第三編 債権/第三章 事務管理
民法 第702条(管理者による費用の償還請求等)
重要度は過去問の出題年度などをもとにした当サイトの評価です。
この条の要点
- 有益な費用の判断時点と管理の成否:費用の有益性は支出時の客観的見込みで判断し、管理が成功したかどうかは問わない。
- 本人の意思に反する管理における償還の限定:本人の意思に反した管理の償還は、費用が有益でも本人の現存利益の限度にとどまる。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第702条(管理者による費用の償還請求等)
管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる。
②第六百五十条第二項の規定は、管理者が本人のために有益な債務を負担した場合について準用する。
③管理者が本人の意思に反して事務管理をしたときは、本人が現に利益を受けている限度においてのみ、前二項の規定を適用する。
条文の要点
管理者の費用償還請求とは、義務なく他人の事務を管理した者が、本人のために有益な費用を支出したとき、その返還を本人に求めることです(702条1項)。
有益な債務を負担した場合は、本人に管理者の代わりに弁済するよう請求できます。本人の意思に反した管理では、費用の償還や弁済の請求は現存利益の限度にとどまります。
管理者の費用償還請求の範囲
費用が有益かどうかは支出の時点で客観的に判断し、管理が成功して利益が残ったことまでは要りません。委任と違い、費用の前払請求や管理行為で受けた損害の賠償請求は認められていません。本人の意思に反した場合は、支出時に有益でも請求は本人の現存利益の限度になります。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項 | 要件 | 本人のために有益な費用を管理者が支出したこと |
| 1項 | 効果 | 支出した費用の償還を本人に請求できる |
| 2項 | 効果 | 有益な債務を負担した場合は、650条2項の準用により、本人に管理者の代わりに弁済するよう請求できる |
| 3項 | 例外 | 本人の意思に反する管理では、本人が現に利益を受けている限度でしか前二項を適用しない |
具体例
Aの意思に反しない修繕として、隣人Bが義務なくAの雨漏りを直す費用を支出しました。支出時には有益でしたが、その後の台風で修繕による利益は半分しか残っていません。
本人の意思に反しない有益費用の償還は、後から残った利益の額だけに限られず、Bは支出した費用を請求できます。
反例(結論が変わる)
同じ設定で、Bの修繕がAの明らかな反対意思に反していた場合に変えます。
本人の意思に反する管理では現存利益の限度の請求にとどまるため、Bは支出額の全額を償還させることはできません。
関連条との違い
過去問で誤りとされた肢の型
- 宅建平成25年 問8肢1
本人の承諾がなければ緊急措置の費用を請求できないとする誤り。本人の承諾は費用償還の要件に含まれない
- マン管令和5年度 問16肢2
依頼を受けず修理した管理者が費用を自己負担しなければならないとする誤り。有益な費用は本人に償還請求できる
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
法令版: 2026年6月24日施行版
この条文の〇×問題(2問)
有益な費用の判断時点と管理の成否
管理者が支出した費用が本人のために有益かどうかは、その管理によって実際に本人に利益が生じたかどうかで決まるため、事務管理が不成功に終わった場合、その費用の償還を請求することはできない。
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正解 ×
誤り。費用が本人のために有益かどうかは、支出の時点で客観的に判断されるのであって、管理が成功したことまでは要求されない。支出時に本人のためになると認められる費用であれば、結果的に本人に利益が残らなくても償還を請求できる。
学習ポイント:費用の有益性は支出時の客観的見込みで判断し、管理が成功したかどうかは問わない。
第702条1項
本人の意思に反する管理における償還の限定
管理者が本人の意思に反して事務管理をしたときは、支出した費用や負担した債務が本人のために有益であったとしても、本人が現に利益を受けている限度でしかその償還や弁済を請求できない。
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正解 ○
正しい。管理者が本人の意思に反して事務管理をした場合、有益な費用の償還請求と有益な債務負担の効果は、本人が現に利益を受けている限度においてのみ適用される。意思に反する介入への抑制として、支出当時の有益性だけでは全額の請求は認められない。
学習ポイント:本人の意思に反した管理の償還は、費用が有益でも本人の現存利益の限度にとどまる。
第702条3項、関連:第697条2項
根拠・関連条文
この条文を解説で参照する過去問
行政書士令和元年 問33肢2
BがAから甲の管理を頼まれていなかった場合であっても、Bは、Aに対して窓ガラスを取り換えるために支出した費用を請求することができる。
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妥当である
管理を頼まれていなくても事務管理として有益費用を請求できる(民法702条)。妥当。
行政書士令和元年 問33肢3
BがAから甲の管理を頼まれていなかった場合であっても、Bが自己の名において窓ガラスの取換えを業者Cに発注したときは、Bは、Aに対して自己に代わって代金をCに支払うことを請求することができる。
正誤と理由を見る
妥当である
自己名義で業者に発注した場合、事務管理の費用としてAに自己に代わって支払うことを請求できる(702条2項の債務負担の場合)。妥当。
行政書士平成23年 問33肢1
Bは、Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、Aのために修繕を行ったが、強風に煽られて屋根から落下してしまい、受傷した。この場合に、Bは、Aに対して損害賠償を請求することができない。
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妥当
事務管理では管理者は費用の償還等を請求できる(702条)が、管理行為自体により受けた損害の賠償請求は認められない。妥当。
行政書士平成22年 問32イ
Aは、①の場合には、事務を処理するために善良なる管理者の注意をもって必要と判断した費用についてBに対し償還請求をすることができるのに対し、②の場合には、Bのために有益であった費用についてのみBに対し償還請求をすることができる。
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正しい
委任の費用償還は善良な管理者の注意で必要とした費用(650条)、事務管理は本人のために有益な費用に限られる(702条1項)。正しい。
司法書士令和4年度 問19イ
管理者は、本人のために有益な債務を負担したときは、本人に対して、自己に代わってその債務を弁済することを請求することができる。
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正しい
正しい。管理者が本人のために有益な債務を負担したときは、650条2項の準用により(702条2項)、自己に代わって弁済することを請求できる。
宅建平成30年 問5肢4
AによるB宅の屋根の修理が、Bの意思に反することなく行われた場合、AはBに対し、Aが支出した有益な費用全額の償還を請求することができる。
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正しい
正しい。本人の意思に反しなければ、有益な費用の全額償還を請求できる(民法702条1項)。
宅建平成25年 問8肢1
倒壊しそうなA所有の建物や工作物について、Aが倒壊防止の措置をとらないため、Aの隣に住むBがAのために最小限度の緊急措置をとったとしても、Aの承諾がなければ、Bはその費用をAに請求することはできない。
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誤り
誤り。急迫の危険を免れるための事務管理(緊急事務管理・民法698条)では本人の承諾なくても有益な費用を本人に請求できる(702条)。
マン管令和5年度 問16肢2
台風による強風で飛来物が衝突し202号室の窓ガラスが割れた場合には、Bは、Aから依頼を受けていなくても、割れた窓ガラスを修理することができるが、その修理費用は、Bが負担しなければならない。
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誤り
誤り。事務管理に要した有益な費用は本人に対して償還を請求できるため、Bが負担しなければならないものではない。
問題で確認する
第702条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。