第二編 株式会社/第四章 機関/第五節 取締役会/第二款 運営
会社法 第369条(取締役会の決議)
この条の要点
- 特別利害関係取締役の議決参加制限:特別利害関係取締役は議決に加われず、定足数・決議数の母数からも除外される。
- 議事録への異議不記載の推定効果:異議をとどめない取締役は賛成推定。棄権・反対扱いではない。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第369条(取締役会の決議)
取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。
②前項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。
③取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
④前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
⑤取締役会の決議に参加した取締役であって第三項の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。
条文の要点
取締役会の決議とは、議決に加わることができる取締役の過半数の出席と出席者の過半数の賛成で成立する業務執行の意思決定です(369条1項)。
決議は特別の利害関係を有する取締役を除いて行われ、その者は定足数と議決数の計算の分母にも入りません。決議に参加して議事録に異議を残さなかった取締役は、その決議に賛成したものと推定されます。
取締役会の決議の定足数と分母
数えるのは株主総会のような議決権ではなく取締役の頭数です。出席の定足数と議決の要件はいずれも定款で引き上げることだけができ、下回る割合への変更はできません。利益相反のある取締役がいると分母が縮み、残った者だけで決議が成立します。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項 | 要件 | 議決に加われる取締役の過半数の出席と、出席者の過半数の賛成が必要。両方とも定款で上回る割合に引き上げられる |
| 2項 | 例外 | その決議につき特別の利害関係を持つ取締役は議決に参加できず、出席数にも数えない |
| 3項 | 手続 | 議事録を作成し、書面の場合は出席した取締役と監査役が署名または記名押印する |
| 5項 | 効果 | 決議に参加し議事録に異議を残さなかった取締役は賛成したものと推定され、あとで反対を主張しにくい |
具体例
取締役がA・B・Cの3名いる会社が、Aの所有する土地をAから買い受ける契約の承認を取締役会で行います。
Aは会社と自己の利益が相反する取引の当事者なので議決に加われず、議決に加われるのはB・Cの2名です。B・C両名の出席と両名の賛成で承認が成立します。
反例(結論が変わる)
同じ設定で、売主がAではなく取締役と無関係の第三者である場合に変えます。
Aにも議決に加わる資格が戻り、分母は3名に戻ります。2名以上の出席と出席者の過半数の賛成で承認が成立します。
関連条との違い
過去問で誤りとされた肢の型
- 行政書士令和7年 問38肢5
議事録に異議を残さなかった取締役は賛成したものとみなされるとする誤り。反証で覆せる推定であり、覆せないみなしとは違います
- 司法書士平成29年度 問30エ
計算書類の承認をする取締役会の議事録に会計参与が署名しなければならないとする誤り。署名・記名押印を要するのは出席した取締役と監査役です
- 司法書士平成27年度 問30ウ
監査の範囲を会計に限定された監査役は議事録への署名を要しないとする誤り。署名義務は監査の範囲の限定で免除されません
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
法令版: 2026年8月12日施行版
この条文の〇×問題(2問)
特別利害関係取締役の議決参加制限
取締役会の決議について特別の利害関係を有する取締役は、その議決に加わることができず、出席定数および決議の計算の基礎となる取締役の数にも算入されない。
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正解 ○
正しい。取締役会の決議について特別の利害関係を有する取締役は議決に加わることができず、その者は出席定数(議決に加わることができる取締役の過半数)および議決の計算の基礎となる取締役の数に算入されない。特別利害関係取締役が参加できない旨の規定は、議事録への記載事項ともなっている。
学習ポイント:特別利害関係取締役は議決に加われず、定足数・決議数の母数からも除外される。
第369条1項・2項、関連:第365条
議事録への異議不記載の推定効果
取締役会の決議に参加した取締役で、議事録に異議をとどめなかったものは、その決議を棄権したものと推定される。
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正解 ×
誤り。取締役会の決議に参加した取締役で、議事録に異議をとどめなかったものは、その決議に「賛成した」ものと推定される。棄権と推定されるのではなく、むしろ賛成扱いとなるため、議事録に異議を残さない取締役は後日反対していたと主張することは困難である。
学習ポイント:異議をとどめない取締役は賛成推定。棄権・反対扱いではない。
第369条5項
根拠・関連条文
この条文を解説で参照する過去問
行政書士令和7年 問38肢4
取締役会の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。
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正しい
特別利害関係を有する取締役は議決に加われない(会社法369条2項)。
行政書士令和7年 問38肢5
取締役会の決議に参加した取締役が、当該取締役会の議事録に異議をとどめないで署名または記名押印した場合には、当該決議に賛成したものとみなされる。
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誤り
議事録に異議をとどめなかった取締役は決議に賛成したものと『推定』される(会社法369条5項)。反証で覆せる推定であって、覆せない『みなし』ではない。
行政書士令和元年 問39ウ
取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行う。
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取締役会の決議は議決に加われる取締役の過半数出席・過半数で行う(会社法369条)。正しい。
行政書士令和元年 問39エ
取締役会の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。
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特別利害関係を有する取締役は議決に加われない(会社法369条2項)。正しい。
行政書士令和元年 問39オ
取締役会の決議に参加した取締役であって、取締役会の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。
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議事録に異議をとどめない取締役は賛成したものと推定される(会社法369条4項)。正しい。
司法書士令和2年度 問61ア
取締役がA、B及びCの3名であり、代表取締役がAであるX株式会社において、X株式会社がA及びBが所有権の登記名義人である甲不動産をA及びBから購入してする売買を登記原因とする共有者全員持分全部移転の登記については、C一人で取締役会の決議をした取締役会の承認を受けたことを証する情報を提供して申請することができる。
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正しい
正しい。取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数で行う(会社法369条1項)。A・Bは自己と会社の利益が相反するため議決に加わることができず(同2項)、残る取締役C一人で構成される取締役会の承認決議が有効であり、その議事録を提供して申請できる。
司法書士平成29年度 問30エ
会計参与は、計算書類の承認をする取締役会に出席しなければならず、取締役会の議事録が書面をもって作成されているときは、出席した会計参与は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
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誤り
誤り。計算書類承認の取締役会への出席を要するのは会計監査人等であり、議事録への署名・記名押印を要するのは出席した取締役及び監査役である(会社法369条3項)。会計参与に署名義務はない。
司法書士平成27年度 問30ウ
監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社の監査役は、取締役会に出席した場合でも、書面をもって作成されたその議事録に署名又は記名押印をする必要はない。
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誤り
誤り。監査の範囲を会計に限定された監査役でも、取締役会に出席した場合は議事録への署名又は記名押印を要する(会社法369条3項)。
問題で確認する
第369条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。