第二章 保全命令に関する手続/第二節 保全命令/第一款 通則
民事保全法 第13条(申立て及び疎明)
この条の要点
- 疎明で足りること:被保全権利と保全の必要性は疎明すれば足りる。証明と疎明の区別を明確に。
- 疎明の必須性:疎明は証明より緩いが必須要件。疎明なしに保全命令は発せられない。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第13条(申立て及び疎明)
保全命令の申立ては、その趣旨並びに保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性を明らかにして、これをしなければならない。
②保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性は、疎明しなければならない。
条文の要点
疎明とは、保全命令の申立てで保全すべき権利や権利関係と保全の必要性について求められる、証明より緩やかな立証です(13条2項)。
疎明がなければ保全命令は発せられず、担保を立てても疎明に代えることはできません。疎明の対象は被保全権利と保全の必要性に限られ、管轄や当事者能力は含まれません。
疎明の程度と方法
証明は裁判官が事実の存在を確かめる心証で、疎明は一応の確からしさが認められれば足りる緩やかな立証です。疎明は即時に取り調べられる証拠によるとされ、疎明資料は制限されます。迅速さを要する保全手続に合わせた立証の形です。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項 | 要件 | 申立ては趣旨・被保全権利や権利関係・保全の必要性を明らかにしてする |
| 2項 | 要件 | 被保全権利と保全の必要性は疎明しなければならない |
具体例
債権者AがB所有の動産の仮差押えを申し立て、担保を用意した。契約書や帳簿により代金債権の存在を、Bの財産処分を示す資料により将来の執行が困難になるおそれを、それぞれ一応の確からしさで示した。
本案の証明までは要らず、被保全権利と保全の必要性の双方について13条2項の疎明要件を満たす。
反例(結論が変わる)
同じ設定で、Aが被保全権利と保全の必要性を裏付ける資料を何も出さず、疎明がない場合に変える。
用意した担保で疎明に代えることはできず、保全命令は発せられない。
関連条との違い
- 民事訴訟法 第188条:民訴188条は疎明を即時に取り調べられる証拠による立証と定義する。13条は保全手続で疎明を求める対象を定める
- 民事保全法 第14条:14条の担保は保全による債務者の損害に備える仕組み。13条2項の被保全権利と保全の必要性の疎明を代替しない
過去問で誤りとされた肢の型
- 司法書士令和7年度 問41ア
証明を要するとする誤り。要求されるのは証明ではなく疎明
- 司法書士令和4年度 問41ア
管轄や当事者能力も疎明対象とする誤り。疎明は被保全権利と保全の必要性に限られる
- 司法書士平成30年度 問41ウ
疎明がなくても担保を立てさせて発令できるとする誤り。疎明は担保で代用できない
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
法令版: 2026年5月21日施行版
この条文の〇×問題(2問)
疎明で足りること
保全命令の申立てにおいて、保全すべき権利及び保全の必要性は疎明すれば足り、証明するまでの必要はない。
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正解 ○
正しい。申立てには趣旨・保全すべき権利又は権利関係・保全の必要性を明らかにすることを要し、これらは証明ではなく疎明の対象とされる。疎明は一応の確からしさの認識で足りる緩和された立証であり、本案訴訟のような証明は要求されない点が保全手続の迅速性に対応した特質である。
学習ポイント:被保全権利と保全の必要性は疎明すれば足りる。証明と疎明の区別を明確に。
第13条1項・2項
疎明の必須性
保全すべき権利及び保全の必要性について疎明がなくても、申立ての趣旨さえ明らかであれば、裁判所は保全命令を発することができる。
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正解 ×
誤り。保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性は疎明しなければならないと定められ、申立人側の要件である。疎明がなければ保全命令は発せられず、趣旨の明示だけで補うことはできない。疎明は証明より緩やかだが不要ではないという点を混同しないこと。
学習ポイント:疎明は証明より緩いが必須要件。疎明なしに保全命令は発せられない。
第13条1項・2項
この条文を解説で参照する過去問
司法書士令和7年度 問41ア
保全命令の申立ては、保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性を証明して、これをしなければならない。
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誤り
誤り。保全命令の申立ては、保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性を「疎明」しなければならない(民保13条2項)のであり、「証明」ではない。
司法書士令和4年度 問41ア
保全命令の申立てにおいては、保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性のほか、管轄や当事者能力についても疎明することで足りる。
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誤り
誤り。疎明すべき対象は保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性に限られ(13条2項)、管轄や当事者能力は疎明の対象ではない。
司法書士令和3年度 問41ウ
民事保全の手続に関しては、民事訴訟法の文書提出命令に関する規定は準用されない。
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正しい
正しい。民事保全手続では被保全権利・保全の必要性を疎明により証明し(民保13条2項)、疎明は即時に取り調べることができる証拠によるものとされ(民訴188条)、文書提出命令の規定は準用されない。
司法書士平成30年度 問41ウ
保全命令は、保全すべき権利若しくは権利関係又は保全の必要性の疎明がない場合であっても、これらに代わる担保を立てさせて発することができる。
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誤り
誤り。保全すべき権利・権利関係及び保全の必要性は疎明しなければならず(民保13条2項)、疎明に代わる担保による保全命令は許されない。
司法書士平成29年度 問41エ
保全命令の申立ては、その趣旨並びに保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性を明らかにして、これをしなければならないところ、保全すべき権利又は権利関係については証明を要するが、保全の必要性については疎明で足りる。
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誤り
誤り。保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性は、いずれも疎明で足りる(民保13条2項)。
司法書士平成26年度 問41イ
仮の地位を定める仮処分命令の申立てにおいては、保全すべき権利関係及び保全の必要性を疎明しなければならない。
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正しい
正しい。保全命令の申立てでは、保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性を疎明しなければならない(民事保全法13条1項・2項)。
問題で確認する
第13条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。