第五編 相続/第四章 相続の承認及び放棄/第二節 相続の承認/第一款 単純承認
民法 第921条(法定単純承認)
重要度は過去問の出題年度などをもとにした当サイトの評価です。
この条の要点
- 法定単純承認から除外される保存行為と短期賃貸:保存行為と法定の短期賃貸借期間内の賃貸は処分に当たらず、みなし承認にならない。
- 放棄後の背信行為に対するみなし承認の例外:放棄後の不正でも、それにより相続人となった者が承認済みならみなし承認にならない。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第921条(法定単純承認)
次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。
この条文の〇×問題(2問)
法定単純承認から除外される保存行為と短期賃貸
相続人が熟慮期間内に、相続財産である老朽化した建物の修繕工事を行い、また相続財産の土地を処分の権限がない者ができる賃貸借の存続期間の法定上限制の範囲内で賃貸した場合でも、これらの行為はいずれも相続財産の処分に当たるため、相続人は単純承認をしたものとみなされる。
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正解 ×
誤り。相続財産の処分は単純承認をしたものとみなされる事由だが、保存行為及び法定の短期賃貸借期間を超えない賃貸はただし書により処分から除外される。老朽建物の修繕は保存行為であり、期間内の賃貸も処分に当たらないため、みなし承認にならない。
学習ポイント:保存行為と法定の短期賃貸借期間内の賃貸は処分に当たらず、みなし承認にならない。
第921条1号ただし書、関連:第602条
放棄後の背信行為に対するみなし承認の例外
相続の放棄をした者が、その後に相続財産の一部を隠匿した場合でも、その相続人が放棄をしたことによって相続人となった者が既に相続の承認をした後であれば、隠匿をした者が単純承認をしたものとみなされることはない。
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正解 ○
正しい。限定承認又は放棄をした後に相続財産を隠匿し、私に消費し、又は悪意で目録に記載しなかった者は単純承認をしたものとみなされるが、放棄によって相続人となった者が相続の承認をした後はこの限りでない。次順位者が承認済みなら放棄者の背信行為でもみなし承認にならない。
学習ポイント:放棄後の不正でも、それにより相続人となった者が承認済みならみなし承認にならない。
第921条3号ただし書
根拠・関連条文
この条文を解説で参照する過去問
司法書士令和7年度 問21エ
相続人が相続財産を処分した場合において、当該相続人がその処分時に被相続人が死亡したことを確実に予想していたが、被相続人が死亡したことを知らなかったときは、単純承認をしたものとはみなされない。
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誤り
誤り。相続財産の処分による単純承認みなし(921条1号)には、被相続人の死亡を確実に予想しながらあえて処分した場合も含まれる(最判昭42.4.27)。したがって本件は単純承認とみなされる。
司法書士平成26年度 問22ウ
相続人が3年を超えない期間を定めて相続財産である建物を賃貸しても、単純承認をしたものとみなされない。
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正しい
正しい。相続人が相続財産を処分すれば単純承認とみなされるが(民法921条1号本文)、保存行為及び短期賃貸借の期間(602条)を超えない賃貸は処分に当たらない(同号但書)。3年は建物賃貸の短期賃貸借期間内である。
司法書士平成25年度 問22ア
C及びDが相続の放棄の申述をしたが、Cが当該申述をする前に自己のために相続が開始されたことを知りながら相続財産の一部を自己の債務の弁済に充てていた場合には、Bの相続分は、450万円となる。
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正しい
正しい。相続の開始を知りながら相続財産を自己の債務の弁済に充てたCは法定単純承認となり(民法921条1号)、相続人はB・CでBの相続分は450万円となる。
マン管平成28年度 問17肢3
Bが、自らの熟慮期間内に甲マンションの301号室を、Dに対して、賃貸期間を2年とする定期建物賃貸借契約により賃貸したときには、熟慮期間内であっても相続の放棄をすることができない。
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誤り
誤り。相続財産の処分は単純承認とみなされるが、民法602条に定める期間を超えない賃貸をすることは除かれる(民法921条1号ただし書)。建物の賃貸借で期間2年は602条の期間(3年)内であるから単純承認とはみなされず、熟慮期間内であれば相続の放棄ができる。
問題で確認する
第921条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。