第四章 登記手続/第三節 権利に関する登記/第二款 所有権に関する登記
不動産登記法 第74条(所有権の保存の登記)
この条の要点
- 保存登記申請権者の列挙:保存登記の申請権者は法定列挙。確定判決確認者・収用取得者も可。
- 表題部所有者からの取得者の申請権:表題部所有者からの取得者の申請は区分建物のみ。敷地権付きは承諾要。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第74条(所有権の保存の登記)
所有権の保存の登記は、次に掲げる者以外の者は、申請することができない。
一 表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人
二 所有権を有することが確定判決によって確認された者
三 収用(土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)その他の法律の規定による収用をいう。第百十八条第一項及び第三項から第五項までにおいて同じ。)によって所有権を取得した者
②区分建物にあっては、表題部所有者から所有権を取得した者も、前項の登記を申請することができる。この場合において、当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。
条文の要点
所有権の保存の登記とは、所有権の登記がない不動産に最初にする所有権の登記で、法定の者だけが申請できます(74条1項)。
申請できるのは表題部所有者とその相続人その他の一般承継人、確定判決で所有権が確認された者、収用で取得した者です。区分建物では表題部所有者からの取得者も申請できます。
所有権の保存の登記の申請権者
死因贈与の受贈者は、それだけでは74条1項1号により自己名義の保存登記を申請できません。通常の不動産の買主も、表題部所有者からの取得だけでは1項の申請権者に含まれません。区分建物の表題部所有者からの取得者は2項によって申請でき、敷地権付きではさらに敷地権名義人の承諾を要します。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項1号 | 要件 | 表題部所有者またはその相続人その他の一般承継人が申請人になれる |
| 1項2号 | 要件 | 所有権が確定判決で確認された者も申請できる |
| 1項3号 | 要件 | 収用で所有権を取得した者も申請できる |
| 2項 | 例外 | 区分建物は表題部所有者からの取得者も可。敷地権付きでは敷地権名義人の承諾を要する |
具体例
Aが表題部所有者として記録された区分建物ではない建物に、まだ所有権の登記がない。BがAから相続により建物を取得し、B名義の保存登記を申請する。他の申請原因はない。
Bは表題部所有者Aの相続人として1項1号により自己名義の保存登記を申請できる。
反例(結論が変わる)
同じ設定で、Bの取得原因だけを相続からAとの売買に変える。
通常の建物の買主Bは、それだけでは74条の申請適格を持たない。A名義の保存登記を経てBへの移転登記をする。
関連条との違い
- 不動産登記法 第75条:75条は確定判決者等が表題登記のない不動産に保存の登記をするとき登記官が表示を登記する手続規定。74条は申請権者を定める
- 不動産登記法 第60条:移転登記などは権利者と義務者の共同申請だが、保存の登記は義務者がいないので権利者単独の申請になる
過去問で誤りとされた肢の型
- 司法書士平成30年度 問55イ
死因贈与の受贈者は一般承継人として自己名義の保存登記ができるとする誤り。申請権者は法定列挙に限る
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
法令版: 2026年6月24日施行版
この条文の〇×問題(2問)
保存登記申請権者の列挙
所有権を有することが確定判決によって確認された者や、収用によって所有権を取得した者は、表題部所有者でなくても、当該不動産について所有権の保存の登記を申請することができる。
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正解 ○
正しい。保存登記を申請できる者は、表題部所有者及びその一般承継人のほか、所有権を有することが確定判決によって確認された者、収用によって所有権を取得した者に限られる。列挙された者以外は申請できない。保存登記の申請権者は表題部所有者とその一般承継人、確定判決確認者、収用取得者の法定列挙に限られる。
学習ポイント:保存登記の申請権者は法定列挙。確定判決確認者・収用取得者も可。
第74条1項各号
表題部所有者からの取得者の申請権
表題部所有者から売買によって不動産の所有権を取得した者は、どのような種類の不動産であっても、自ら所有権の保存の登記を申請することができる。
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正解 ×
誤り。表題部所有者から所有権を取得した者に保存登記の申請が認められるのは区分建物に限られ、しかも当該建物が敷地権付き区分建物であるときは当該敷地権の登記名義人の承諾を要する。表題部所有者からの取得者の申請は区分建物に限られ、敷地権付き区分建物ではさらに敷地権の登記名義人の承諾を要する。
学習ポイント:表題部所有者からの取得者の申請は区分建物のみ。敷地権付きは承諾要。
第74条2項
根拠・関連条文
この条文を解説で参照する過去問
司法書士令和5年度 問52エ
敷地権付き区分建物の専有部分の表題部所有者Aが、当該区分建物をBに売却し、その売却代金について抵当権の設定契約を締結した場合において、Bが不動産登記法第74条第2項の規定による所有権の保存の登記をしないときは、Aは抵当権設定登記請求権を代位原因として、Bを所有権の登記名義人とする当該所有権の保存の登記を代位により申請することができる。
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誤り
誤り。抵当権設定登記請求権を代位原因として、売主Aが買主Bに代位して74条2項の所有権の保存の登記を申請することはできない。
司法書士令和5年度 問52オ
Aを表題部所有者とする甲建物について、Aが生前に相続人以外のBに対して甲建物を売却していた場合には、Aの相続人Cは、Aを所有権の登記名義人とする所有権の保存の登記を申請することができる。
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正しい
正しい。表題部所有者の相続人は、被相続人名義の所有権の保存の登記を申請することができる(不動産登記法74条1項1号)。Aが生前にBへ売却していた場合は、相続人CがA名義で保存の登記をした上で、AからBへの所有権の移転の登記をする(Bは表題部所有者から直接自己名義の保存の登記をすることはできない)。
司法書士平成30年度 問55イ
所有権の登記のない不動産について、その表題部所有者であるAが死亡した場合には、Aから死因贈与を受けた社会福祉法人Bは、社会福祉法人Bを登記名義人とする所有権の保存の登記を申請することができる。
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誤り
誤り。保存の登記を申請できるのは表題部所有者、その相続人その他の一般承継人等であり(不登74条1項)、死因贈与を受けた者は一般承継人に当たらずB名義の保存の登記はできない。
司法書士平成30年度 問55ウ
表題登記のない建物について、Aが、当該建物の所有権を有することを確認する旨の確定判決に基づいて、当該建物の表題登記の申請をすることなくAを登記名義人とする所有権の保存の登記の申請をする場合には、当該建物の建物図面及び各階平面図を提供しなければならない。
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正しい
正しい。所有権を有することが確定判決によって確認された者は、表題登記がない建物についても直接所有権の保存の登記を申請でき(不動産登記法74条1項2号)、この場合は登記官が表示に関する事項も登記するため(75条)、建物図面及び各階平面図を提供しなければならない(不動産登記令別表)。
司法書士平成29年度 問47エ
Aが表題部所有者として記録されている所有権の登記がない敷地権付き区分建物について、当該区分建物及びその敷地を目的として、Aを委託者、Bを受託者とする信託契約が締結されたときは、Bは、一の申請情報で、直接自らを所有者とする所有権の保存及び信託の登記を申請することができる。
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正しい
正しい。区分建物では表題部所有者から所有権を取得した者も所有権の保存の登記を申請でき(不動産登記法74条2項)、信託の登記はその権利の保存の登記と同時に申請しなければならないから(98条1項)、受託者Bは、一の申請情報で、直接自らを所有者とする所有権の保存及び信託の登記を申請することができる(登記先例)。
司法書士平成26年度 問52ア
所有権の登記がない土地について、その表題部所有者であるAが死亡した場合には、Aから包括遺贈を受けたB株式会社は、自己を登記名義人とする所有権の保存の登記を申請することができる。
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誤り
誤り。包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有するが、所有権の保存の登記の申請人となることはできない(不動産登記法74条1項)。
司法書士平成26年度 問52ウ
Aが所有権の保存の登記の登記名義人である建物について、Aに対して当該登記の抹消を命ずる判決が確定した場合において、当該判決の理由中でBが当該建物の所有権を有することが確認されているときは、Bは、当該登記を抹消し、自己を登記名義人とする所有権の保存の登記を申請することができる。
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正しい
正しい。判決理由中で所有権を有することが確認されている場合も含め、所有権を有することが確定判決により確認された者は、自己を登記名義人とする保存の登記を申請できる(不動産登記法74条1項2号)。
宅建令和2年10月 問14肢1
敷地権付き区分建物の表題部所有者から所有権を取得した者は、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければ、当該区分建物に係る所有権の保存の登記を申請することができない。
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正しい
正しい。区分建物では、表題部所有者から所有権を取得した者も直接自己名義で所有権の保存の登記を申請できるが、その建物が敷地権付き区分建物であるときは、敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない(不動産登記法74条2項)。
問題で確認する
第74条の内容は2問の〇×問題と2問の条文穴埋めで確認できます。