第五章 業務/第一節 通則
宅地建物取引業法 第34条(取引態様の明示)
この条の要点
- 売買広告時の取引態様明示:取引態様は広告時に明示する。『後で説明』という予告だけでは足りない。
- 注文を受けた際の取引態様説明:広告時の明示と注文を受けた後の明示は別の義務。注文者へ遅滞なく伝える。
- 代理と媒介の取引態様の区別:契約締結の代理権がない業者は、売主側で活動していても代理ではなく媒介。
- 貸借広告における取引態様明示:取引態様の広告時明示は売買・交換だけでなく貸借にも及ぶ。
条文原文
第34条(取引態様の明示)
宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買、交換又は貸借に関する広告をするときは、自己が契約の当事者となつて当該売買若しくは交換を成立させるか、代理人として当該売買、交換若しくは貸借を成立させるか、又は媒介して当該売買、交換若しくは貸借を成立させるかの別(次項において「取引態様の別」という。)を明示しなければならない。
②宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買、交換又は貸借に関する注文を受けたときは、遅滞なく、その注文をした者に対し、取引態様の別を明らかにしなければならない。
条文の要点
取引態様の明示とは、宅建業者が広告や注文の際に、自らが契約当事者か・代理人か・媒介かの別を明らかにする義務です(34条)。
広告には出すたびに明示し、注文を受けたときは遅滞なく改めて明示します。貸借で自ら貸主となる広告は宅建業に当たらず明示の対象外です。
取引態様の明示の時期と対象
態様は自己当事者(売買・交換)・代理人・媒介の3類型で、媒介と代理を混同させる表示はできません。未明示は成約の有無にかかわらず違反で、監督処分の対象にはなりますが罰則の対象ではありません。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項 | 要件 | 売買・交換・貸借の広告をするとき、自己が契約の当事者となるか・代理人となるか・媒介かの別を広告ごとに明示します。 |
| 2項 | 手続 | 注文を受けたときは遅滞なく注文者に取引態様の別を明らかにします。広告で明示していても改めて必要です。 |
具体例
宅建業者A社はB所有の建物の賃貸借を媒介し、入居者Cを募集する広告を出そうとしています。
貸借の媒介は宅建業なので、A社は広告に媒介という取引態様を明示しなければなりません。
反例(結論が変わる)
同じ建物の募集で、A社がBから建物を借り上げて自ら貸主としてCに転貸する場合に変えます。
自ら貸主となる貸借は宅建業に当たらないため、この転貸の広告には34条の取引態様の明示義務は生じません。
関連条との違い
過去問で誤りとされた肢の型
- 宅建令和5年 問31肢1
明示した広告を見た注文者には改めて明示しなくてよいとする誤り。注文時には遅滞なく改めて明らかにします。
- 宅建令和7年 問38ウ
数回に分ける広告は最初だけ明示すれば足りるとする誤り。広告のたびに明示します。
- 宅建令和3年12月 問30肢1
問合せや成約がなければ未明示は違反でないとする誤り。広告の結果とは無関係に違反です。
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
法令版: 2026年4月1日施行版
この条文の〇×問題(4問)
売買広告時の取引態様明示
宅地建物取引業者A社は、売主Bの土地の売却を媒介する広告に『取引態様は契約時に説明します』とだけ記載した。買主候補が現れるまでに媒介であることを伝えれば、広告時の取引態様明示義務を満たす。
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正解 ×
誤り。宅建業法第34条第1項は、宅地建物取引業者が売買・交換・貸借に関する広告をするときに、自ら当事者として取引するのか、代理するのか、媒介するのかという取引態様の別を明示するよう求める。広告時に単に後日説明すると記載しただけでは、媒介であることを示していない。後の説明は広告時の明示を遡って充足させない。
学習ポイント:取引態様は広告時に明示する。『後で説明』という予告だけでは足りない。
第34条第1項
注文を受けた際の取引態様説明
宅地建物取引業者B社は、自ら売主となる住宅の広告に取引態様を明示した。その広告を見たCから購入の注文を受けた場合、B社は広告で明示済みであっても、Cに対し遅滞なく取引態様の別を明らかにする必要がある。
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正解 ○
正しい。宅建業法第34条は、広告時の取引態様の明示を第1項で定める一方、第2項では売買・交換・貸借の注文を受けたとき、注文した者に対し遅滞なく取引態様を明らかにするよう求める。広告段階と注文後では相手方と時点が異なり、広告に記載したというだけで第2項の説明を省略することはできない。B社はCへ自ら売主であることを明らかにすべきである。
学習ポイント:広告時の明示と注文を受けた後の明示は別の義務。注文者へ遅滞なく伝える。
第34条第1項・第2項
代理と媒介の取引態様の区別
宅地建物取引業者C社は、所有者Dから買主探しを依頼されたが、Dを代理して売買契約を締結する権限はない。C社が広告で自社の取引態様を『代理』と表示しても、Dのために買主を探している以上、第34条の取引態様明示義務に適合する。
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正解 ×
誤り。宅建業法第34条で明示すべき取引態様は、業者が契約当事者となるか、代理人として契約を成立させるか、媒介して契約を成立させるかの別である。売主から買主探しを依頼されただけで契約締結の代理権を与えられていないC社は、代理人ではなく媒介者として表示すべきである。依頼者のために活動しているという共通点では、代理と媒介の法的区別を消せない。
学習ポイント:契約締結の代理権がない業者は、売主側で活動していても代理ではなく媒介。
第34条第1項
貸借広告における取引態様明示
宅地建物取引業者E社が貸主Fの依頼でアパートの賃借人を募集する広告を出す場合、売買ではなく貸借の媒介であっても、広告に媒介という取引態様を明示しなければならない。
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正解 ○
正しい。宅建業法第34条第1項は取引態様明示義務の対象を宅地又は建物の売買・交換・貸借に関する広告としている。貸借の媒介だから広告段階の明示を省略できるわけではない。E社は契約当事者でも代理人でもなく媒介者として賃借人を探すため、広告時に媒介であることを示す必要がある。売買だけに限定して読むと同条の貸借という文言を見落とす。
学習ポイント:取引態様の広告時明示は売買・交換だけでなく貸借にも及ぶ。
第34条第1項
この条文を解説で参照する過去問
宅建令和7年 問28ア
自ら売主として販売する宅地又は建物の広告に取引態様の別を明示しなかった場合は、罰則の対象とはならないが監督処分の対象となり、宅地又は建物の規模について著しく事実に相違する表示をした場合は、罰則の対象にも監督処分の対象にもなる。
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正しい
正しい。取引態様未明示は監督処分のみ、著しい不実表示は監督処分+罰則。
宅建令和7年 問38ア
Aは、宅地又は建物の売買に関する広告をする際に取引態様の別を明示した場合、当該広告を見た者から売買に関する注文を受けたときは、改めて取引態様の別を明示する必要はない。
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誤り
誤り。注文を受けたときは改めて取引態様の別を明示する必要がある。
宅建令和7年 問38ウ
Aは、複数の区画がある宅地の売買について、数回に分けて広告をする予定でいる場合、最初に行う広告に取引態様の別を明示すれば足り、それ以降は明示する必要はない。
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誤り
誤り。数回に分ける広告は都度取引態様を明示する必要がある。
宅建令和6年 問33肢2
建物の所有者と賃貸借契約を締結し、当該建物を自らが貸主となって貸借(転貸)するための広告をする場合においては、自らが契約の当事者となって貸借を成立させる旨を当該広告に明示しなくても、法第34条の規定に違反しない。
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正しい
正しい。自ら貸主となる転貸は取引態様の明示義務の対象外で明示しなくても違反しない。
宅建令和6年 問33肢3
造成工事に必要とされる法令に基づく許可等の処分があった宅地について、工事完了前に当該宅地の販売に関する広告をするときは、法令に基づく許可等の処分があったことを明示すれば、取引態様の別について明示する必要はない。
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誤り
誤り。許可等の処分があった旨を明示しても、取引態様の別の明示は常に必要(併記が必要)。
宅建令和6年 問33肢4
複数の区画がある分譲地の売買について、数回に分けて広告をする場合は、最初に行う広告だけではなく、次回以降の広告の都度取引態様の別を明示しなければならない。
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正しい
正しい。数回に分ける広告は都度取引態様の明示が必要。
宅建令和5年 問31肢1
宅地又は建物の売買に関する注文を受けたときは、遅滞なくその注文をした者に対して取引態様の別を明らかにしなければならないが、当該注文者が事前に取引態様の別を明示した広告を見てから注文してきた場合においては、取引態様の別を遅滞なく明らかにする必要はない。
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誤り
誤り。広告で取引態様を明示していても、注文時には遅滞なく改めて取引態様の別を明示する必要がある。
宅建令和4年 問37ウ
Aが一団の宅地の販売について、数回に分けて広告をするときは、そのたびごとに広告へ取引態様の別を明示しなければならず、当該広告を見た者から売買に関する注文を受けたときも、改めて取引態様の別を明示しなければならない。
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正しい
正しい。数回に分ける広告は都度取引態様を明示し、注文時にも改めて明示する。
宅建令和3年12月 問30肢1
Aは、中古の建物の売買において、当該建物の所有者から媒介の依頼を受け、取引態様の別を明示せずに広告を掲載したものの、広告を見た者からの問合せはなく、契約成立には至らなかった場合には、当該広告は法第34条の規定に違反するものではない。
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誤り
誤り。取引態様の不表示は成果の有無にかかわらず法違反。
宅建令和3年10月 問30ウ
複数の区画がある宅地の売買について、数回に分けて広告するときは、最初に行う広告に取引態様の別を明示すれば足り、それ以降は明示する必要はない。
正誤と理由を見る
誤り
誤り。数回に分けて広告する場合も都度取引態様を明示する。
ほか6肢は、各過去問のページで確認できます。
問題で確認する
第34条の内容は4問の〇×問題で確認できます。