第五章 業務/第一節 通則
宅地建物取引業法 第34条の2(媒介契約)
この条の要点
- 売買媒介契約書面の交付時期:売買・交換の媒介契約書面は、媒介契約締結後に依頼者へ遅滞なく交付する。
- 売却希望価額について意見を述べる場合の根拠:媒介業者が売買価額・評価額に意見を述べるときは、査定の根拠を示す。
- 専任媒介契約の有効期間上限:専任媒介契約は3か月が上限。6か月の合意をしても期間は3か月となる。
- 専属専任媒介契約における自己発見取引:専属専任媒介では、自己発見の相手方とも媒介業者を通す特約がある。
- 指定流通機構登録証明書の依頼者への引渡し:登録後は登録を証する書面を遅滞なく依頼者に引き渡す(承諾を得て電磁的提供も可)。
- 専任媒介と専属専任媒介の業務処理報告頻度:報告は通常の専任媒介で2週間に1回以上、専属専任媒介で1週間に1回以上。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第34条の2(媒介契約)
宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約(以下この条において「媒介契約」という。)を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない。
一 当該宅地の所在、地番その他当該宅地を特定するために必要な表示又は当該建物の所在、種類、構造その他当該建物を特定するために必要な表示
二 当該宅地又は建物を売買すべき価額又はその評価額
三 当該宅地又は建物について、依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することの許否及びこれを許す場合の他の宅地建物取引業者を明示する義務の存否に関する事項
四 当該建物が既存の建物であるときは、依頼者に対する建物状況調査(建物の構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として国土交通省令で定めるもの(第三十七条第一項第二号の二において「建物の構造耐力上主要な部分等」という。)の状況の調査であつて、経年変化その他の建物に生じる事象に関する知識及び能力を有する者として国土交通省令で定める者が実施するものをいう。第三十五条第一項第六号の二イにおいて同じ。)を実施する者のあつせんに関する事項
五 媒介契約の有効期間及び解除に関する事項
六 当該宅地又は建物の第五項に規定する指定流通機構への登録に関する事項
七 報酬に関する事項
八 その他国土交通省令・内閣府令で定める事項
②宅地建物取引業者は、前項第二号の価額又は評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない。
③依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することを禁ずる媒介契約(以下「専任媒介契約」という。)の有効期間は、三月を超えることができない。これより長い期間を定めたときは、その期間は、三月とする。
④前項の有効期間は、依頼者の申出により、更新することができる。ただし、更新の時から三月を超えることができない。
⑤宅地建物取引業者は、専任媒介契約を締結したときは、契約の相手方を探索するため、国土交通省令で定める期間内に、当該専任媒介契約の目的物である宅地又は建物につき、所在、規模、形質、売買すべき価額その他国土交通省令で定める事項を、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣が指定する者(以下「指定流通機構」という。)に登録しなければならない。
⑥前項の規定による登録をした宅地建物取引業者は、第五十条の六に規定する登録を証する書面を遅滞なく依頼者に引き渡さなければならない。
⑦前項の宅地建物取引業者は、第五項の規定による登録に係る宅地又は建物の売買又は交換の契約が成立したときは、国土交通省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を当該登録に係る指定流通機構に通知しなければならない。
⑧媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、当該媒介契約の目的物である宅地又は建物の売買又は交換の申込みがあつたときは、遅滞なく、その旨を依頼者に報告しなければならない。
⑨専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、前項に定めるもののほか、依頼者に対し、当該専任媒介契約に係る業務の処理状況を二週間に一回以上(依頼者が当該宅地建物取引業者が探索した相手方以外の者と売買又は交換の契約を締結することができない旨の特約を含む専任媒介契約にあつては、一週間に一回以上)報告しなければならない。
⑩第三項から第六項まで及び前二項の規定に反する特約は、無効とする。
⑪宅地建物取引業者は、第一項の書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、依頼者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法をいう。以下同じ。)であつて同項の規定による記名押印に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該書面に記名押印し、これを交付したものとみなす。
⑫宅地建物取引業者は、第六項の規定による書面の引渡しに代えて、政令で定めるところにより、依頼者の承諾を得て、当該書面において証されるべき事項を電磁的方法であつて国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該書面を引き渡したものとみなす。
条文の要点
媒介契約とは、業者が宅地・建物の売買または交換の媒介を引き受ける契約で、締結時に書面の記名押印・交付が義務づけられます(34条の2第1項)。
書面の交付は売買・交換の媒介に限られ、貸借の媒介にはなく、依頼者が業者でも省略できません。専任媒介には3か月の期間上限・指定流通機構への登録・定期報告が加わり、これらに反する特約は依頼者の申出でも無効です。
媒介契約の書面と宅建士の記名
34条の2書面は業者が記名押印して交付すればよく、宅建士の記名は要りません。記名が義務なのは35条の重要事項説明書と37条の契約書面で、書面の種類ごとに記名の要否が違います。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項 | 手続 | 売買・交換の媒介契約の締結後に、遅滞なく書面を記名押印して依頼者へ交付する。貸借の媒介は対象外 |
| 2項 | 要件 | 売買すべき価額・評価額について意見を述べるなら、その根拠を明らかにする |
| 3項・4項 | 期間 | 専任媒介の有効期間は3か月が上限で、超える定めは3か月になる。更新は依頼者の申出が要り、更新時から3か月超は不可 |
| 5項・6項 | 手続 | 専任媒介なら省令の期間内に指定流通機構へ物件を登録し、登録を証する書面を遅滞なく依頼者へ引き渡す |
| 9項 | 手続 | 専任媒介は2週間に1回以上、専属専任媒介は1週間に1回以上、依頼者へ業務の処理状況を報告する |
| 10項 | 効果 | 期間・登録・引渡し・報告の規定に反する特約は無効で、依頼者の申出でも登録を免れない |
具体例
売主Aが業者Bと建物売却の専任媒介契約を結び、Aは売り出しを秘密にしたいので指定流通機構への登録をしないよう求めた。
登録義務は依頼者の申出でも免れず、免除の特約は無効になる。Bは登録しないと34条の2に違反する。
反例(結論が変わる)
同じ依頼関係で、AがBに依頼したのが建物の売却ではなく貸借の媒介だった場合に変えます。
34条の2は売買・交換の媒介だけに適用され、貸借の媒介では書面の交付義務自体が発生しない。
関連条との違い
- 宅建業法 第35条:35条の重要事項説明書には宅建士の記名が要るが、34条の2の媒介契約書面には取引士の記名は不要。書面ごとに記名の要否が違う
- 宅建業法 第34条の3:34条の3は売買・交換の代理を依頼する契約にも34条の2全体を準用します。書面だけでなく期間・登録・報告等の規制も、対応する代理契約に及びます。
- 宅建業法 第33条の2:33条の2の自ら売主となる転売は制限されるが、34条の2の媒介は他人の物件を扱う本来の営業形態で制限されない
過去問で誤りとされた肢の型
- 宅建令和7年 問39肢2
期間満了による自動更新の特約を有効とする誤り。更新は依頼者の申出による場合だけ認められる
- 宅建平成27年 問28ウ
貸借の媒介にも34条の2書面の交付義務があるとする誤り。対象は売買・交換の媒介だけ
- 宅建平成29年 問43ウ
登録を証する書面を提示すれば足りるとする誤り。依頼者への引渡しが求められる
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
法令版: 2026年4月1日施行版
この条文の〇×問題(6問)
売買媒介契約書面の交付時期
宅地建物取引業者Aは、売主Bから土地売却の媒介を受任した。媒介契約の締結時に必要事項を記載した書面を渡さず、買主との売買契約が成立した後に初めてBへ交付しても、媒介契約書面の交付時期に関する宅建業法の義務を満たす。
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正解 ×
誤り。宅建業法第34条の2第1項は、売買又は交換の媒介契約を締結したとき、必要事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者に遅滞なく交付するよう求める。売買の成約時まで交付を先延ばしできる規定ではない。AはBとの媒介契約を締結した後、遅滞なく書面を渡す必要があり、後に売買契約が成立したという事情では交付遅延を正当化できない。
学習ポイント:売買・交換の媒介契約書面は、媒介契約締結後に依頼者へ遅滞なく交付する。
第34条の2第1項
売却希望価額について意見を述べる場合の根拠
宅地建物取引業者Cは、売主Dとの売買媒介契約でDの希望価格が高すぎると考え、より低い売出価格を提案した。この価格評価についてCが意見を述べる際には、その根拠を明らかにしなければならない。
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正解 ○
正しい。宅建業法第34条の2第2項は、業者が媒介契約書面に記載する売買すべき価額又は評価額について意見を述べるとき、その根拠を明らかにすることを求める。希望価格と異なる査定額を提案すること自体が禁止されるわけではないが、価格の判断を依頼者が検討できるよう理由を示す必要がある。単に業者の経験上の見立てだと告げるだけで根拠の明示を省けない。
学習ポイント:媒介業者が売買価額・評価額に意見を述べるときは、査定の根拠を示す。
第34条の2第2項
専任媒介契約の有効期間上限
宅地建物取引業者Eと売主Fは、専任媒介契約の有効期間を6か月と書面で合意した。依頼者Fが長期契約を希望していたので、この契約の有効期間は6か月となる。
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正解 ×
誤り。宅建業法第34条の2第3項は、専任媒介契約の有効期間を3か月以内とする。3か月を超える期間を定めたときは、その期間は3か月となる。依頼者が希望し、双方が書面で合意したという事実によって、この法定上限は伸びない。更新は依頼者の申出により可能だが、更新時もその時点から3か月を超える期間を定めることはできない。
学習ポイント:専任媒介契約は3か月が上限。6か月の合意をしても期間は3か月となる。
第34条の2第3項・第4項
専属専任媒介契約における自己発見取引
売主Gは宅地建物取引業者Hとの専任媒介契約に、Hが探した相手以外とはGが直接売買契約を締結できない旨の特約を入れた。このような特約を含む専任媒介契約では、Gが自分で買主を見つけても、特約に従いHを通して契約する必要がある。
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正解 ○
正しい。宅建業法第34条の2第9項は、専任媒介契約のうち、依頼者が媒介業者の探索した相手方以外とは契約できない旨の特約を含むものを区別している。いわゆる専属専任媒介契約では、依頼者が自分で相手方を見つけた場合でも、直接契約できないという特約の内容に従う。通常の専任媒介契約と同じ自己発見取引の自由があると考えるのは誤りである。
学習ポイント:専属専任媒介では、自己発見の相手方とも媒介業者を通す特約がある。
第34条の2第9項
指定流通機構登録証明書の依頼者への引渡し
宅地建物取引業者Jは、専任媒介契約の対象物件を指定流通機構に登録した。登録が完了していれば、登録を証する書面を依頼者Kに渡す必要はない。
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正解 ×
誤り。第34条の2第5項は専任媒介契約の物件を指定流通機構に登録する義務を定め、同条第6項は登録をした業者に、登録を証する書面を遅滞なく依頼者へ引き渡すことを別途求める。依頼者の承諾を得れば、書面に代えて法定の電磁的方法で提供することもできる(同条第12項)。登録しただけで引渡義務がなくなるわけではない。
学習ポイント:登録後は登録を証する書面を遅滞なく依頼者に引き渡す(承諾を得て電磁的提供も可)。
第34条の2第5項・第6項・第12項
専任媒介と専属専任媒介の業務処理報告頻度
宅地建物取引業者Lは、売主Mと自己発見取引を認めない特約付きの専任媒介契約を締結した。この契約に係る業務処理状況は、通常の専任媒介契約より頻繁に、少なくとも1週間に1回以上Mへ報告しなければならない。
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正解 ○
正しい。宅建業法第34条の2第9項は、通常の専任媒介契約について業務処理状況を2週間に1回以上報告する義務を定める。依頼者が媒介業者の探索した相手方以外とは契約できない特約を含む専属専任媒介契約では、より頻繁な1週間に1回以上の報告が必要である。LとMの契約は後者に当たり、2週間に1回では足りない。
学習ポイント:報告は通常の専任媒介で2週間に1回以上、専属専任媒介で1週間に1回以上。
第34条の2第9項
根拠・関連条文
この条文を解説で参照する過去問
宅建令和7年 問28エ
宅地建物取引業者は、宅地の売買の専属専任媒介契約を締結した場合、当該媒介契約締結の日から5日以内(休業日を除く。)に、当該宅地について指定流通機構に所定の事項を登録しなければならない。
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正しい
正しい。専属専任媒介は休業日を除く5日以内に登録義務。
宅建令和7年 問39肢1
AがBとの間で専属専任媒介契約を締結し、Bから「売り出し中であることを秘密にしておきたいので指定流通機構への登録はしないでほしい」旨の申出があった場合、Aは、そのことを理由に登録をしなかったとしても法に違反しない。
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誤り
誤り。依頼者の申出があっても専属専任媒介の登録義務は免れない。
宅建令和7年 問39肢2
Aは、Bとの間で有効期間を1か月とする専属専任媒介契約を締結する際、「Bが媒介契約を更新する旨を申し出ない場合は、有効期間満了により自動更新するものとする」旨の特約は有効である。
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誤り
誤り。専属専任媒介は申出による更新は可能だが、自動更新の特約は3か月の上限を潜脱し無効。
宅建令和7年 問39肢3
AがBと一般媒介契約を締結したときは、法第34条の2第1項の規定に基づき交付すべき書面に、宅地建物取引士をして記名させなければならない。
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誤り
誤り。34条の2書面に取引士の記名は不要(記名が必要なのは35条・37条書面)。
宅建令和7年 問39肢4
AがBとの間で専属専任媒介契約を締結した場合、Aは、当該中古住宅の取引の申込みの受付に関する状況を指定流通機構に登録しなければならない。
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正しい
正しい。専属専任媒介は取引申込みの受付状況を指定流通機構に登録する。
宅建令和6年 問32肢1
Aは当該中古住宅の売買契約が成立しても、当該中古住宅の引渡しが完了していなければ、売買契約が成立した旨を指定流通機構に通知する必要はない。
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誤り
誤り。売買契約が成立した旨は引渡し前でも遅滞なく指定流通機構に通知する必要がある。
宅建令和6年 問32肢2
Bが宅地建物取引業者である場合は、当該契約が国土交通大臣が定める標準媒介契約約款に基づくものであるか否かの別を、法第34条の2第1項に規定する書面に記載する必要はない。
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誤り
誤り。標準媒介契約約款に基づくか否かはBが業者でも34条の2書面の記載事項。
宅建令和6年 問32肢3
Aに対して当該中古住宅について買受けの申込みがなかった場合でも、AはBに対して、当該契約に係る業務の処理状況を2週間に1回以上報告しなければならないが、その報告は必ずしも書面で行う必要はない。
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正しい
正しい。専任媒介の報告は2週間に1回以上で、口頭報告も認められる(書面義務なし)。
宅建令和6年 問32肢4
Bが当該中古住宅について、法第34条の2第1項第4号に規定する建物状況調査を実施する者のあっせんを希望しなかった場合は、Aは同項に規定する書面に同調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載する必要はない。
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誤り
誤り。あっせんの希望の有無の確認自体が書面の記載事項で、希望なしでも記載が必要。
宅建令和5年 問27肢1
建物状況調査とは、建物の構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として国土交通省令で定めるものの状況の調査であって、経年変化その他の建物に生じる事象に関する知識及び能力を有する者として国土交通省令で定める者が実施するものをいう。
正誤と理由を見る
正しい
正しい。建物状況調査の定義の記述は正しい。
ほか63肢は、各過去問のページで確認できます。
解説で第34条の2を参照している問
問題で確認する
第34条の2の内容は6問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。