第三編 債権/第二章 契約/第十節 委任
民法 第644条(受任者の注意義務)
重要度は過去問の出題年度などをもとにした当サイトの評価です。
この条の要点
- 無報酬委任における受任者の注意義務の程度:無償の委任でも善管注意が原則。自己の財産と同一の注意で足りるのは無報酬の受寄者だけ。
- 善管注意義務の客観的な程度:善管注意は個人の能力ではなく取引上の社会通念を基準とする客観的な注意である。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第644条(受任者の注意義務)
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
条文の要点
善良な管理者の注意義務とは、受任者が委任の本旨に従い、取引上の社会通念で要求される注意をもって委任事務を処理する義務です(644条)。
報酬の合意の有無にかかわらず、無償の委任でも負います。自己の財産に対するのと同程度の注意では足りず、本人なりに全力を尽くしても社会通念上の注意を欠けば義務違反です。違反すれば債務不履行責任を負います。
善良な管理者の注意義務の基準
注意の程度は、受任者個人の能力を基準とする主観的なものではなく、取引上の社会通念に照らした客観的なものです。委任の有償・無償で程度は変わらず、無償でも軽くなる特則はありません。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項 | 要件 | 委任契約に基づいて事務処理を引き受けた受任者であること |
| 1項 | 効果 | 委任の本旨に従い、善管注意をもって委任事務を処理する義務を負う |
具体例
AがBに土地売却の手続を無償で委任しました。Bは通常ならする調査を怠って手続を進め、Aに損害を与えました。
無償でもBは善管注意義務を負うので、違反として債務不履行責任を負います。
反例(結論が変わる)
同じ設定で、Bが委任ではなく友人の車を無償で預かっただけの場合に変えます。
無報酬の受寄者は自己の財産と同一の注意で足りるので、善管注意より軽い義務になります。
関連条との違い
過去問で誤りとされた肢の型
- 司法書士令和8年度 問19ア
善管注意義務は報酬を請求できる合意がある場合に限るとした誤り。無償の委任にも及ぶ
- 行政書士平成24年 問32肢4
無償の委任なら自己の事務と同一の注意で足りるとした誤り。無償でも善管注意が要る
- 管業平成29年度 問6肢4
無償の受任者は善管注意に違反しても債務不履行責任を負わないとした誤り。無償でも違反すれば責任を負う
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
法令版: 2026年6月24日施行版
この条文の〇×問題(2問)
無報酬委任における受任者の注意義務の程度
報酬の定めなく委任を受けた受任者は、無報酬で物を保管する受寄者と同様に、自己の財産に対するのと同一の注意をもって委任事務を処理すれば足りる。
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正解 ×
誤り。委任の受任者は、報酬の有無にかかわらず、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負う。自己の財産と同一の注意で足りるのは無報酬の受寄者についての特則であり、無償の委任にまで及ぶものではない。
学習ポイント:無償の委任でも善管注意が原則。自己の財産と同一の注意で足りるのは無報酬の受寄者だけ。
第644条、関連:第659条
善管注意義務の客観的な程度
受任者が自らの能力において精一杯の注意を尽くして委任事務を処理した場合でも、取引上の社会通念に照らして通常要求される注意を欠いていたときは、委任事務を処理する義務を怠ったことになる。
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正解 ○
正しい。善良な管理者の注意は、当該受任者個人の能力を基準とする主観的な注意ではなく、取引上の社会通念に照らして要求される客観的な程度の注意である。自分なりに全力を尽くしたとしても、客観的に要求される注意を欠けば義務違反となる。
学習ポイント:善管注意は個人の能力ではなく取引上の社会通念を基準とする客観的な注意である。
第644条、関連:第400条
根拠・関連条文
この条文を解説で参照する過去問
行政書士平成24年 問32肢4
委任が無償で行われた場合、受任者は委任事務を処理するにあたり、自己の事務に対するのと同一の注意をもってこれを処理すればよい。
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妥当ではない
無償の委任でも受任者は善良な管理者の注意義務を負い(644条)、『自己の事務と同一の注意』ではない。妥当ではない。
司法書士令和8年度 問19ア
受任者は、報酬を請求することができる旨の合意がある場合に限り、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
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誤り
誤り。受任者の善管注意義務は報酬の合意の有無にかかわらず生じる(644条は無償委任でも適用)。
賃管令和5年度 問5肢2
Aは金銭管理を行う際、自らの財産を管理するのと同程度の注意をもって行う必要がある。
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誤り
誤り。受任者は善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負い、自己の財産と同程度の注意では足りない。
マン管令和6年度 問16肢1
Bは、Aからの委任を有償で受任した場合には、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負うが、無償で受任した場合には、その義務を負わない。
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誤り
誤り。委任は有償・無償を問わず、受任者は委任の本旨に従い善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負う。
マン管令和6年度 問16肢2
Bは、やむを得ない事由があるときは、第三者Cを復受任者として選任することができる。
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正しい
正しい。受任者は委任の本旨により又はやむを得ない事由があるときは、第三者を復受任者として選任することができる。
マン管平成30年度 問16肢1
Bが報酬の特約をして管理を受託したときは、Bは301号室を自己のためにすると同一の注意をもって管理すれば足りる。
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誤り
誤り。報酬の特約ある受任者は、委任の本旨に従い善良な管理者の注意をもって委任事務を処理しなければならない。
管業令和7年度 問1肢3
Aは、友人B所有の自動車甲を無償で移転登録手続することを約し、Bから甲の引渡しを受けた。この場合におけるAの甲についての注意義務。
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誤り
誤り。無償の委任であっても、受任者は善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負う。
管業平成29年度 問6肢4
Bが無償で受任した場合は、Bが委任事務の処理に際して善管注意義務に違反したときであっても、Bは、Aに対し債務不履行責任を負わない。
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誤り
誤り。無償の受任者も善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負い、違反すれば債務不履行責任を負う。
問題で確認する
第644条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。