第一編 総則/第五章 法律行為/第一節 総則
民法 第90条(公序良俗)
重要度は過去問の出題年度などをもとにした当サイトの評価です。
この条の要点
- 公序良俗違反行為の無効と追認による治癒の不可:無効は追認で治らない。追認で有効化するのは取消可能な行為だけ。
- 強行規定と任意規定の区別:法令と異なる合意でも任意規定との相違なら有効。無効は公序良俗違反に限る。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第90条(公序良俗)
公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
条文の要点
公序良俗とは、公の秩序又は善良の風俗をいい、これに反する法律行為は無効になります(90条)。
無効は当事者の合意でも追認でも覆らない強い効果で、誰でも主張できます。法令と異なる合意がすべて無効になるわけではなく、任意規定との相違は有効です。
公序良俗の違反の典型と境目
窮迫・無経験に乗じた暴利行為や不倫関係の維持を目的とする贈与、違法と知りつつ続ける取引が典型です。男女別定年のように憲法の原則に触れる問題も、直接適用ではなく90条違反として問われます。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項 | 要件 | 公の秩序又は善良の風俗に反すること(行為の内容・目的・動機を総合して判断する) |
| 1項 | 効果 | 法律行為は無効となり、追認しても治らない |
具体例
Aが不倫関係の維持を目的にBへ建物を贈与する書面の契約をしましたが、まだ引き渡していません。
目的が公序良俗に反するため贈与は無効で、Bから引渡しを請求されてもAは拒めます。
反例(結論が変わる)
同じ設定で、贈与の目的が不倫関係の維持ではない通常の贈与だった場合に変えます。
書面による通常の贈与は有効で、AはBの引渡請求を拒めません。
関連条との違い
過去問で誤りとされた肢の型
- 宅建令和6年 問1肢2
公序に反する行為も当事者の合意があれば有効とする誤り。無効は合意でも覆らない
- 行政書士平成25年 問34肢1
不倫目的の贈与でも書面なら履行を拒めないとする誤り。無効なので引渡請求を拒める
- 行政書士平成25年 問4肢3
憲法の平等原則が私人間の労働関係に直接及ぶとする誤り。男女別定年は90条違反として問う
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
判例
男女別定年制の無効最高裁判所 1981年3月24日
性別のみによる不合理な差別と認められる男女別定年制は、公序良俗に反し無効とされる
法令版: 2026年6月24日施行版
この条文の〇×問題(2問)
公序良俗違反行為の無効と追認による治癒の不可
公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は無効であり、当事者があとから追認をしても、その行為は原則として有効にならない。
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正解 ○
正しい。公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は無効であり、無効な行為は追認によっても効力を生じないのが原則である。追認により以後取り消せなくなるのは、錯誤・詐欺・行為能力の制限など取り消すことができる行為に限られる。なお無効を知って追認したときは新たな行為をしたものとみなされる。
学習ポイント:無効は追認で治らない。追認で有効化するのは取消可能な行為だけ。
第90条、関連:第119条・第122条
強行規定と任意規定の区別
当事者が法令の規定と異なる内容の合意をした場合、その合意は公の秩序に反する取り決めとして、いずれも無効となる。
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正解 ×
誤り。公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は無効だが、法令には公の秩序に関しない任意規定も多く、当事者が任意規定と異なる意思を表示したときはその意思に従うとされる。法令の規定と異なるというだけでは直ちに無効にはならない。法令違反と無効を単純に結びつける点がひっかけである。
学習ポイント:法令と異なる合意でも任意規定との相違なら有効。無効は公序良俗違反に限る。
第90条、関連:第91条・第92条
根拠・関連条文
この条文を解説で参照する過去問
行政書士平成30年 問27肢1
食品の製造販売を業とする者が、有害物質の混入した食品を、食品衛生法に抵触するものであることを知りながら、あえて製造販売し取引を継続していた場合には、当該取引は、公序良俗に反して無効である。
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妥当である
有害物質混入食品を違法と知りつつ継続販売する取引は公序良俗に反し無効(判例の基調)。妥当。
行政書士平成27年 問5ウ
憲法9条の宣明する国際平和主義、戦争の放棄、戦力の不保持などの国家の統治活動に対する規範は、私法的な価値秩序のもとで確立された私的自治の原則、契約における信義則、取引の安全等の私法上の規範によつて相対化され、民法90条にいう「公ノ秩序」の内容の一部を形成する。
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9条の規範が私的自治の原則・信義則・取引の安全等の私法上の規範によって相対化され、公序の内容の一部を形成するとの判示。
行政書士平成25年 問4肢3
性別による差別を禁止する憲法14条1項の効力は労働関係に直接及ぶことになるので、男女間で定年に差異を設けることについて経営上の合理性が認められるとしても、女性を不利益に扱うことは許されない。
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誤り
憲法14条の平等原則は労働関係に直接は及ばず、男女別定年制は民法90条の公序良俗違反として違法と判断されるにとどまる。誤り。
行政書士平成25年 問34肢1
甲建物がAからBに引き渡されていない場合に、A・B間の贈与が書面によってなされたときには、Aは、Bからの引渡請求を拒むことはできない。
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誤り
不倫関係の維持を目的とする贈与は公序良俗に反し無効なので(民法90条)、書面でなされていてもAは引渡請求を拒むことができる。誤り。
行政書士平成25年 問34肢4
A名義の登記がなされた甲建物がBに引き渡されたときには、Aは、Bからの甲建物についての移転登記請求を拒むことはできない。
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誤り
贈与は公序良俗違反で無効だから、Aは移転登記請求を拒むことができる。誤り。
宅建令和6年 問1肢2
公の秩序に反する法律行為であっても、当事者が納得して合意した場合には、その法律行為は有効である。
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誤り
誤り。公の秩序に反する法律行為は当事者の合意があっても無効(民法90条)。
マン管平成30年度 問12肢4
本件請負契約を締結する際に、Bが、Aの窮迫・軽率・無経験を利用して、相場よりも著しく高額な報酬の支払をAに約束させていた場合には、Aは、公序良俗に違反することを理由として、本件請負契約の無効を主張することができる。
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正しい
正しい。窮迫・軽率・無経験に乗じて著しく高額な報酬を約束させた契約は、公序良俗違反(暴利行為)として無効を主張できる(判例)。
問題で確認する
第90条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。