第三章 借家/第二節 建物賃貸借の効力
借地借家法 第31条(建物賃貸借の対抗力)
この条の要点
- 建物引渡しと対抗力:建物の引渡しを受ければ、賃借権登記なしで後の物権取得者に対抗できる。
- 引渡し前の譲渡:建物賃借権は契約書だけでは対抗できず、建物の引渡しが必要。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第31条(建物賃貸借の対抗力)
建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。
条文の要点
建物賃借権の対抗力とは、登記がなくても建物の引渡しを受けていれば、その後に建物の物権を取得した者へ賃貸借の効力を主張できることです(31条)。
本条では賃借権の登記がなくても、物権取得者より先の建物の引渡しで対抗できます。対抗力を備えた建物が譲渡されると、民法605条の2により賃貸人の地位も原則として新所有者へ移ります。同条2項の地位留保合意がある場合は別です。
建物賃借権の対抗力の要件
引渡しは対抗する相手が物権を取得する前に受けていることが要り、契約締結が先というだけでは足りません。賃借人同士で競合する場合も、本条の引渡しや民法605条の登記による対抗要件の先後を確かめます。賃貸人の地位が譲受人に移転するのも、賃借人が対抗要件を備えていることが前提です。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項 | 要件 | 対抗する相手の物権取得の前に建物の引渡しを受けていること |
| 1項 | 効果 | 登記がなくても後の物権取得者に賃貸借の効力を対抗できる |
| 1項 | 要件 | 対象は建物の賃貸借で、土地の賃貸借には使えない |
具体例
Aが建物をBに貸して引渡し、Bが入居した。その後Aがその建物をCに売却し、所有権を移転した。Bの賃借権登記も、A・C間の賃貸人地位の留保合意もない。
Bは賃借権登記がなくてもCに賃貸借を対抗でき、留保合意もないため賃貸人の地位はCに移転する。
反例(結論が変わる)
同じ設定で、AがCへ売却して物権を移転した時点では、まだBへの引渡しが済んでいない場合に変える。
契約が先でも引渡しがなければ対抗要件を備えず、BはCに賃借権を対抗できない。
関連条との違い
- 民法 第605条:民法605条は不動産賃貸借の対抗に登記を求める。31条は建物に限り引渡しで足りる特則
- 借地借家法 第10条:借地権の対抗力は借地上の建物の登記が要件。建物の賃借人側は引渡しで足り、手段が違う
- 民法 第605条の2:賃貸人たる地位の移転は605条の2が受け持ち、31条の引渡しで対抗要件を備えたことが前提になる
過去問で誤りとされた肢の型
- 宅建平成27年 問11肢3
先に契約した賃借人は引渡しがなくても対抗できるとする誤り。賃借人どうしの優劣も対抗要件の先後で決まる
- マン管平成28年度 問14肢2
賃貸人地位の移転に伴う敷金債務の承継に借主の同意が要るとする誤り。地位移転に伴い承継される
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
法令版: 2026年5月21日施行版
この条文の〇×問題(2問)
建物引渡しと対抗力
賃借人BがAから借りた建物の引渡しを受けて住み始めた後、Aが建物をCへ売った場合、Bは建物賃借権を登記していなくてもCに賃貸借の効力を対抗できる。
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正解 ○
正しい。第31条第1項は、建物賃貸借について登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後に建物の物権を取得した者に対して効力を生ずるとする。賃借人が先に建物の引渡しを受け、その後でCが所有権を取得したなら、登記のない建物賃借権でも対抗できる。引渡しと所有権取得の前後が結論を左右する。
学習ポイント:建物の引渡しを受ければ、賃借権登記なしで後の物権取得者に対抗できる。
第31条第1項
引渡し前の譲渡
AとBが建物賃貸借契約を結んだが、Bへの引渡し前にAが建物をCへ譲った。Bは契約書が先に作られているというだけで、第31条によりCへ当然に賃借権を対抗できる。
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正解 ×
誤り。第31条第1項による建物賃貸借の対抗力は、契約の締結だけではなく建物の引渡しを要する。Bへの引渡し前にCが建物の物権を取得した場合、先に契約書へ署名した事実だけでは同条の対抗要件を備えたことにならない。物権取得者に対する効力を判断するときは、契約日よりも建物の引渡しと第三者取得の順序を確認する。
学習ポイント:建物賃借権は契約書だけでは対抗できず、建物の引渡しが必要。
第31条第1項
この条文を解説で参照する過去問
宅建平成27年 問11肢3
Cが、AB間の賃貸借契約締結前に、Aと甲建物の賃貸借契約を締結していた場合、AがBに甲建物を引き渡しても、Cは、甲建物の賃借権をBに対抗することができる。
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誤り
誤り。同一の建物の賃借人相互の優劣は対抗要件の先後で決まり、建物の賃貸借は引渡しが対抗要件となる(借地借家法31条)。先に契約したCでも引渡しを受けていなければ、引渡しを受けたBに賃借権を対抗することができない。
賃管令和3年度 問28肢1
Aが甲建物を譲渡する前にBがAから引渡しを受けていれば、賃貸人たる地位はCに移転する。
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正しい
正しい。借主が対抗要件(引渡し)を備えていれば、賃貸人の地位は新所有者Cに当然に移転する(借地借家法31条)。
賃管平成28年度 問15肢1
貸主が、自己の所有建物を借主に賃貸して引き渡した後、第三者に当該建物を売却し、所有権移転登記を完了した場合には、特段の事情がない限り、貸主の地位もこれに伴って第三者に移転し、敷金に関する権利義務も第三者に承継される。
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正しい
正しい。建物賃貸借は引渡しで対抗力を持ち、所有権移転に伴い貸主の地位と敷金関係も承継される。
マン管令和2年度 問13肢2
Bの抵当権について設定登記がされる前に、Cが、Aから201号室を賃借して同室の引渡しを受けていた場合において、Bの抵当権が実行されてDが同室を買い受け、Cに対して同室の明渡しを請求したときは、Cは、同室の賃借権を有することを理由にその請求を拒むことができる。
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正しい
正しい。抵当権の設定登記前に賃借して引渡を受けた賃借人は、買受人に対して賃借権を対抗できる。
マン管平成28年度 問14肢2
AとBの賃貸借契約に基づき、BからAに差し入れられた敷金の返還債務は、Bの同意がなければCに承継されない。
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誤り
誤り。賃借人Bが居住し建物の引渡しを受けて対抗要件を備えている場合、譲渡による賃貸人の地位の移転に伴い、敷金返還債務も譲受人Cに承継される。Bの同意を要件としない(現行民法605条の2第1・4項)。
管業令和7年度 問41肢2
Bは、建物賃借権についての登記がなくても、Aから建物の引渡しを受けた場合には、その後に当該建物をAから買い受けた第三者に対して、建物賃借権を対抗することができる。
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正しい
正しい。建物賃借権は登記がなくても引渡しを受けていれば、その後の建物の取得者に対抗できる。
問題で確認する
第31条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。