第二編 物権/第十章 抵当権/第二節 抵当権の効力
民法 第375条(抵当権の被担保債権の範囲)
重要度は過去問の出題年度などをもとにした当サイトの評価です。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第375条(抵当権の被担保債権の範囲)
抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の二年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない。
②前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合におけるその最後の二年分についても適用する。ただし、利息その他の定期金と通算して二年分を超えることができない。
条文の要点
抵当権の被担保債権の範囲とは、抵当権の優先弁済が及ぶ債権の範囲で、利息その他の定期金は満期となった最後の2年分に限られます(375条1項)。
元本には2年分の制限がありません。不履行による損害賠償請求権も利息等と通算して最後2年分までが対象です。それより古い定期金でも、満期後に特別の登記をすれば登記の時から優先弁済を受けられます。
抵当権の被担保債権の範囲の限界
2年分の制限は優先弁済の範囲だけの話で、債務の額や任意弁済の範囲を制限しません。物上保証人が任意弁済で抵当権を消滅させるには、被担保債権と利息・損害金の全額の支払が要ります。根抵当権にも適用されず、元本確定後は確定元本と利息・損害金の全部が極度額の範囲で担保されます(398条の3第1項)。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項本文 | 効果 | 利息その他の定期金は、満期の最後2年分だけ優先弁済の対象になる |
| 1項ただし書 | 例外 | それより古い定期金も、満期後に特別の登記をすれば登記時から行使できる |
| 2項 | 効果 | 不履行による損害賠償請求権も最後2年分までで、利息等と通算2年が上限 |
具体例
B所有の不動産にAの抵当権があります。被担保債権は元本と毎月の利息で、直近4年分の利息が未払いのまま競売になりました。
配当で優先的に扱われる利息は満期の最後2年分だけで、それより古い2年分は一般債権と同じ扱いです。
反例(結論が変わる)
同じ設定で、古い利息について満期後に特別の登記をしていた場合に変えます。
その登記の時から古い利息分にも抵当権を行使できるので、登記済みの分まで優先弁済の対象になります。
関連条との違い
- 民法 第398条の3:根抵当権は元本確定後、確定元本と利息・損害金の全部が極度額内で担保される。最後2年分の制限は普通抵当権だけ
- 民法 第346条:質権の被担保債権は元本・利息・違約金・賠償金・費用と列挙され、2年分の制限がない。375条の制限は抵当権固有
過去問で誤りとされた肢の型
- 司法書士平成29年度 問11オ
特別の登記がなくても最後2年分を超える利息に優先弁済できるとする誤り。超過分は満期後の特別登記が要る
- 司法書士平成26年度 問12ア
元本と最後2年分の利息を払えば抵当権を消せるとする誤り。2年制限は優先弁済の範囲の話で、任意弁済には全額が要る
- 行政書士令和4年 問29肢4
根抵当権にも最後2年分の制限を当てはめる誤り。根抵当権は確定元本と利息・損害金の全部が極度額内で担保される
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
法令版: 2026年6月24日施行版
この条文を解説で参照する過去問
行政書士令和4年 問29肢4
本件根抵当権について元本が確定した後、当該確定した元本の額が極度額に満たない場合には、Bは、当該確定した元本に係る最後の2年分の利息、損害金については、極度額を超えても、本件根抵当権を行使して優先弁済を受けることができる。
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誤り
根抵当権者は、確定した元本と利息・損害金の全部について極度額を限度として行使でき(398条の3第1項)、極度額を超えて優先弁済を受けることはできない。最後の2年分の制限(375条)は普通抵当権の規定である。妥当でない。
行政書士令和2年 問29肢1
被担保債権の範囲は、確定した元本および元本確定後の利息その他の定期金の2年分である。
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誤り
元本確定後の利息・定期金は極度額内で担保され、『2年分』の制限は根抵当権には適用されない(民法398条の3。375条は通常抵当)。誤り。
行政書士平成30年 問30肢5
抵当権者が、被担保債権について利息および遅延損害金を請求する権利を有するときは、抵当権者は、原則として、それらの全額について優先弁済権を行使することができる。
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妥当でない
利息・遅延損害金についての優先弁済は満2年分に限られる(375条)。誤り。
司法書士平成29年度 問11オ
抵当権者は、利息を請求する権利を有するときは、満期後に特別の登記をしなくても、満期となった最後の2年分を超える利息について優先弁済を受けることができる。
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誤り
誤り。利息等の定期金は満期となった最後の2年分についてのみ抵当権で担保され(民法375条1項)、それを超える部分について優先弁済を受けるには満期後の特別の登記を要する。
司法書士平成26年度 問12ア
Cは、当該貸金債権の元本に加えて、満期となった最後の2年分の利息をAに支払うことにより、当該抵当権を消滅させることができる。
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誤り
誤り。物上保証人が任意弁済により抵当権を消滅させるには被担保債権及び利息・損害金の全額を弁済しなければならず、最後の2年分の利息で足りるという制限は優先弁済的効力の制限(民法375条1項)であって任意弁済には適用されない。
宅建令和5年 問10肢3
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正しい
正しい。順位放棄ではBとDが同一順位となり、両者が受けるべき配当の合計(Bの1000万+Dの200万=1200万)を債権額(1000:2000)で按分する。Bは1200万×1000/3000=400万円(民法375条2項)。
宅建令和元年 問10肢1改正前の出題
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正しい
正しい。Bの順位譲渡により、DはBの配当枠(2,000万円)から優先的に弁済を受ける。通常配当はB=2,000万・C=2,400万・D=1,600万。DはBの2,000万+自己の1,600万=3,600万の枠から3,000万を受領し、余剰600万円はBに戻る。よってBの配当は600万円。
宅建平成29年 問10肢1
①では、被担保債権の利息のうち、満期となった最後の2年分についてのみ担保されるが、②では、設定行為に別段の定めがない限り、被担保債権の利息は担保されない。
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誤り
誤り。抵当権は利息・定期金・損害賠償のうち満期の最後の2年分が担保され(民法375条)、不動産質権では被担保債権の利息は担保されない。記述が逆。
管業令和4年度 問4肢3
抵当権の設定行為において別段の合意がない限り、被担保債権の利息は当該抵当権によって担保されない。
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誤り
誤り。抵当権は、満期となった最後の2年分の利息及び定期金並びに損害賠償を担保する。
問題で確認する
第375条の内容は1問の条文穴埋めで確認できます。