第三編 債権/第二章 契約/第十節 委任
民法 第650条(受任者による費用等の償還請求等)
重要度は過去問の出題年度などをもとにした当サイトの評価です。
この条の要点
- 損害賠償請求における受任者の無過失要件:事務処理上の損害の賠償請求には受任者の無過失が要件。自らの過失による損害は請求できない。
- 償還請求の対象となる費用の範囲:委任の償還対象は必要費用に限られる。有益費用の償還を認める事務管理と区別する。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第650条(受任者による費用等の償還請求等)
受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
②受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。
③受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。
条文の要点
受任者の費用償還請求とは、委任事務の処理に必要と認められる費用を支出した受任者が、その費用と支出後の利息の支払を委任者に求めることです(650条1項)。
必要な費用とその支出後の利息を請求でき、必要な債務を負担したときは委任者に自分に代わって弁済するよう求められます。事務処理のため無過失で受けた損害の賠償も請求できます。
受任者の費用償還請求の対象
償還されるのは委任事務の処理に必要と認められる費用で、支出にはその日以後の利息が付きます。本人のために有益な費用に限る事務管理とは基準が違い、委任者が現に利益を受けた範囲に償還も限られません。負担した債務が弁済期にないときは、委任者に担保の提供を求められます。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項 | 要件 | 委任事務の処理に必要と認められる費用を受任者が支出したこと |
| 1項 | 効果 | 支出した費用と支出日以後の利息の償還を請求できる |
| 2項 | 効果 | 必要な債務を負担したときは、委任者に受任者の代わりに弁済するよう請求できる。弁済期前は担保を求められる |
| 3項 | 効果 | 事務処理のため無過失で受けた損害の賠償を請求できる |
具体例
AがBに不動産の管理を委任しました。Bは事務を処理する途中に、自分に過失のない事故で持ち物が壊れる損害を受けました。
委任事務を処理するため無過失で受けた損害なので、BはAにその賠償を請求できます。
反例(結論が変わる)
同じ設定で、事故の原因がB自身の不注意だった場合に変えます。
650条3項の請求にはBの無過失が必要なので、Bはこの規定による賠償をAに請求できません。
関連条との違い
過去問で誤りとされた肢の型
- 司法書士令和5年度 問19イ
費用の償還は認めるが支出後の利息の請求は認めないとする誤り。支出の日以後の利息も請求できる
- 管業平成30年度 問1肢2
償還義務を委任者が現に利益を受けた限度に限る誤り。現利益の制限は本人の意思に反した事務管理の規定
- 管業平成29年度 問6肢3
委任者の指図に過失がなければ受任者の損害賠償請求は認めないとする誤り。3項が問うのは受任者の過失の有無
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
判例
受任者の代弁済請求権と相殺の可否最高裁判所第二小法廷 1972年12月22日
650条2項前段の代弁済請求権は受任者を第三者への債務から免れさせる目的を持ち、通常の金銭債権と同種の目的ではないため、委任者が受任者への金銭債権を自働債権とする相殺はできない
法令版: 2026年6月24日施行版
この条文の〇×問題(2問)
損害賠償請求における受任者の無過失要件
受任者が委任事務を処理するために損害を受けた場合、その損害の発生について受任者自身に過失があったときでも、委任者に対してその損害の賠償を請求することができる。
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正解 ×
誤り。受任者が委任者に損害の賠償を請求できるのは、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときに限られる。損害の発生に受任者自身の過失がある場合にはこの請求は認められず、過失の有無を問わず賠償を受けられると考えるのは誤りである。
学習ポイント:事務処理上の損害の賠償請求には受任者の無過失が要件。自らの過失による損害は請求できない。
第650条3項
償還請求の対象となる費用の範囲
義務なく他人の事務を管理した者が本人のために有益な費用の償還を請求できるのと同様に、委任の受任者も、事務の処理に必要でなくても委任者にとって有益な費用を支出したときは、その償還を請求できる。
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正解 ×
誤り。委任の受任者が償還を請求できるのは、委任事務を処理するのに必要と認められる費用に限られ、単に委任者にとって有益な費用は含まれない。本人のために有益な費用の償還を認めるのは事務管理の規定であり、両者では償還の対象となる費用の範囲が異なる。
学習ポイント:委任の償還対象は必要費用に限られる。有益費用の償還を認める事務管理と区別する。
第650条1項、関連:第702条1項
根拠・関連条文
この条文を解説で参照する過去問
行政書士平成22年 問32イ
Aは、①の場合には、事務を処理するために善良なる管理者の注意をもって必要と判断した費用についてBに対し償還請求をすることができるのに対し、②の場合には、Bのために有益であった費用についてのみBに対し償還請求をすることができる。
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正しい
委任の費用償還は善良な管理者の注意で必要とした費用(650条)、事務管理は本人のために有益な費用に限られる(702条1項)。正しい。
司法書士令和5年度 問19イ
受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用の償還を請求することができるが、支出の日以後におけるその利息の償還を請求することはできない。
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誤り
誤り。受任者は費用の償還に加えて、支出の日以後におけるその利息の償還をも請求できる(650条1項)。
司法書士令和5年度 問19ウ
受任者が第三者との間で委任事務を処理するのに必要と認められる金銭債務を負った場合において、受任者が委任者に対して自己に代わってその弁済をすることを請求したときは、委任者は、受任者に対して他の売買契約に基づき代金支払債権を有していても、受任者による当該請求に係る権利を受働債権とし、受任者に対する当該代金支払債権を自働債権として、相殺することができない。
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正しい
正しい。650条2項前段に基づき委任者に代弁済を請求しうる権利を受働債権とし、委任者の受任者に対する金銭債権を自働債権とする相殺はできない(最判昭47.12.22)。
司法書士令和4年度 問19イ
管理者は、本人のために有益な債務を負担したときは、本人に対して、自己に代わってその債務を弁済することを請求することができる。
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正しい
正しい。管理者が本人のために有益な債務を負担したときは、650条2項の準用により(702条2項)、自己に代わって弁済することを請求できる。
賃管令和7年度 問12肢4
受任者が委任事務を処理するために必要な費用を支出したときは、委任者に対し、その費用に支出の日以後の利息を付して請求することができる。
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正しい
正しい。受任者は支出した費用について支出の日以後の利息を付して請求できる。
マン管令和2年度 問4肢4
Aがその職務を行うため自己の過失なくして損害を受けたときは、Aは、委任の規定に従い、管理組合に対してその賠償を請求することができる。
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正しい
正しい。受任者が委任事務を行うため自己の過失なく損害を受けたときは、委任者にその賠償を請求することができる。
マン管平成29年度 問4肢4
管理者がその職務を行うため自己の過失なくして損害を受けたときは、管理者は、委任の規定に従い、その賠償を請求することができる。
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正しい
正しい。委任の規定の準用により、職務上の行為について自己の過失なくして受けた損害の賠償を請求できる。
管業平成30年度 問1肢2
受任者が、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者は、現に利益を受けている限度において受任者に対して費用の償還義務を負う。
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誤り
誤り。受任者が必要な費用を支出したときは、委任者は受任者の請求によりその費用と支出日以後の利息を償還する必要があり、現利益の限度ではない。
管業平成29年度 問6肢3
Bが、委任事務の処理に際して、自己の過失によらず損害を受けた場合であっても、Aの指図について過失がなければ、Bは、Aに対し損害賠償の請求をすることができない。
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誤り
誤り。受任者は委任事務の処理に際し自己の過失によらず損害を受けたときは、委任者にその賠償を請求できる。
問題で確認する
第650条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。