第五章 業務/第一節 通則
宅地建物取引業法 第38条(損害賠償額の予定等の制限)
この条の要点
- 違約金等の合算額の上限:損害賠償予定額と違約金は合算して代金の2割まで。超過部分は無効。
- 上限超過特約の一部無効:2割を超える違約金特約は全体無効ではなく、2割超過部分が無効。
- 媒介業者への自ら売主規制の適用範囲:第38条の2割制限は宅建業者が自ら売主となる売買に適用。媒介だけでは足りない。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第38条(損害賠償額の予定等の制限)
宅地建物取引業者がみずから売主となる宅地又は建物の売買契約において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の十分の二をこえることとなる定めをしてはならない。
②前項の規定に反する特約は、代金の額の十分の二をこえる部分について、無効とする。
条文の要点
損害賠償額の予定等の制限とは、宅建業者が自ら売主の売買で、債務不履行による解除の損害賠償予定と違約金の合計を代金の2割以内に限る規制です(38条1項)。
2割を超える定めは超えた部分だけが無効で、上限内の部分は有効です。予定や違約金を定めなければ実損害を請求でき、上限はかかりません。
損害賠償額の予定等の制限の対象と効果
買主が宅建業者の場合は78条2項で本条を適用しません。対象は業者が自ら売主となる宅地・建物の売買契約で、媒介の場合には適用されません。合算するのは債務不履行による解除に伴う損害賠償の予定額と違約金で、手付とは別の枠です。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項 | 要件 | 自ら売主の売買契約で、債務不履行による解除に伴う損害賠償の予定と違約金を合算して代金の10分の2を超える定めはできません。 |
| 2項 | 効果 | 制限に反する特約は代金の10分の2を超える部分についてだけ無効になります。 |
具体例
A社は自ら売主として宅建業者ではない買主Bと代金4,000万円のマンション売買を締結し、損害賠償予定額を800万円と定めました。
予定額と違約金の合計は代金の2割(800万円)以内なのでこの定めは有効です。
反例(結論が変わる)
同じ契約で損害賠償予定額を1,000万円と定めた場合に変えます。
代金の2割を超える200万円の部分だけが無効となり、800万円の予定としては有効に残ります。
関連条との違い
過去問で誤りとされた肢の型
- 宅建令和3年12月 問27肢1
2割を超える定めは特約全体が無効になるとする誤り。超える部分だけが無効です。
- 宅建令和3年10月 問42肢4
予定額の定めがなければ損害賠償請求も2割が上限になるとする誤り。定めなしなら実損害を請求できます。
- 宅建平成29年 問31ウ
違約金と損害賠償予定をそれぞれ上限まで定められるとする誤り。合算した額で2割を超えてはいけません。
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
法令版: 2026年4月1日施行版
この条文の〇×問題(3問)
違約金等の合算額の上限
宅地建物取引業者Aが自ら売主となる宅建業者でない買主との土地売買で、代金の15%を損害賠償額の予定、別に代金の10%を違約金と定めた。どちらも単独では代金の20%以下なので、両方とも全額有効である。
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正解 ×
誤り。宅建業法第38条第1項は、業者が自ら売主となる売買で債務不履行を理由とする解除に伴う損害賠償予定額又は違約金を定める場合、その合算額が代金の20%を超える定めを禁じる。15%と10%を個別に判定せず、合計25%で判定する。上限を超える5%相当部分は同条第2項により無効となり、双方の額を全額有効とは扱えない。
学習ポイント:損害賠償予定額と違約金は合算して代金の2割まで。超過部分は無効。
第38条第1項・第2項
上限超過特約の一部無効
宅地建物取引業者Bが自ら売主となった宅建業者でない買主との建物売買で、債務不履行解除時の違約金を代金の25%と約定した場合、第38条によって約定全体が無効になるのではなく、代金の20%を超える部分が無効となる。
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正解 ○
正しい。宅建業法第38条第1項は自ら売主となる業者による違約金等の代金の20%超の定めを禁止し、第2項はこれに反する特約について20%を超える部分を無効とする。設問の違約金は25%なので、超過する5%相当部分が無効となる。契約で定めた違約金全体が当然に消えるわけではない。損害賠償予定額が別にある場合は、その額も合算して判定する。
学習ポイント:2割を超える違約金特約は全体無効ではなく、2割超過部分が無効。
第38条第1項・第2項
媒介業者への自ら売主規制の適用範囲
非業者の売主Cと買主Dの建物売買を宅地建物取引業者Eが媒介した。Eが取引に関わっているため、CとDが定める違約金にも宅建業法第38条の代金2割上限が直接適用される。
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正解 ×
誤り。宅建業法第38条が規制するのは、宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約である。Eは媒介をしているだけで契約の売主ではなく、売主Cも非業者である。業者が取引に関与したという事実だけで、CとDの契約に同条の2割上限を直接及ぼせない。違約金の効力については別途民法等の規律があり得るが、第38条の適用とは分けて判断する。
学習ポイント:第38条の2割制限は宅建業者が自ら売主となる売買に適用。媒介だけでは足りない。
第38条第1項
根拠・関連条文
この条文を解説で参照する過去問
宅建令和7年 問32肢4
Aは、建築工事完了後のマンションの売買契約を締結する際に、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額を1,000万円とする特約を定めた。
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違反する
違反する。損害賠償予定額は代金の2/10(800万円)が上限で1,000万円は超過。
宅建令和4年 問43肢3
販売代金2,500万円の宅地について、Aが売買契約の締結を行い、損害賠償の額の予定及び違約金の定めをする場合、その合計額を500万円と設定することができる。
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正しい
正しい。損害賠償予定+違約金の合計が代金2/10(500万)以内なので有効。
宅建令和3年12月 問27肢1
AB間で建物の売買契約を締結する場合において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額についての特約を、代金の額の10分の2を超えて定めた場合、当該特約は全体として無効となる。
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誤り
誤り。代金2/10を超える特約は超過部分のみ無効で、全体として無効ではない。
宅建令和3年10月 問42肢3
当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額を400万円とし、かつ、違約金の額を240万円とする特約を定めた場合、当該特約は無効となる。
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誤り
誤り。損害賠償予定と違約金の合計(640万)が代金の2/10(640万)以内なので特約は有効。
宅建令和3年10月 問42肢4
当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額を定めていない場合、債務の不履行による損害賠償の請求額は売買代金の額の10分の2を超えてはならない。
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誤り
誤り。予定額の定めがない場合は実損害を請求でき、2/10の上限は適用されない。
宅建平成29年 問31ウ
Aは、Bとの間で、当事者の債務不履行を理由とする契約解除に伴う違約金について300万円とする特約を定めた場合、加えて、損害賠償の予定額を600万円とする特約を定めることができる。
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誤り
誤り。違約金と損害賠償予定額の合計が代金の2割(600万円)を超える部分は無効。違約金300万+賠償予定600万=900万は超過。
宅建平成28年 問28エ
Aは、建築工事完了後のマンションの売買契約を締結する際に、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額を1,000万円とする特約を定めた。
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違反する
違反する。損害賠償予定額1,000万円は代金の2割(800万円)を超えるため違反(法38条)。
宅建平成27年 問36ア
Aは、Bとの間における建物の売買契約において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額を480万円とし、かつ、違約金の額を240万円とする特約を定めた。この場合、当該特約は全体として無効となる。
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誤り
誤り。損害賠償予定480万+違約金240万=720万円は代金2,400万円の30%で、2割(480万円)を超えるため『全体として無効』ではなく超過部分が無効となる(法38条)。
宅建平成25年 問38イ
A社は、Bとの間における新築分譲マンションの売買契約(代金3,500万円)の締結に際して、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額と違約金の合計額を700万円とする特約を定めることができる。
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正しい
正しい。損害賠償予定額と違約金の合計は代金の2割(3,500万×20%=700万円)以内であれば有効(法38条)。700万円はちょうど2割で有効。
宅建平成24年 問38ア
A社は、宅地建物取引業者である買主Bとの当該売買契約の締結に際して、当事者の債務不履行を理由とする契約解除に伴う損害賠償の予定額を1,000万円とする特約を定めることができない。
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誤り
誤り。損害賠償予定額・違約金の合計が代金の2割を超えてはならない制限(法38条)は宅建業者でない買主との契約に限られる。業者Bとの間では1,000万円の特約も可能。
問題で確認する
第38条の内容は3問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。