第二章 保全命令に関する手続/第二節 保全命令/第三款 仮処分命令
民事保全法 第23条(仮処分命令の必要性等)
この条の要点
- 係争物仮処分の被保全権利:条件付・期限付でも発令可の規定は仮処分命令にも準用される。準用の捕捉が要点。
- 仮の地位仮処分の審理要件:仮の地位仮処分は口弁または債務者立会審尋が原則必要。目的不達の事情が例外。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第23条(仮処分命令の必要性等)
係争物に関する仮処分命令は、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
②仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。
③第二十条第二項の規定は、仮処分命令について準用する。
④第二項の仮処分命令は、口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができない。ただし、その期日を経ることにより仮処分命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。
条文の要点
仮の地位を定める仮処分とは、争いのある権利関係について債権者に生ずる著しい損害や急迫の危険を避けるため仮の地位を定める命令です(23条2項)。
争いのある権利関係について著しい損害又は急迫の危険を避ける必要があるときの仮処分です。口頭弁論又は債務者が立ち会える審尋の期日を経るのが原則ですが、期日を経ることで申立ての目的が達せられない事情があれば例外として期日を経ずに発せられます。
仮の地位を定める仮処分の要件と手続
係争物に関する仮処分は物の現状変更のおそれが要件ですが、仮の地位を定める仮処分は権利関係の争いで生じる損害・危険が要件です。条件付・期限付の権利でも3項で20条2項を準用し発令できます。4項の口頭弁論・審尋の期日要件は仮の地位を定める仮処分にだけあり、係争物に関する仮処分には要りません。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項 | 要件 | 係争物に関する仮処分は、現状変更で権利行使が不能や著しく困難になるおそれがあるとき発せられる |
| 2項 | 要件 | 仮の地位を定める仮処分は、争いのある権利関係で債権者に著しい損害や急迫の危険を避けるため必要なとき発せられる |
| 3項 | 効果 | 20条2項を準用し、条件付や期限付の権利でも仮処分命令を発することができる |
| 4項 | 手続 | 仮の地位を定める仮処分は口頭弁論か債務者が立ち会える審尋の期日が原則必要だが、目的不達のおそれがあれば例外とされる |
具体例
従業員Aが会社Bから解雇され、給与仮払いの仮の地位を定める仮処分を申し立てた。Aは解雇の無効による賃金請求権と保全の必要性を疎明し、口頭弁論の期日を経た。期日を経ると目的を達せられない事情はない。
争いのある賃金請求権についても2項の仮処分の対象になり、4項の期日要件も満たすため発令され得る。
反例(結論が変わる)
同じ設定で、口頭弁論もBが立ち会える審尋の期日も経ていない場合に変える。
目的不達の例外事情がないため、4項により期日を経ずには発せられない。
関連条との違い
- 民事保全法 第20条:20条の仮差押えは金銭債権の将来の強制執行を保全する。23条2項は争いのある権利関係の損害・危険を避ける仮処分で、賃金仮払いのように金銭支払を内容とするものもある
- 民事保全法 第24条:24条は仮処分の方法を定める。発令の要件と手続は23条が定める
過去問で誤りとされた肢の型
- 司法書士平成29年度 問41ウ
抵当権の実行を禁止する仮処分を係争物に関する仮処分とする誤り。債務者の行為に対応する仮の地位を定める仮処分に当たる
- 司法書士令和4年度 問41イ
占有移転禁止の仮処分にも口頭弁論や審尋の期日を要するとする誤り。4項の期日要件は仮の地位を定める仮処分のみ
- 司法書士平成31年度 問41イ
仮の地位を定める仮処分を金銭支払目的の債権に限る誤り。2項は争いのある権利関係全般が対象
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
法令版: 2026年5月21日施行版
この条文の〇×問題(2問)
係争物仮処分の被保全権利
係争物に関する仮処分命令を求める権利が条件付又は期限付の権利であっても、仮処分命令を発することができる。
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正解 ○
正しい。仮差押命令について条件付・期限付債権にも発令できる旨の規定が仮処分命令にも準用されるため、係争物に関する仮処分の被保全権利が条件付・期限付でも発令可能である。準用規定の存在を把握していないと判断しにくい横断的な論点である。
学習ポイント:条件付・期限付でも発令可の規定は仮処分命令にも準用される。準用の捕捉が要点。
第23条3項、関連:第20条2項
仮の地位仮処分の審理要件
仮の地位を定める仮処分命令は、債務者を審尋することなく、いかなる場合にも発することができる。
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正解 ×
誤り。仮の地位を定める仮処分命令は口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ発することができない。ただし期日を経ることにより申立ての目的を達することができない事情があるときは例外とされる。債務者に重大な影響を与えるため対審が原則化されている点が要の規定である。
学習ポイント:仮の地位仮処分は口弁または債務者立会審尋が原則必要。目的不達の事情が例外。
第23条4項
根拠・関連条文
この条文を解説で参照する過去問
司法書士令和8年度 問41ア
仮差押命令は、債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、発することができない。
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誤り
誤り。仮差押命令は保全の緊急性から債務者の立会う審尋を経なくても書面審理のみで発することができる(民保3条。23条4項の期日要件は仮の地位を定める仮処分の規定)。
司法書士令和7年度 問41ウ
仮処分命令は、保全すべき債権が条件付又は期限付である場合においても、発することができる。
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正しい
正しい。仮処分命令は、保全すべき債権が条件付又は期限付である場合でも発することができる(23条3項・20条2項)。
司法書士令和6年度 問41ア
裁判所は、口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経ることにより仮処分命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは、その期日を経ずに、仮の地位を定める仮処分命令を発することができる。
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正しい
正しい。仮の地位を定める仮処分命令は原則として口頭弁論又は債務者が立ち会う審尋の期日を経るが、期日を経ることにより申立ての目的を達することができない事情があるときは期日を経ずに発することができる(民保23条4項)。
司法書士令和4年度 問41イ
占有移転禁止の仮処分命令は、口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができない。
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誤り
誤り。口頭弁論又は債務者の立会える審尋を要するのは仮の地位を定める仮処分(23条4項)であり、占有移転禁止の仮処分には不要である(3条)。
司法書士平成31年度 問41ア
仮の地位を定める仮処分命令は、保全すべき権利が条件付又は期限付である場合には、発することができない。
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誤り
誤り。仮の地位を定める仮処分命令は、保全すべき権利が条件付又は期限付である場合にも発することができる(民保23条3項)。
司法書士平成31年度 問41イ
仮の地位を定める仮処分命令は、金銭の支払を目的とする債権を保全すべき権利とする場合でなければ、発することができない。
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誤り
誤り。仮の地位を定める仮処分命令は、争のある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるため発するものであり(民保23条2項)、金銭支払目的の債権を対象とするものに限られない。
司法書士平成31年度 問41ウ
仮の地位を定める仮処分命令は、口頭弁論の期日を経ない場合には、発することができない。
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誤り
誤り。仮の地位を定める仮処分は口頭弁論又は債務者の立会い可能な審尋の期日を経るのが原則だが、その期日を経ることにより申立ての目的を達することができない事情があるときは期日を経ずに発することができる(民保23条4項ただし書)。
司法書士平成29年度 問41ウ
抵当権の実行を禁止する仮処分命令は、係争物に関する仮処分命令であり、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
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誤り
誤り。抵当権の実行を禁止する仮処分は、係争物に関する仮処分ではなく、仮の地位を定める仮処分命令である(民保23条2項)。
司法書士平成26年度 問41ア
仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。
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正しい
正しい。仮の地位を定める仮処分命令は、争いのある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるため必要があるときに発することができる(民事保全法23条2項)。
司法書士平成26年度 問41ウ
仮の地位を定める仮処分命令は、口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経ることにより仮処分命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは、その期日を経ることなく、発することができる。
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正しい
正しい。原則として口頭弁論又は債務者が立ち会える審尋の期日を経ることを要するが、その期日を経ることにより申立ての目的を達することができない事情があるときは期日を経ることなく発することができる(民事保全法23条4項但書)。
問題で確認する
第23条の内容は2問の〇×問題と2問の条文穴埋めで確認できます。