第四章 仮処分の効力
民事保全法 第58条(不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の効力)
この条の要点
- 処分禁止登記の対抗効:後れた登記は保全登記と抵触する限度でのみ対抗不能。全面無効ではない相対的効力。
- 保全仮登記からの本登記:保全仮登記の債権者の本登記は保全仮登記に基づく本登記の方法による。
条文原文
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第58条(不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の効力)
第五十三条第一項の処分禁止の登記の後にされた登記に係る権利の取得又は処分の制限は、同項の仮処分の債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をする場合には、その登記に係る権利の取得又は消滅と抵触する限度において、その債権者に対抗することができない。
②前項の場合においては、第五十三条第一項の仮処分の債権者(同条第二項の仮処分の債権者を除く。)は、同条第一項の処分禁止の登記に後れる登記を抹消することができる。
③第五十三条第二項の仮処分の債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をするには、保全仮登記に基づく本登記をする方法による。
④第五十三条第二項の仮処分の債権者は、前項の規定により登記をする場合において、その仮処分により保全すべき登記請求権に係る権利が不動産の使用又は収益をするものであるときは、不動産の使用若しくは収益をする権利(所有権を除く。)又はその権利を目的とする権利の取得に関する登記で、同条第一項の処分禁止の登記に後れるものを抹消することができる。
この条文の〇×問題(2問)
処分禁止登記の対抗効
不動産の所有権移転登記請求権を保全する仮処分について処分禁止の登記がされた後にされた第三者の権利取得に係る登記は、債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をした場合、その登記と抵触する限度で債権者に対抗することができない。
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正解 ○
正しい。処分禁止の登記の後にされた登記に係る権利の取得又は処分の制限は、債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をする場合に、その登記と抵触する限度においてのみ債権者に対抗できない。登記後の取得者を全面的に排除するのではなく抵触限度でのみ対抗不能となる相対的な効力構造である。
学習ポイント:後れた登記は保全登記と抵触する限度でのみ対抗不能。全面無効ではない相対的効力。
第58条1項
保全仮登記からの本登記
保全仮登記がされた処分禁止の仮処分の債権者が保全すべき登記請求権に係る本登記をするには、保全仮登記を抹消した上で改めて本登記を申請しなければならない。
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正解 ×
誤り。所有権以外の権利の登記請求権を保全するため保全仮登記がされた場合、債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をするには保全仮登記に基づく本登記の方法によるものとされる。仮登記を抹消して新たに本登記を申請するのではなく、仮登記に基づく本登記の手続が予定されている。
学習ポイント:保全仮登記の債権者の本登記は保全仮登記に基づく本登記の方法による。
第58条3項
根拠・関連条文
この条文を解説で参照する過去問
司法書士平成29年度 問58肢1
Aを登記名義人とする根抵当権の設定の登記がされている甲土地について、Bを仮処分の債権者とする所有権の処分禁止の登記がされた後、当該根抵当権の債権の範囲の変更の登記がされた場合には、Bは、Bへの所有権の移転の登記の申請と同時に当該根抵当権の変更の登記の抹消を単独で申請することができる。
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誤り
誤り。処分禁止の登記に後れる登記でも、仮処分債権者の権利取得を害しないものは抹消の対象とならない。根抵当権の債権の範囲の変更は極度額の範囲内で担保される債権を入れ替えるにすぎず、仮処分債権者が取得する所有権の負担を増やすものではないから、Bはその変更の登記の抹消を単独で申請することはできない(民事保全法58条2項、登記先例)。
司法書士平成28年度 問41オ
土地について処分禁止の仮処分がされる前に債務者が第三者に当該土地を売っていた場合には、その売買による所有権の移転の登記が当該仮処分の登記より後にされたときであっても、当該第三者は、債権者に対し、当該土地に係る所有権の取得を対抗することができる。
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誤り
誤り。処分禁止の登記の後にされた登記に係る権利の取得は、仮処分の債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をする場合には、債権者に対抗することができない(民事保全法58条1項)。売買が仮処分の前であっても、所有権移転の登記が処分禁止の登記に後れていれば、第三者は債権者に所有権の取得を対抗できない。
司法書士平成26年度 問59イ
債権者及び債務者が甲土地についての所有権の移転の登記を共同して申請する場合には、申請と同時にするときに限り、債権者は、処分禁止の登記に後れる登記の抹消を単独で申請することができる。
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正しい
正しい。債権者が債務者を登記義務者とする所有権の移転の登記を申請する場合、当該申請と同時にするときに限り、処分禁止の登記に後れる登記の抹消を単独で申請できる(不動産登記法111条1項・民事保全法58条2項)。
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第58条の内容は2問の〇×問題と2問の条文穴埋めで確認できます。