資格ジュピター条文穴埋め・判例演習

民法 意思表示

第90条〜第98条

民法の意思表示分野(第90条〜第98条)をまとめて学べるページです。条文穴埋め8問と判例3件を収録しています。

意思表示の解説

意思表示は法律行為の意思を外部に表す行為です。この分野(第90条〜第98条)のうち、ここでは心裡留保・通謀虚偽表示・錯誤・詐欺・強迫の5類型(第93条〜第96条)を比較します。無効と取消し、相手方と第三者のどちらの認識・過失を問うかを分けて確認します。

心裡留保は原則有効ですが、相手方が真意でないことを知り、又は知ることができたときは無効です。通謀虚偽表示は当事者間で無効です。どちらの無効も善意の取引第三者に対抗できず、その第三者の無過失は不要です。

重要な錯誤は取消しの対象です。基礎事情の錯誤にはその事情が行為の基礎とされていることの表示が必要です。表意者に重大な過失があると原則取消し不可ですが、相手方が錯誤を知り又は重大な過失で知らなかった場合と、相手方も同一の錯誤に陥った場合は例外です。取消しは善意無過失の取引第三者に対抗できません。

詐欺・強迫も取り消せます。第三者が詐欺を行った場合は、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り取り消せます。詐欺による取消しは、取消し前の善意無過失の取引第三者に対抗できません。詐欺を行った第三者と、取引から利害関係を得た第三者は別の役割です。第三者の強迫には相手方の認識・過失による取消制限がなく、強迫による取消しを善意無過失の取引第三者にも対抗できます。

類型根拠条項原則・取消制限取引第三者への対抗
心裡留保93条1・2項原則有効。相手方が真意でないと知り又は知ることができたとき無効善意の第三者に無効を対抗不可。第三者の無過失は不要
通謀虚偽表示94条1・2項相手方と通じてした虚偽の表示は無効善意の第三者に無効を対抗不可。第三者の無過失は不要
錯誤95条1〜4項重要な錯誤は取消可。基礎事情は表示必要。表意者の重過失は原則取消不可だが、相手方の悪意・重過失又は同一錯誤なら例外善意無過失の第三者に取消しを対抗不可
詐欺96条1〜3項取消可。第三者が詐欺を行った場合は相手方が知り又は知ることができたときに限る取消し前の善意無過失の取引第三者に取消しを対抗不可。詐欺者とは別人
強迫96条1項(2・3項と対比)取消可。第三者の強迫でも相手方の認識・過失による制限なし善意無過失の第三者にも取消しを対抗可(取消し前の第三者を比較)

出典:e-Gov法令検索 民法

5つの論点を具体例で比べる

原則・例外を確認したら、事例と対照例の条件の違いを読み分けてください。善意や過失の要件は、誰について判断するかも確認します。

心裡留保

原則
表意者Aが真意でないことを知ってした意思表示でも、原則として有効です。Aの内心だけで効力は決まりません。
例外・制限
相手方Bが、その表示がAの真意ではないことを知り、又は知ることができたときは無効です。ここで確認するのは相手方Bの認識・過失です。
具体例
Aは本当は土地を売るつもりがないのに、Bに売却を申し込みました。BがAの真意を知らず、知ることもできなかったなら、Aは真意ではないという理由だけで契約の効力を否定できません。
条件を変えた対照例
同じ申込みでも、BがAに売る意思がないと知っていたなら無効です。Bが知ることができた場合も同じで、「悪意だけ」が無効の要件ではありません。
第三者との関係
この無効は善意の取引第三者Cに対抗できません。善意なのは第三者Cであり、Cの無過失は不要です。相手方Bが善意無過失かという1項の問題と分けて確認します。

通謀虚偽表示

原則
表意者Aと相手方Bが通じてした虚偽の意思表示は無効です。双方が仮装の表示をすることを了解している点が心裡留保との違いです。
例外・制限
無効を当事者以外にも常に主張できるわけではありません。虚偽表示で作られた外観から新たな法律上の利害関係を取得した善意の第三者は保護されます。
具体例
AとBが売買の意思なく相談して、Aの土地をBに売った形だけを作りました。AB間の仮装売買は無効ですが、事情を知らないCがBから買った場合、Aはその無効をCに対抗できません。
条件を変えた対照例
Aだけが売るつもりなく申込みをし、Bと仮装の合意をしていない場合は通謀虚偽表示ではありません。相手方と通じていないため、93条の心裡留保として検討します。
第三者との関係
保護要件は取引第三者Cの善意です。Cの無過失は不要で、善意でも過失があるCに無効を対抗することはできません。錯誤・詐欺の善意無過失要件と区別します。

錯誤

原則
意思表示に対応する意思を欠く錯誤、又は法律行為の基礎とした事情の認識が真実に反する錯誤があり、目的・取引上の社会通念に照らして重要なら取消しが可能です。現在の95条の効果は無効ではなく取消しです。
例外・制限
基礎事情の錯誤では、その事情が法律行為の基礎とされていることの表示も必要です。表意者Aに重大な過失があると原則として取消し不可ですが、①相手方BがAの錯誤を知り、又は重大な過失で知らなかった場合、②相手方BもAと同一の錯誤に陥った場合の2つは例外です。
具体例
Aは100万円と表示するつもりで10万円と誤記しました。意思表示に対応する意思を欠く重要な錯誤で、Aに重大な過失がなければ取消しが可能です。Aに重大な過失があってもBが誤記と知っていたなら、3項1号の例外を検討します。
条件を変えた対照例
Aに重大な過失があり、BはAの錯誤を知らず、知らなかったことに重大な過失もなく、同一の錯誤にも陥っていない場合、Aは錯誤を理由に取り消せません。単なる相手方の軽い過失だけでは3項1号の例外になりません。
第三者との関係
取消しは善意でかつ過失がない取引第三者Cに対抗できません。善意・無過失を確認する主体は第三者Cです。善意でも過失があるCには、95条4項による保護はありません。

詐欺

原則
相手方Bの詐欺によって表意者Aが誤信してした意思表示は取り消せます。取消しが認められるかと、その取消しを転得者に主張できるかは別の問題です。
例外・制限
詐欺を行った者が相手方Bではなく第三者Cのときは、相手方Bがその詐欺の事実を知り、又は知ることができた場合に限り取消しが可能です(2項)。Bが悪意の場合だけに限られず、有過失の場合も含みます。
具体例
Bが複製画を本物だと偽って売り、Aがだまされて購入した場合、AはBの詐欺を理由に取り消せます。CがAをだましてBとの取引をさせた場合でも、BがCの詐欺を知っていた、又は知ることができたなら取消しが可能です。
条件を変えた対照例
Cの詐欺でAがBと契約したものの、取引相手方Bがその詐欺の事実を知らず、知ることもできなかった場合、Aは96条2項によってこの意思表示を取り消せません。転得者Dの認識だけで、この取消要件を満たすことにはなりません。
第三者との関係
2項の「詐欺を行った第三者C」と、3項の「取引から利害関係を得た第三者D」は役割が異なります。詐欺による取消しを対抗できないのは、取消し前の取引第三者Dが善意でかつ過失がない場合です。善意・無過失を確認するのはDであり、詐欺者Cではありません。

強迫

原則
違法な害悪の告知によって表意者Aが畏怖し、そのためにした意思表示は取り消せます。詐欺と同じく取消しですが、第三者が関わる場面の扱いが異なります。
例外・制限
第三者Cによる強迫でも、相手方Bがその事実を知っていたか、知ることができたかを96条2項の取消要件としては問いません。2項の制限は第三者による詐欺に限られます。
具体例
CがAに危害を加えると脅し、Aが恐れて土地をBに売却した場合、Bが強迫の事実を知らず、知ることもできなかったとしても、Aは強迫を理由に取り消せます。
条件を変えた対照例
Bから低い価格を提示されたことに不満があっただけで、違法な害悪の告知による畏怖も、それに基づく意思表示もなかった場合、強迫による取消しとはいえません。価格への不満と強迫の要件を区別します。
第三者との関係
強迫による取消しには、96条3項の善意無過失の第三者Dへの対抗制限は適用されません。Dが善意無過失でも取消しを対抗できます。ここでは取消し前に利害関係を取得した第三者を扱い、取消し後の対抗関係とは分けます。

原文照合日時:2026/10/2 18:52:21(日本時間)

原文照合:e-Gov原文の第93条〜第96条と、この分野の説明・比較表・5類型ノート、同条の○×8問を照合。93条の正誤1件を訂正。人による法的監修は未実施。個別過去問の全肢・判例法理、90〜92条・97〜98条の全面監査は対象外。

確認した原文版:129AC0000000089_20260624_508AC0000000045

e-Govの原文を確認

意思表示の過去問

出典元の分類が意思表示に対応する過去問です。

※ ほか66問は各試験の過去問一覧にあります。

意思表示の判例

第一編 総則 / 第五章 法律行為 / 第一節 総則

第90条(公序良俗)

公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

第91条(任意規定と異なる意思表示)問題準備中

法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。

第92条(任意規定と異なる慣習)問題準備中

法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。

第一編 総則 / 第五章 法律行為 / 第二節 意思表示

第93条(心裡留保)

意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

第2項前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

第94条(虚偽表示)

相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。

第2項前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

第95条(錯誤)

意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。

一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤

二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

第2項前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。

第3項錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。

一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。

二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。

第4項第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

第96条(詐欺又は強迫)

詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

第2項相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。

第3項前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

第97条(意思表示の効力発生時期等)

意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。

第2項相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。

第3項意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

第98条(公示による意思表示)

意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。

第2項前項の公示は、公示送達に関する民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の規定に従い、裁判所の掲示場に掲示し、かつ、その掲示があったことを官報に少なくとも一回掲載して行う。ただし、裁判所は、相当と認めるときは、官報への掲載に代えて、市役所、区役所、町村役場又はこれらに準ずる施設の掲示場に掲示すべきことを命ずることができる。

第3項公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から二週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。ただし、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。

第4項公示に関する手続は、相手方を知ることができない場合には表意者の住所地の、相手方の所在を知ることができない場合には相手方の最後の住所地の簡易裁判所の管轄に属する。

第5項裁判所は、表意者に、公示に関する費用を予納させなければならない。

第98条の2(意思表示の受領能力)

意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき又は未成年者若しくは成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。ただし、次に掲げる者がその意思表示を知った後は、この限りでない。

一 相手方の法定代理人

二 意思能力を回復し、又は行為能力者となった相手方