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第二編 物権/第七章 留置権

民法 第298条(留置権者による留置物の保管等)

分野:留置権

出題試験:宅建重要度 中行政書士重要度 中司法書士重要度 高賃貸不動産経営管理士重要度 中管理業務主任者重要度 中

重要度は過去問の出題年度などをもとにした当サイトの評価です。

この条の要点

  • 保存に必要な使用の許容:使用・賃貸・担保供与には承諾が要るが、保存に必要な使用は承諾不要の例外。
  • 果実収取と使用禁止の関係:留置物の使用は禁じられても、果実の収取と弁済への充当は別途認められる。

条文原文

色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。

第298条(留置権者による留置物の保管等)

留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならない。

②留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、又は担保に供することができない。ただし、その物の保存に必要な使用をすることは、この限りでない。

③留置権者が前二項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができる。

条文の要点

留置権者の保管義務とは、留置権者が善良な管理者の注意をもって留置物を占有しなければならない義務です(298条1項)。

債務者の承諾がなければ留置物を使用し、賃貸し、担保に供することもできません。違反しても留置権は当然には消滅せず、債務者が消滅を請求したときに消滅します。

留置権者の保管義務の範囲と使用制限の例外

物の保存に必要な使用は、債務者の承諾がなくても許されます。一般の営業利用や賃貸まで保存目的に含まれるわけではありません。果実の収取・弁済への充当は297条が別に認める権利です。善管注意義務は、自分の財産に普段どれほど注意しているかではなく、その立場に通常求められる注意を基準とします。

項役割内容
1項効果留置権者には、善管注意で留置物を占有する義務が課される
2項本文効果債務者の承諾がなければ、留置物の使用・賃貸・担保供与はできない
2項ただし書例外物の保存に必要な使用であれば、承諾は要らない
3項効果1項・2項への違反があれば、債務者は留置権の消滅を請求できる

具体例

AはBの機械を修理しましたが、弁済期の来た代金を支払ってもらえず留置しています。AはBの承諾を得て、その機械を自己の営業に使用しました。

Bの承諾を得た使用なので298条2項に違反せず、この使用を理由にBが留置権の消滅を請求することはできません。

反例(結論が変わる)

同じ設定で、AがBの承諾を得ずに機械を自己の営業に使用した場合に変えます。

保存に必要な使用ではなく、承諾もないため2項違反です。Bは留置権の消滅を請求できますが、違反だけで当然に消滅するわけではありません。

関連条との違い

  • 民法 第297条:果実を収取して弁済に充てるのは297条が認める別の権利。298条2項の使用禁止は果実の収取まで妨げない
  • 民法 第301条:301条は違反がなくても相当の担保供与で消滅を請求できる別の消滅原因。298条3項は1項・2項違反があるときだけ使える
  • 民法 第302条:占有を失えば留置権は消滅するのが原則。ただし298条2項の承諾を得た賃貸や質入れなら占有が移っても消滅しない

過去問で誤りとされた肢の型

  • 行政書士令和3年 問30肢1

    善管注意義務を自己の財産に対するのと同一の注意より軽いものと読み替える誤り。それより重い客観的注意義務

  • 司法書士令和5年度 問12ウ

    承諾なしに賃貸すれば留置権が当然に消滅するとする誤り。消滅には債務者の請求が要る

  • 司法書士平成25年度 問11ア

    善管注意違反で留置物を壊しても全額弁済まで消滅請求できないとする誤り。注意義務違反自体が消滅請求の理由になる

ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。

法令版: 2026年6月24日施行版

この条文の〇×問題(2問)

保存に必要な使用の許容

留置権者が債務者の承諾を得ずに留置物を使うことは原則として禁じられるが、その物を守るために欠かせない程度の使用であれば承諾は要らない。

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正解 ○

正しい。民法298条2項は債務者の承諾なく留置物を使用し、賃貸し、又は担保に供することを禁じるが、ただし書によりその物の保存に必要な使用は承諾不要とされる。一切の使用が禁じられるわけではなく、保存行為は例外的に許容される。

学習ポイント:使用・賃貸・担保供与には承諾が要るが、保存に必要な使用は承諾不要の例外。

第298条2項ただし書

果実収取と使用禁止の関係

留置権者は留置物を使用することが原則として禁じられているため、留置物から生じる果実を収取して自己の債権の弁済に充てることも認められない。

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正解 ×

誤り。民法297条1項は留置権者に留置物から生ずる果実を収取し、他の債権者に先立って自己の債権の弁済に充当する権利を認める。298条2項の使用・賃貸・担保供与の禁止は承諾なき処分的利用への制限であり、法定の果実収取権を排除しない。

学習ポイント:留置物の使用は禁じられても、果実の収取と弁済への充当は別途認められる。

第298条2項、関連:第297条1項

この条文を解説で参照する過去問

行政書士令和3年 問30肢1

留置権者は、善良な管理者の注意をもって留置物を占有すべきであるが、善良な管理者の注意とは、自己の財産に対するのと同一の注意より軽減されたものである。

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妥当でない

善管注意義務は自己の財産と同一の注意ではなく、それより重い客観的注意義務(留置権者は善管注意で占有・民法298条)。誤り。

司法書士令和5年度 問12ウ

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誤り

誤り。留置権者が債務者の承諾なく留置物を賃貸した場合、留置権は当然には消滅せず、債務者が留置権の消滅を請求できるにとどまる(298条2項・3項)。

司法書士令和5年度 問14エ

質権者は、質権者による質物の使用について質権設定者の承諾がなく、かつ、目的物の保存のために質物の使用の必要がない場合であっても、質物の使用をすることができる。

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誤り

誤り。質権者は、物の保存に必要な使用をする場合を除き、債務者の承諾を得なければ質物を使用することができない(350条準用298条2項)。

司法書士令和4年度 問13イ

建物の賃借人は、賃貸借契約の終了後においては、当該建物について留置権を行使する場合であっても、従前のとおり当該建物に居住することはできない。

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誤り

誤り。費用償還請求権を担保して建物に居住し続けることは、物の保存に必要な使用として債務者の承諾なく許される(298条2項ただし書・大判昭10.5.13)。

司法書士平成30年度 問13ア

留置権者は、留置物の所有者である債務者の承諾を得て留置物を第三者に賃貸した場合には、その賃料を被担保債権の弁済に充当することができる。

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正しい

正しい。留置権者は債務者の承諾を得て留置物を使用し賃貸することができ(民法298条2項)、留置物から生ずる果実(賃料)を収取して他の債権者に先立ち弁済に充当できる(297条1項)。

司法書士平成30年度 問13イ

留置権者が留置物の所有者である債務者の承諾を得ないで留置物に質権を設定した場合には、債務者は、留置権者に対し、留置権の消滅を請求することができる。

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正しい

正しい。留置権者が債務者の承諾なく留置物を担保に供したときは298条2項違反であり、債務者は留置権の消滅を請求できる(298条3項)。

司法書士平成25年度 問11ア

留置権者が留置物の一部をその過失により壊したとしても、債務者は、債務の全額を弁済しない限り、留置権の消滅を請求することはできない。

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誤り

誤り。留置権者が善管注意義務に違反して留置物を壊した場合、債務者は留置権の消滅を請求できる(民法298条3項)。

司法書士平成25年度 問11ウ

留置権者は、債務者の承諾を得て留置物を第三者に賃貸することができ、賃貸によって得られた賃料を他の債権者に先立って被担保債権の弁済に充当することができる。

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正しい

正しい。留置権者は債務者の承諾を得て留置物を賃貸でき(民法298条2項)、生じた賃料を他の債権者に先立って弁済に充当できる(同297条)。

管業令和7年度 問1肢2

Aは、Aが修理したB所有の自動車甲の修理代金をBが支払わないので、支払がされるまで、甲の引渡しを拒絶した。この場合におけるAの甲についての注意義務。

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誤り

誤り。留置権に基づく占有は、留置権者が善良な管理者の注意をもって留置物を占有しなければならない。

問題で確認する

第298条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。