第三編 債権/第五章 不法行為
民法 第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
重要度は過去問の出題年度などをもとにした当サイトの評価です。
この条の要点
- 占有者責任における過失の立証責任:占有者責任は立証責任が転換される。被害者は瑕疵と損害を示せば足り、占有者側が必要な注意を証明する。
- 損害の原因者への求償:占有者・所有者が被害者に賠償しても、真の原因者には求償権を行使できる。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
②前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
③前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
条文の要点
土地の工作物責任とは、工作物の設置・保存の瑕疵で他人に損害が生じたときの賠償責任で、まず占有者が負います(717条1項)。
占有者の責任は過失責任で、損害防止に必要な注意をしたことを自ら証明すれば免れ、代わりに所有者が負います。所有者の責任は無過失責任で、注意をしても免れません。
土地の工作物責任の二段構えと免責の非対称
被害者は占有者の過失を立証する必要がなく、瑕疵と損害を示せば足ります。占有者が免責されたときに初めて所有者の責任が問題になり、賃借人など事実上支配できる者が占有者に当たります。竹木の栽植・支持の瑕疵にも準用され、原因者への求償は別枠です。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項 | 効果 | 設置・保存に瑕疵のある工作物で損害が生じたら、まず占有者が賠償責任を負う |
| 1項ただし書 | 例外 | 占有者が必要な注意をしたことを証明すれば、所有者が賠償する(所有者に注意による免責はない) |
| 2項 | 効果 | 竹木の栽植・支持の瑕疵にも1項を準用する |
| 3項 | 効果 | 被害者に賠償した占有者・所有者は原因者に求償できる |
具体例
BがAから借りた建物の外壁がはがれ、通行人Cがけがをしました。Bは必要な注意をしていたことを証明できません。
占有者BがCに賠償責任を負います。
反例(結論が変わる)
同じ設定で、Bが損害の発生を防止するのに必要な注意をしたことを証明した場合に変えます。
占有者Bは免責され、所有者Aが賠償責任を負います。Aは注意をしても免れません。
関連条との違い
過去問で誤りとされた肢の型
- 管業令和元年度 問3肢2
占有者と所有者の両方が注意で免責されるとする誤り。注意による免責は占有者だけ
- 賃管令和7年度 問34肢3
竹木の瑕疵で所有者が注意で免れるとする誤り。竹木にも1項が準用され所有者の免責はない
- 宅建令和3年10月 問8肢1
占有者が注意をしなくても責任を負わないとする誤り。占有者は必要な注意をしたときだけ免責される
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
法令版: 2026年6月24日施行版
この条文の〇×問題(2問)
占有者責任における過失の立証責任
土地の工作物の設置又は保存の瑕疵によって損害を受けた被害者がその占有者に損害賠償を請求する場合、被害者は占有者が工作物の管理につき具体的にどのような落ち度があったかを立証しなくてもよい。
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正解 ○
正しい。土地の工作物の瑕疵による損害では、被害者は占有者の過失を立証しなくても賠償を請求できる。占有者が免責されるには、損害の発生を防止するのに必要な注意をしたことを自ら証明する必要があり、その証明に成功したときは所有者が責任を負う。一般の不法行為とは立証責任の構造が異なる。
学習ポイント:占有者責任は立証責任が転換される。被害者は瑕疵と損害を示せば足り、占有者側が必要な注意を証明する。
第717条1項、関連:第709条
損害の原因者への求償
土地の工作物の瑕疵によって通行人が負傷し、その占有者が被害者に対して損害を賠償した場合、その損害の原因について工事を請け負った業者が責任を負うときでも、占有者は賠償責任を負う以上、その業者に対して求償することはできない。
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正解 ×
誤り。土地の工作物や竹木の瑕疵による損害について、その原因に責任を負う他の者があるときは、被害者に賠償した占有者又は所有者はその者に対して求償権を行使できると明示されている。占有者の賠償は最終負担を確定するものではなく、原因者への求償が妨げられない。
学習ポイント:占有者・所有者が被害者に賠償しても、真の原因者には求償権を行使できる。
第717条3項
根拠・関連条文
この条文を解説で参照する過去問
行政書士平成28年 問34ウ
Gがその所有する庭に植栽した樹木が倒れて通行人Hに怪我を負わせる事故が生じた場合において、GがHに損害を賠償したときは、植栽工事を担当した請負業者Iの作業に瑕疵があったことが明らかな場合には、GはIに対して求償することができる。
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工作物責任の占有者が賠償した場合、瑕疵ある請負業者に求償できる(717条・判例)。正しい。
行政書士平成25年 問19肢3
公の営造物に該当しない国有財産の瑕疵に起因する損害の賠償責任については、民法の規定が適用される。
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正しい
公の営造物に該当しない国有財産(普通財産)の瑕疵による損害賠償責任は民法が適用される。正しい。
行政書士平成25年 問19肢4
国が占有者である公の営造物の瑕疵に起因する損害の賠償責任については、必要な注意義務を国が尽くした場合の占有者としての免責に関し、民法の規定が適用される。
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誤り
国が占有者である公の営造物の瑕疵による損害には国家賠償法2条の無過失責任が適用され、民法717条の占有者の免責は適用されない。誤り。
行政書士平成24年 問34エ
Aの運転する自動車が、見通しが悪く遮断機のない踏切を通過中にB鉄道会社の運行する列車と接触し、Aが負傷して損害が生じた。この場合、線路は土地工作物にはあたらないから、AがB鉄道会社に対して土地工作物責任に基づく損害賠償を請求することはできない。
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妥当ではない
鉄道の線路は土地の工作物に当たり、設置・管理の瑕疵があれば土地工作物責任に基づく請求が可能(判例)。妥当ではない。
行政書士平成23年 問19肢1
国家賠償法2条にいう「公の営造物」は、民法717条の「土地の工作物」を国家賠償の文脈において表現したものであるから、両者は同じ意味であり、動産はここに含まれないと解されている。
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誤り
国賠2条の『公の営造物』には動産も含まれ、民法717条の『土地の工作物』より広い概念と解される。誤り。
宅建令和3年10月 問8肢1
Aが甲建物をCから賃借している場合、Aは甲建物の保存の瑕疵による損害の発生の防止に必要な注意をしなかったとしても、Bに対して不法行為責任を負わない。
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誤り
誤り。工作物の占有者(賃借人A)は注意をしなかった場合に責任を負い、『注意をしなかったとしても責任を負わない』は誤り(民法717条1項—占有者は過失責任)。
宅建令和3年10月 問8肢2
Aが甲建物を所有している場合、Aは甲建物の保存の瑕疵による損害の発生の防止に必要な注意をしたとしても、Bに対して不法行為責任を負う。
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正しい
正しい。所有者の責任は無過失責任であり、注意をしても責任を免れない(民法717条1項ただし書)。
賃管令和7年度 問34肢1
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じた場合において、その工作物の占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、その工作物の所有者が損害賠償の責任を負う。
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正しい
正しい。土地の工作物の設置・保存の瑕疵による損害について、占有者が必要な注意をしたときは所有者が賠償責任を負う(民法717条1項ただし書)。
賃管令和7年度 問34肢3
竹木の栽植又は支持に瑕疵があることによって他人に損害を生じた場合において、その所有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、その所有者は損害賠償の責任を負うことはない。
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誤り
誤り。竹木の栽植・支持の瑕疵にも民法717条1項が準用される。所有者には必要な注意をしたことを理由とする免責が認められない(同条2項)。
賃管令和3年度 問8肢1
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誤り
誤り。アは責任の順序が逆で、一次的には占有者が責任を負い、占有者が必要な注意をしたときに所有者が負う(民法717条)。
ほか9肢は、各過去問のページで確認できます。
問題で確認する
第717条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。