第五章の二 宅地建物取引業保証協会
宅地建物取引業法 第64条の8(弁済業務保証金の還付等)
この条の要点
- 社員加入前の取引:加入前に社員業者と取引した相手方も、要件を満たせば弁済対象となる。
- 還付前の認証:弁済業務保証金の権利行使には、協会による弁済可能額の認証が必要。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第64条の8(弁済業務保証金の還付等)
宅地建物取引業保証協会の社員と宅地建物取引業に関し取引をした者(社員とその者が社員となる前に宅地建物取引業に関し取引をした者を含み、宅地建物取引業者に該当する者を除く。)は、その取引により生じた債権に関し、当該社員が社員でないとしたならばその者が供託すべき第二十五条第二項の政令で定める営業保証金の額に相当する額の範囲内(当該社員について、既に次項の規定により認証した額があるときはその額を控除し、第六十四条の十第二項の規定により納付を受けた還付充当金があるときはその額を加えた額の範囲内)において、当該宅地建物取引業保証協会が供託した弁済業務保証金について、当該宅地建物取引業保証協会について国土交通大臣の指定する弁済業務開始日以後、弁済を受ける権利を有する。
②前項の権利を有する者がその権利を実行しようとするときは、同項の規定により弁済を受けることができる額について当該宅地建物取引業保証協会の認証を受けなければならない。
③宅地建物取引業保証協会は、第一項の権利の実行があつた場合においては、法務省令・国土交通省令で定める日から二週間以内に、その権利の実行により還付された弁済業務保証金の額に相当する額の弁済業務保証金を供託しなければならない。
④前条第三項の規定は、前項の規定により供託する場合に準用する。
⑤第一項の権利の実行に関し必要な事項は法務省令・国土交通省令で、第二項の認証に関し必要な事項は国土交通省令で定める。
条文の要点
弁済業務保証金の還付とは、保証協会の社員と宅建業の取引をした非業者が、取引債権について協会の供託金から弁済を受ける制度です(64条の8第1項)。
弁済の範囲は社員が納付した分担金の額ではなく、社員が社員でなければ供託すべき営業保証金の額です。権利の実行には協会の認証を受けて供託所へ請求する形で、協会が直接支払うわけではありません。
弁済業務保証金の還付の対象者
対象は社員と宅建業に関し取引をした者のうち宅建業者に該当しない者で、社員が加入する前の取引で生じた債権も含まれます。限度額は取引相手の社員が納めた分担金ではなく、その社員が営業保証金として供託すべき額が基準です。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項 | 要件 | 保証協会の社員と宅建業に関し取引した非業者で、取引により生じた債権を持つこと。社員加入前の取引も含む |
| 1項 | 効果 | 社員が供託すべき営業保証金の額の範囲内で、協会が供託した弁済業務保証金について弁済を受ける権利が生じる |
| 2項 | 手続 | 権利の実行には、弁済を受けられる額について保証協会の認証を受け、供託所へ請求する |
| 3項 | 手続 | 還付により減った保証金は、法務省令・国土交通省令で定める日から2週間以内に、協会が還付額相当を追加供託します。 |
具体例
保証協会の社員である業者Aと個人Bが宅地を売買し、Aの倒産後に売買が解除され、Bの手付金400万円の返還債権が未払いとなった。Bは協会の認証を受けて弁済を請求した。
Bは非業者の取引相手なので、認証を受けた額を営業保証金相当額の範囲内で弁済として受けられる。
反例(結論が変わる)
同じ売買と返還債権で、Bも宅建業者であった場合に変えます。
宅建業者に該当する者は対象から除かれ、弁済業務保証金から弁済を受ける権利は生じない。
関連条との違い
- 宅建業法 第25条:25条の営業保証金は社員でない業者が供託所へ直接供託する制度。64条の8の弁済業務保証金は協会がまとめて供託して取引相手を保護する
- 宅建業法 第64条の9:64条の9の分担金は社員が納める負担で、弁済保証金の原資になる積立て。64条の8は取引相手が弁済を受ける側の規定
- 宅建業法 第64条の10:64条の10の還付充当金は還付のあった後に社員が納める金。64条の8は取引相手の受取り側で、立場が逆になる
過去問で誤りとされた肢の型
- 宅建令和4年 問41エ
弁済の限度を社員が納付した分担金の額とする誤り。限度は社員が供託すべき営業保証金の額
- 宅建令和2年12月 問30肢4
権利の実行に免許権者である知事の認証が要るとする誤り。認証は保証協会が行い、請求先は供託所
- 宅建平成29年 問39イ
業者同士の取引でも弁済業務保証金から弁済を受けられるとする誤り。対象は非業者の取引相手だけ
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
法令版: 2026年4月1日施行版
この条文の〇×問題(2問)
社員加入前の取引
宅建業者Bが保証協会Aの社員になる前にBと宅建取引をした個人Cは、加入後の取引ではないという理由だけで、Aの弁済業務保証金から弁済を受ける権利を否定されない。
正解と解説を見る
正解 ○
正しい。第64条の8第1項は、保証協会社員と宅建業に関し取引をした者に、社員となる前にその者と取引をした者も含める。ただし宅建業者に該当する者は除かれ、実際の弁済には取引から生じた債権、限度額、弁済業務開始日、協会の認証などの要件を満たす必要がある。加入前という一事だけで排除してはならない。
学習ポイント:加入前に社員業者と取引した相手方も、要件を満たせば弁済対象となる。
第64条の8第1項・第2項
還付前の認証
保証協会Dの社員Eとの宅建取引で債権を取得した買主Fは、Dの弁済業務保証金が供託されていれば、Dから弁済可能額について認証を受けずに直ちに還付を受けられる。
正解と解説を見る
正解 ×
誤り。第64条の8第2項は、同条第1項の権利を実行しようとする者に、弁済を受けられる額について保証協会の認証を受けることを要求する。協会が供託しているからといって、取引相手が協会の確認を経ずに自由に還付を受けられるわけではない。債権の存在や限度額を確認する認証が手続上の要件となる。
学習ポイント:弁済業務保証金の権利行使には、協会による弁済可能額の認証が必要。
第64条の8第2項
この条文を解説で参照する過去問
宅建令和6年 問36肢2
保証協会の社員と宅地建物取引業に関し取引をした者(宅地建物取引業者に該当する者を除く。)は、その取引により生じた債権に関し、当該社員が社員ではないとしたならばその者が供託すべき営業保証金の額に相当する額の範囲内で弁済を受ける権利を有する。
正誤と理由を見る
正しい
正しい。弁済範囲は社員が供託すべき営業保証金相当額の範囲内。
宅建令和5年 問44肢3
保証協会は、宅地建物取引業者の相手方から、社員である宅地建物取引業者の取り扱った宅地建物取引業に係る取引に関する損害の還付請求を受けたときは、直ちに弁済業務保証金から返還しなければならない。
正誤と理由を見る
誤り
誤り。還付請求には認証手続が必要で、直ちに返還するわけではない。
宅建令和4年 問39肢1
保証協会は、弁済業務保証金について弁済を受ける権利を有する者から認証申出書の提出があり、認証に係る事務を処理する場合には、各月ごとに、認証申出書に記載された取引が成立した時期の順序に従ってしなければならない。
正誤と理由を見る
誤り
誤り。認証申出書の処理順序は申出の時期順であり、取引成立時期順ではない。
宅建令和4年 問39肢2
保証協会は、当該保証協会の社員から弁済業務保証金分担金の納付を受けたときは、その納付を受けた額に相当する額の弁済業務保証金を当該社員の主たる事務所の最寄りの供託所に供託しなければならない。
正誤と理由を見る
誤り
誤り。弁済業務保証金は保証協会が自己の主たる事務所の最寄りの供託所に供託する(社員の最寄りではない)。
宅建令和4年 問39肢4
宅地建物取引業者と宅地の売買契約を締結した買主(宅地建物取引業者ではない。)は、当該宅地建物取引業者が保証協会の社員となる前にその取引により生じた債権に関し、当該保証協会が供託した弁済業務保証金について弁済を受ける権利を有する。
正誤と理由を見る
正しい
正しい。社員加入前の取引債権についても、非業者の買主は弁済業務保証金から弁済を受ける権利を有する。
宅建令和4年 問41エ
保証協会の社員と宅地建物取引業に関し取引をした者は、その取引により生じた債権に関し、当該社員が納付した弁済業務保証金の額に相当する額の範囲内において弁済を受ける権利を有する。
正誤と理由を見る
誤り
誤り。弁済の限度は分担金の額ではなく、社員が営業保証金として供託すべき額に相当する額。
宅建令和2年12月 問30肢4
保証協会の社員(甲県知事免許)と宅地建物取引業に関し取引をした者が、その取引により生じた債権に関し、当該保証協会が供託した弁済業務保証金について弁済を受ける権利を実行しようとするときは、弁済を受けることができる額について甲県知事の認証を受ける必要がある。
正誤と理由を見る
誤り
誤り。認証は保証協会から受けるもので、免許権者(県知事)の認証ではない。
宅建令和2年10月 問36肢1
保証協会の社員との宅地建物取引業に関する取引により生じた債権を有する者は、当該社員が納付した弁済業務保証金分担金の額に相当する額の範囲内で弁済を受ける権利を有する。
正誤と理由を見る
誤り
誤り。弁済の限度は分担金額ではなく、社員の供託すべき営業保証金相当額。
宅建令和2年10月 問36肢2
保証協会の社員と宅地建物取引業に関し取引をした者が、その取引により生じた債権に関し、弁済業務保証金について弁済を受ける権利を実行するときは、当該保証協会の認証を受けるとともに、当該保証協会に対し還付請求をしなければならない。
正誤と理由を見る
誤り
誤り。弁済請求は保証協会の認証を受けて供託所に対して行う(保証協会への還付請求ではない)。
宅建平成29年 問39イ
Aは、平成29年5月1日に、Bに手付金500万円を支払い、宅地の売買契約を締結した。宅地の引渡しの前にBが失踪し、宅地の引渡しを受けることができなくなったときは、Aは、手付金について、弁済業務保証金から弁済を受けることができる。
正誤と理由を見る
誤り
誤り。弁済業務保証金から弁済を受けられるのは保証協会の社員と取引した『宅建業者でない者』。Aは宅建業者で対象外。
問題で確認する
第64条の8の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。