妥当ではない。
行政書士平成22年 問35オ
Aについて失踪宣告がなされた後にBはD男と婚姻したが、その後、失踪宣告が取り消された場合に、A・B間の婚姻とB・D間の婚姻は、戸籍の上では共に存在することになるが、両者の婚姻は、当然には無効とならず、共に重婚を理由として取り消し得るにすぎない。
正誤と理由を見る
誤り
失踪宣告の取消後も、善意の後婚は維持されるので、共に重婚を理由として取り消し得るにすぎない、とはいえない(32条・判例)。誤り。
司法書士令和2年度 問4ウ
Aの失踪の宣告によって財産を得たBがその財産を第三者Cに譲渡した後、Aの生存が判明したために失踪の宣告が取り消された場合において、Cが譲渡を受けた際にAの生存を知らなかったときは、BがAの生存を知っていたとしても、失踪の宣告の取消しはその財産の譲渡の効力に影響を及ぼさない。
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誤り
誤り。失踪の宣告後にされた行為は、B及びCの双方が善意であれば取消しによっても効力を失わないが(民法32条)、BがAの生存を知っていた(悪意)場合は保護されず、譲渡の効力に影響する。
宅建令和4年 問7肢4
正誤と理由を見る
正しい
正しい。失踪宣告取消後も効力が維持されるのは宣告後取消前に善意でした行為のみ。B・C双方が善意の(ア)のみ対抗できる(民法32条)。
問題で確認する
第32条の内容は1問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。