第五章 業務/第一節 通則
宅地建物取引業法 第39条(手付の額の制限等)
この条の要点
- 自ら売主が受領できる手付金の額:業者自ら売主の手付受領額は代金の2割以下。買主の希望でも上限を超えられない。
- 手付の性質にかかわらない解約手付の扱い:業者自ら売主の手付は名称・性質を問わず解約手付として働く。
- 相手方の履行着手後の手付解除:売主業者の手付倍返し解除は、相手方の買主が履行に着手する前まで。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第39条(手付の額の制限等)
宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して、代金の額の十分の二を超える額の手付を受領することができない。
②宅地建物取引業者が、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手付を受領したときは、その手付がいかなる性質のものであつても、買主はその手付を放棄して、当該宅地建物取引業者はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
③前項の規定に反する特約で、買主に不利なものは、無効とする。
条文の要点
手付の額の制限等とは、宅建業者が自ら売主の売買で受領する手付を代金の2割以内に限り、手付解除の仕組みを定める規制です(39条)。
手付の額は買主の承諾や希望があっても代金の2割が上限です。受領した手付は性質を問わず、相手方の履行着手前なら買主は放棄、業者は倍額提供で解除できます。
手付の額の制限等の上限と解除
手付規制は78条2項により業者間売買には及びません。上限に反する特約や買主に不利な解除特約(中間金の放棄を要求するもの等)は無効です。売主業者が解除するには手付の倍額を現実に提供することが要り、受領額の返還だけでは足りません。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項 | 要件 | 自ら売主の売買契約の締結に際し、代金の10分の2を超える額の手付は受領できません。 |
| 2項 | 効果 | 手付を受領したときは、その性質を問わず、相手方が履行に着手する前なら、買主は手付放棄・業者は倍額の現実の提供で解除できます。 |
| 3項 | 効果 | 2項に反する特約で買主に不利なものは無効になります。 |
具体例
A社は自ら売主として宅建業者ではない買主Bと代金3,000万円の建物売買を締結し、手付金600万円を受領しました。Bが履行に着手する前にA社が解除しようとしています。
手付は代金の2割以内で有効です。A社が解除するには手付の倍額1,200万円を現実に提供しなければならず、600万円の返還だけでは解除できません。
反例(結論が変わる)
同じ契約で、Bが代金の一部を支払って履行に着手した後にA社が倍額を提供した場合に変えます。
相手方である買主が履行に着手した後は、倍額の提供をしても手付による解除はできません。
関連条との違い
過去問で誤りとされた肢の型
- 宅建令和3年12月 問27肢3
買主の承諾があれば代金の2割を超える手付を受領できるとする誤り。承諾があっても上限は変わりません。
- 宅建令和元年 問37肢2
業者が倍額償還で解除するには正当な理由が要るとする誤り。相手方の履行着手前なら理由なく解除できます。
- 宅建平成27年 問40ア
手付以外の金銭(代金の一部)を支払えば買主が解除できる特約を有効とする誤り。手付放棄を超える負担は買主に不利で無効です。
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
法令版: 2026年4月1日施行版
この条文の〇×問題(3問)
自ら売主が受領できる手付金の額
宅地建物取引業者Aが自ら売主となる住宅売買で、宅建業者でない買主Bは契約への熱意を示すため代金の25%を手付として渡したいと申し出た。Bの自発的な希望であれば、Aは全額を手付として受領できる。
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正解 ×
誤り。宅建業法第39条第1項は、宅地建物取引業者が自ら売主となる売買契約の締結に際し、代金の20%を超える額の手付を受領することを禁じる。買主が希望したかどうか、当事者が合意したかどうかによって、この受領上限は変わらない。代金の25%は上限を超えるため、AはBの申出を理由にその全額を手付として受け取れない。
学習ポイント:業者自ら売主の手付受領額は代金の2割以下。買主の希望でも上限を超えられない。
第39条第1項
手付の性質にかかわらない解約手付の扱い
宅地建物取引業者Cが自ら売主となる土地売買で宅建業者でない買主Dから手付を受け取った場合、契約書に『証約手付』と記されていても、相手方が履行に着手する前なら、Dは手付を放棄して契約を解除できる。
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正解 ○
正しい。宅建業法第39条第2項は、業者が自ら売主となる売買で手付を受け取ったとき、その手付がいかなる性質のものでも、買主は手付を放棄して解除できるとする。ただし相手方が履行に着手した後はこの限りでない。『証約手付』という名称だけで解約手付の効果を排除できない。Dが解除する場面では売主Cの履行着手の有無を確認する。
学習ポイント:業者自ら売主の手付は名称・性質を問わず解約手付として働く。
第39条第2項・第3項
相手方の履行着手後の手付解除
宅地建物取引業者Eが自ら売主となる売買で手付を受け取った。宅建業者でない買主Fが契約の履行に着手した後であっても、Eは受け取った手付の倍額を現実に提供すれば、第39条第2項により一方的に契約を解除できる。
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正解 ×
誤り。宅建業法第39条第2項は、売主業者が受け取った手付の倍額を現実に提供して解除できることを定める一方、相手方が契約の履行に着手した後はその限りではないとする。設問では相手方である買主Fが既に履行に着手している。Eが倍額を用意しても、同項に基づく手付解除はできない。売主自身の履行着手だけで可否を決めるものではない。
学習ポイント:売主業者の手付倍返し解除は、相手方の買主が履行に着手する前まで。
第39条第2項ただし書
根拠・関連条文
この条文を解説で参照する過去問
宅建令和7年 問32肢3
Aは、建築工事完了前のマンションの売買契約を締結する際にBから手付金500万円を受領したが、Bに債務不履行がないにもかかわらず当該手付金500万円を返還して、契約を一方的に解除した。
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違反する
違反する。買主に債務不履行がないのに手付金を返還して一方的に解除することはできない(手付倍返しの解除は買主側の権利で、業者の一方的解除は不可)。
宅建令和4年 問43肢1
Aが、宅地又は建物の売買契約に際して手付を受領した場合、その手付がいかなる性質のものであっても、Aが契約の履行に着手するまでの間、買主はその手付を放棄して契約の解除をすることができる。
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正しい
正しい。手付の性質を問わず、買主は手付放棄で解除できる(法39条—手付の性質に関わらず買主の放棄解除が保障される)。
宅建令和3年12月 問27肢3
AB間で建物の売買契約を締結する場合において、Aは、あらかじめBの承諾を書面で得た場合に限り、売買代金の額の10分の2を超える額の手付を受領することができる。
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誤り
誤り。手付の額が代金の2/10を超える特約は買主の承諾があっても超過部分は無効。
宅建令和2年10月 問32肢1
AB間の建物の売買契約において、Bが当該契約の履行に着手した後においては、Aは、契約の締結に際してBから受領した手付金の倍額をBに現実に提供したとしても、契約を解除することはできない。
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正しい
正しい。Bが履行に着手した後は手付解除できない(民法557条)。
宅建令和元年 問37肢2
Aが手付金を受領している場合、Bが契約の履行に着手する前であっても、Aは、契約を解除することについて正当な理由がなければ、手付金の倍額を償還して契約を解除することができない。
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誤り
誤り。手付の倍額償還による解除は相手方の履行着手前であれば理由不要でできる。
宅建平成29年 問28エ
Aは、自ら売主として新築マンションを分譲するに当たり、売買契約の締結に際して買主から手付を受領した。その後、当該契約の当事者の双方が契約の履行に着手する前に、Aは、手付を買主に返還して、契約を一方的に解除した。
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違反する
違反する。手付を返還しての一方的解除は手付の倍額償還によらなければならず、受領額の返還のみでは違反(解除には倍額償還が必要)。
宅建平成27年 問36イ
Aは、Bとの間における建物の売買契約の締結の際、原則として480万円を超える手付金を受領することができない。ただし、あらかじめBの承諾を得た場合に限り、720万円を限度として、480万円を超える手付金を受領することができる。
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誤り
誤り。手付金の額は代金の2割(480万円)が上限であり、承諾があっても超過受領はできない(法39条)。
宅建平成27年 問40ア
Aは、Bとの間で建築工事完了後の建物に係る売買契約(代金3,000万円)において、「Aが契約の履行に着手するまでは、Bは、売買代金の1割を支払うことで契約の解除ができる」とする特約を定め、Bから手付金10万円を受領した。この場合、この特約は有効である。
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誤り
誤り。『代金の1割を支払えば解除できる』特約は、手付金(10万円)を超える金銭の支払を解除の要件とするもので、買主の手付解除権を制限する不利な特約として無効(法39条)。
宅建平成27年 問43肢2
甲県に本店、乙県に支店を設置する宅地建物取引業者B(国土交通大臣免許)は、自ら売主となる乙県内におけるマンションの売買の業務に関し、乙県の支店において当該売買の契約を締結するに際して、代金の30%の手付金を受領した。この場合、Bは、甲県知事から著しく不当な行為をしたとして、業務停止の処分を受けることがある。
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誤り
誤り。手付金30%受領は39条違反(2割超)で指示処分の対象だが、『著しく不当な行為』としての業務停止処分の権限は行為地の知事(乙県)または免許権者(大臣)であり、本店所在地の甲県知事から業務停止を受けることはない。
宅建平成25年 問38ウ
A社は、Bとの間における土地付建物の売買契約の締結に当たり、手付金100万円及び中間金200万円を受領する旨の約定を設けた際、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、売主は買主に受領済みの手付金及び中間金の倍額を支払い、また、買主は売主に支払済みの手付金及び中間金を放棄して、契約を解除できる旨の特約を定めた。この特約は有効である。
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誤り
誤り。解約手付による解除は『手付金』の倍返し・放棄であり、買主に中間金の放棄まで要求する特約は買主に不利な特約として無効(法39条・民法557条)。
問題で確認する
第39条の内容は3問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。