資格ジュピター条文穴埋め・判例演習

民法 留置権

第295条〜第302条

民法の留置権分野(第295条〜第302条)をまとめて学べるページです。条文穴埋め8問と判例0件を収録しています。

留置権の解説

留置権は、他人の物を占有している者が、その物に関して生じた債権の弁済を受けるまで、その物を手元にとどめておける担保物権です(295条)。当事者の合意がなくても法律上当然に成立する法定担保物権で、時計の修理代を払ってもらうまで時計を返さない、といった場面で働きます。

この分野(第295条〜第302条)では、成立要件(物との牽連性、債権が弁済期にあること、占有が不法行為によって始まっていないこと)、留置権者の義務(善管注意義務、債務者の承諾のない使用・賃貸・担保提供の禁止)と、消滅(義務違反による消滅請求、代わりの担保の提供、占有の喪失)が問われます。留置権を行使していても、被担保債権の消滅時効は進行します(300条)。

担保物権は、留置権・先取特権・質権・抵当権の4つを性質で比較する問題が定番です。留置権には優先弁済を受ける効力と物上代位性がなく、物を手元にとどめる留置的効力で弁済を促す点が、ほかの担保物権と大きく違います。下の表で4つの担保物権の性質をまとめて確認できます。

性質留置権先取特権質権抵当権
成立法律上当然(法定担保物権)法律上当然(法定担保物権)当事者の設定契約(約定担保物権)当事者の設定契約(約定担保物権)
付従性・随伴性ありありありあり(根抵当権は元本確定前の随伴性なし)
不可分性あり(296条)ありありあり
物上代位性なしあり(304条)あり(350条)あり(372条)
優先弁済を受ける効力なし(果実は弁済に充当できる)ありありあり
留置的効力ありなしあり(347条)なし(占有は設定者に残る)

出典:e-Gov法令検索 民法

3つの論点を具体例で比べる

原則・例外を確認したら、事例と対照例の条件の違いを読み分けてください。善意や過失の要件は、誰について判断するかも確認します。

留置権の成立

原則
他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を持っているときは、その債権の弁済を受けるまでその物を留置できます。成立には、物と債権の牽連性、債権が弁済期にあること、他人の物を占有していることが必要です。
例外・制限
債権が弁済期にないときは成立しません。占有が不法行為によって始まった場合も成立しません(2項)。
具体例
Aから時計の修理を頼まれたBは、修理代金を払ってもらうまで、修理した時計の返還を拒めます。修理代金債権は、その時計に関して生じた債権だからです。
条件を変えた対照例
賃貸借が解除された後、占有する権原がないことを知りながら建物を占有し続けた者が支出した費用については、占有が不法行為によって始まった場合と同様に扱われ、留置権は認められないとされます(判例)。
第三者との関係
留置権は物権なので、目的物が第三者に譲渡されても、その第三者に対して留置権を主張できます。たとえば不動産の売主は、代金の支払を受けるまで、買主から転売を受けた第三者にも引渡しを拒めるとされます(判例)。

担保物権の性質

原則
担保物権には、債権がなければ成立しない付従性、債権の移転に伴って移る随伴性、債権全部の弁済を受けるまで目的物全部に効力が及ぶ不可分性が共通してあります。留置権者も、債権全部の弁済を受けるまで留置物全部について権利を行使できます(296条)。
例外・制限
留置権には、目的物の売却代金などに効力を及ぼす物上代位性と、他の債権者に先立って弁済を受ける優先弁済的効力がありません。ただし、留置物から生じる果実は収取して、他の債権者に先立って債権の弁済に充当できます(297条)。
具体例
AがBの建物に関する費用償還請求権について留置権を持っている場合、Bが一部を弁済しても、Aは残額の弁済を受けるまで建物全部を留置できます(不可分性)。
条件を変えた対照例
留置物が火災で焼失しても、留置権者は火災保険金に物上代位することはできません。物上代位ができるのは、先取特権・質権・抵当権です。
第三者との関係
留置権を行使していても、被担保債権の消滅時効は進行します(300条)。物を留置しているだけでは、債権を行使したことにはならないからです。

留置権の消滅

原則
留置権者は、善良な管理者の注意をもって留置物を占有しなければならず、債務者の承諾なしに留置物を使用・賃貸し、又は担保に供することはできません。これに違反したときは、債務者は留置権の消滅を請求できます。
例外・制限
物の保存に必要な使用は、債務者の承諾がなくても許されます(298条2項ただし書)。違反があっても留置権は当然には消滅せず、債務者の消滅請求によって消滅します。
具体例
建物の費用償還請求権について留置権を持つ者が、建物に住み続けることは、物の保存に必要な使用として承諾なしに許されるとされます(判例)。
条件を変えた対照例
同じ留置権者が、債務者の承諾なしに建物を第三者に賃貸した場合は、298条2項に違反するため、債務者は留置権の消滅を請求できます。
第三者との関係
債務者は相当の担保を提供して留置権の消滅を請求でき(301条)、留置権者が留置物の占有を失ったときも留置権は消滅します(302条)。ただし、債務者の承諾を得て賃貸や質入れをした場合は、占有を失っても消滅しません。

原文照合日時:2026/10/7 3:55:00(日本時間)

原文照合:e-Gov原文の第295条〜第302条と、比較表に引用した第304条・第347条・第350条・第372条、この分野の説明・3つの学習ノートを照合。判例の結論は収録済み過去問の自作解説と一般的な理解で確認し、事件番号・判決原文までは照合していない。人による法的監修は未実施。

確認した原文版:129AC0000000089_20260624_508AC0000000045

e-Govの原文を確認

第二編 物権 / 第七章 留置権

第295条(留置権の内容)

他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。

第2項前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。

第296条(留置権の不可分性)

留置権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使することができる。

第297条(留置権者による果実の収取)

留置権者は、留置物から生ずる果実を収取し、他の債権者に先立って、これを自己の債権の弁済に充当することができる。

第2項前項の果実は、まず債権の利息に充当し、なお残余があるときは元本に充当しなければならない。

第298条(留置権者による留置物の保管等)

留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならない。

第2項留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、又は担保に供することができない。ただし、その物の保存に必要な使用をすることは、この限りでない。

第3項留置権者が前二項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができる。

第299条(留置権者による費用の償還請求)

留置権者は、留置物について必要費を支出したときは、所有者にその償還をさせることができる。

第2項留置権者は、留置物について有益費を支出したときは、これによる価格の増加が現存する場合に限り、所有者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、裁判所は、所有者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

第300条(留置権の行使と債権の消滅時効)

留置権の行使は、債権の消滅時効の進行を妨げない。

第301条(担保の供与による留置権の消滅)

債務者は、相当の担保を供して、留置権の消滅を請求することができる。

第302条(占有の喪失による留置権の消滅)

留置権は、留置権者が留置物の占有を失うことによって、消滅する。ただし、第二百九十八条第二項の規定により留置物を賃貸し、又は質権の目的としたときは、この限りでない。