第二編 物権/第十章 抵当権/第四節 根抵当
民法 第398条の12(根抵当権の譲渡)
重要度は過去問の出題年度などをもとにした当サイトの評価です。
この条の要点
- 元本確定前の譲渡は設定者の承諾で可能:元本確定前でも設定者の承諾があれば根抵当権の譲渡は可能で、第三者の承諾は不要である。
- 分割譲渡における目的権利の消滅:分割譲渡では譲渡部分の目的権利は消滅するため、その権利者の承諾が必要になる。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第398条の12(根抵当権の譲渡)
元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権を譲り渡すことができる。
②根抵当権者は、その根抵当権を二個の根抵当権に分割して、その一方を前項の規定により譲り渡すことができる。この場合において、その根抵当権を目的とする権利は、譲り渡した根抵当権について消滅する。
③前項の規定による譲渡をするには、その根抵当権を目的とする権利を有する者の承諾を得なければならない。
条文の要点
根抵当権の譲渡とは、元本確定前に根抵当権者が根抵当権設定者の承諾を得てその権利を他人に譲り渡すことです(398条の12第1項)。
2個の根抵当権に分割して一方を譲ることもでき、その場合は根抵当権を目的とする権利が譲渡した部分から消滅するため目的権利者の承諾も要ります。確定前の処分は制限されますが、譲渡自体は認められています。
根抵当権の譲渡の承諾の相手
譲渡に要るのは根抵当権設定者の承諾で、後順位抵当権者や転抵当権者など第三者の承諾は不要です。分割して一方を譲渡する場合に限り、譲渡部分から消える目的権利を持つ者の承諾が追加で必要になります。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項 | 要件 | 元本確定前の譲渡には根抵当権設定者の承諾が要る |
| 2項前段 | 効果 | 2個の根抵当権に分割してその一方を譲り渡せる |
| 2項後段 | 効果 | 分割譲渡では根抵当権を目的とする権利が譲渡した部分について消滅する |
| 3項 | 要件 | 分割譲渡には目的権利を有する者の承諾も要る |
具体例
B所有の土地にAの根抵当権(元本未確定)があります。AはBの承諾を得て、その根抵当権をCに譲り渡しました。
設定者Bの承諾があるため譲渡は有効で、Cが根抵当権者になります。
反例(結論が変わる)
同じ設定で、AがBの承諾を得ないままCに譲渡しようとした場合に変えます。
設定者の承諾がないため、元本確定前の譲渡はできません。
関連条との違い
- 民法 第398条の13:一部譲渡は分割せず譲渡人と譲受人が根抵当権を共有する形。本条2項の分割譲渡は権利を2個に分けて一方を移し、目的権利者の承諾も要る
- 民法 第398条の11:確定前は順位の譲渡・放棄など376条1項の処分ができないが、根抵当権を他の債権の担保とすることはできる
過去問で誤りとされた肢の型
- 司法書士令和6年度 問15オ
2個に分割して一方を譲渡できないとする誤り。設定者の承諾があれば分割譲渡はできる
- 司法書士平成29年度 問14ウ
先順位の抵当権者から順位を譲り受けることもできないとする誤り。確定前は自らの順位譲渡はできないが順位の譲受はできる
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
法令版: 2026年6月24日施行版
この条文の〇×問題(2問)
元本確定前の譲渡は設定者の承諾で可能
担保すべき元本がまだ確定していない時点でも、根抵当権者は、その根抵当権の目的となった不動産を提供した設定者の承諾を得れば、当該根抵当権を他人に譲り渡すことができる。
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正解 ○
正しい。元本の確定前は順位の譲渡・放棄などの処分に制限があるが、根抵当権そのものを譲り渡すことは禁止されておらず、根抵当権設定者の承諾を得れば可能である。後順位の抵当権者その他の第三者の承諾は要求されていない。
学習ポイント:元本確定前でも設定者の承諾があれば根抵当権の譲渡は可能で、第三者の承諾は不要である。
第398条の12第1項、関連:第398条の11第1項
分割譲渡における目的権利の消滅
根抵当権者がその根抵当権を二個の根抵当権に分割して一方を譲り渡した場合、譲渡前にその根抵当権を目的とする権利が設定されていたときでも、その権利は譲渡された根抵当権についても存続するため、その権利を有する者の承諾は不要である。
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正解 ×
誤り。民法398条の12第2項は、分割して一方を譲渡した場合、その根抵当権を目的とする権利は譲渡した根抵当権について消滅すると定める。目的権利が譲渡部分から消えるからこそ、同条3項はこの譲渡に目的権利を有する者の承諾を要求している。
学習ポイント:分割譲渡では譲渡部分の目的権利は消滅するため、その権利者の承諾が必要になる。
第398条の12第2項・3項
根拠・関連条文
この条文を解説で参照する過去問
行政書士平成28年 問31肢3
元本確定前においては、Bは、甲土地に対する根抵当権をAの承諾を得てEに譲り渡すことができる。
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正しい
元本確定前は根抵当権を設定者の承諾を得て譲渡できる(398条の12)。正しい。
司法書士令和7年度 問59ア
乙区1番でA及びBを根抵当権者とする元本確定前の根抵当権の設定の登記がされており、乙区1番付記1号でCを転抵当権者とする転抵当権の設定の登記がされている甲土地について、Aが自己の根抵当権の共有者の権利をDに全部譲渡し、その旨の登記を申請する場合には、Cの承諾があったことを証する情報を提供することを要しない。
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正しい
正しい。根抵当権の共有者が自己の権利を譲渡するには設定者の承諾と他の共有者の同意を要するが(民398条の14第2項・398条の12第1項)、抵当権を目的とする第三者(転抵当権者C)の承諾は要しない(民398条の12第3項の承諾は同条2項の分割譲渡の場合に必要)。
司法書士令和6年度 問15オ
根抵当権者は、その根抵当権を2個の根抵当権に分割して、その一方を譲り渡すことはできない。
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誤り
誤り。元本確定前でも、根抵当権者は根抵当権設定者の承諾を得て根抵当権を2個に分割し、その一方を譲り渡すことができる(398条の12)。
司法書士令和2年度 問14エ
根抵当権者は、元本の確定前において、根抵当権設定者の承諾を得ることなく、その根抵当権を他の債権の担保とすることができる。
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正しい
正しい。元本の確定前においては、根抵当権者は根抵当権設定者の承諾を得ることなく、その根抵当権を他の債権の担保とすることができる(民法398条の12)。
司法書士平成29年度 問14ウ
元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権の順位を譲渡することはできず、先順位の抵当権者から抵当権の順位を譲り受けることもできない。
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誤り
誤り。元本確定前は根抵当権の順位を譲渡することはできないが、先順位の抵当権者から順位を譲り受けることはできる(民法398条の12第2項・3項)。
問題で確認する
第398条の12の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。