第一編 総則/第五章 法律行為/第三節 代理
民法 第117条(無権代理人の責任)
重要度は過去問の出題年度などをもとにした当サイトの評価です。
この条の要点
- 無権代理人の責任内容の選択権の所在:履行か損害賠償かを選ぶのは無権代理人ではなく契約の相手方。
- 相手方の過失と無権代理人の悪意の競合:相手方に過失があっても、無権代理人が自分の無権を知っていたなら責任を負う。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第117条(無権代理人の責任)
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
②前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
二 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
三 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。
条文の要点
無権代理人の責任とは、代理権のない者が本人の代理人として契約したとき、相手方の選択に従い履行又は損害賠償の責任を負うことです(117条1項)。
履行か損害賠償かを選ぶのは相手方で、無権代理人ではありません。相手方が無権代理を知っていた・過失で知らなかったときは免責されますが、無権代理人が無権を知っていたときは相手方の過失があっても負います。
無権代理人の責任の免除と存続
自己の代理権を証明するか本人の追認を得れば免責されます。無権代理人が制限行為能力者のときは責任を負いません。無権代理人の地位は相続人に承継され、本人の地位を兼ねる相続人でも免れません。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項 | 効果 | 相手方の選択に従い履行又は損害賠償の責任を負う。代理権の証明・本人の追認で免れる |
| 2項1号 | 例外 | 相手方が無権代理を知っていたときは適用しない |
| 2項2号 | 例外 | 相手方が過失で知らなかったときも適用しないが、無権代理人が無権を知っていたときは負う |
| 2項3号 | 例外 | 無権代理人が行為能力の制限を受けていたときは適用しない |
具体例
BがAの代理人と称してCと契約し、本人Aは追認を拒絶しました。CはBの無権を過失で知りませんでしたが、Bは自分に代理権がないことを知っていました。
相手方の過失でも無権代理人が無権を知っていたため2項2号ただし書が働き、BはCの選択に従い履行又は賠償の責任を負います。
反例(結論が変わる)
同じ設定で、Bも自分に代理権があると信じていた場合に変えます。
Cの過失による不知に2項2号本文が適用され、Bは1項の責任を負いません。
関連条との違い
過去問で誤りとされた肢の型
- 司法書士令和5年度 問6オ
無権代理人が無権を知っていても相手方の過失があれば責任を負わないとする誤り。2項2号ただし書で負う
- 行政書士令和6年 問32肢4
相手方に過失があるため履行・賠償を請求できないとする誤り。無権代理人の悪意があれば請求できる
- 司法書士令和2年度 問5エ
本人が無権代理人を相続しても無権代理人の責任を負わないとする誤り。無権代理人の地位も相続で承継される
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
法令版: 2026年6月24日施行版
この条文の〇×問題(2問)
無権代理人の責任内容の選択権の所在
代理権を有しない者が他人の代理人として契約をした場合、その者が本人の追認を得られなければ、履行と損害賠償のいずれの責任を負うかをその者自身が選択して、契約の相手方に対して責任を負う。
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正解 ×
誤り。履行と損害賠償のいずれを求めるかの選択権は契約の相手方にあり、無権代理人が選ぶのではない。無権代理人は相手方の選択に従って責任を負う立場に置かれる。責任を負う者と責任内容を選ぶ者を取り違えないことが要である。
学習ポイント:履行か損害賠償かを選ぶのは無権代理人ではなく契約の相手方。
第117条1項
相手方の過失と無権代理人の悪意の競合
契約の相手方が、代理人と称する者に代理権がないことを過失によって知らなかった場合、その相手方は、代理人と称する者が自己に代理権がないことを知っていたときであっても、その者に履行または損害賠償の責任を負わせることはできない。
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正解 ×
誤り。相手方が過失により無権代理を知らなかったときは原則として無権代理人の責任は適用されないが、無権代理人が自己に代理権がないことを知っていたときは例外的に責任を負う。相手方の過失と無権代理人の悪意を併せて判断する。
学習ポイント:相手方に過失があっても、無権代理人が自分の無権を知っていたなら責任を負う。
第117条2項2号ただし書
根拠・関連条文
この条文を解説で参照する過去問
行政書士令和6年 問32肢4
Bが、B自身をAの代理人と偽って、Aを売主、Cを買主として本件契約を締結した場合、Bに本件契約の代理権がないことを知らなかったが、そのことについて過失があるCは、本件契約が無効となった場合であっても、Bに対して履行または損害賠償の請求をすることができない。
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妥当でない
無権代理の相手方Cに過失がある場合でも、民法117条の履行・賠償請求は無過失を要件としない(善意のみが要件)。請求できる。
行政書士平成28年 問28肢4
Bが死亡してAが相続した場合、Aは本人の資格において本件売買契約の追認を拒絶することができるが、無権代理人の責任を免れることはできない。
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妥当である
B死亡後Aが相続した場合、Aは本人として追認拒絶できるが無権代理人の地位も承継するため責任を免れない。妥当。
司法書士令和5年度 問6ウ
本件売買契約の締結時において、Aが成年被後見人であったときは、Aは、Cに対して民法第117条第1項による無権代理人の責任を負わない。
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正しい
正しい。無権代理人が制限行為能力者であるときは、その者の行為によって責任を負うことができないとされる(117条4項の解釈・成年被後見人は117条1項の責任を負わない)。
司法書士令和5年度 問6オ
Aが、自己に代理権がないことを知りながら、本件売買契約を締結した場合であっても、Aが代理権を有しないことをCが過失によって知らなかったときは、A は、Cに対して民法第117条第1項による無権代理人の責任を負わない。
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誤り
誤り。無権代理人が自己に代理権がないことを知っていたときは、相手方が無権代理を過失により知らなくても117条1項の責任を負う(117条2項ただし書)。
司法書士令和2年度 問5エ
本件売買契約の締結後にAが死亡し、BがAを単独で相続した場合であっても、Bは、民法第117条第1項による無権代理人の責任を負わない。
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誤り
誤り。本人Bが無権代理人Aを相続した場合、無権代理人の地位(民法117条の責任を負う地位)も相続するため、Bは無権代理人の責任を負い得る。
司法書士平成28年度 問5オ
本件売買契約の締結後にAがBから甲土地の譲渡を受けた場合においても、Cは、その選択に従い、Aに対し、履行の請求又は損害賠償の請求をすることができる。
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正しい
正しい。無権代理人が本人から目的物の譲渡を受けても、相手方は民法117条により履行又は損害賠償の請求を選択できる(判例)。
管業令和5年度 問3肢4
CがBに対し、相当の期間を定めて、その期間内にAの無権代理行為を追認するかどうかを確答すべき旨を催告した場合において、Bが追認を拒絶したときは、Aは、Cに対して、Cの選択に従い、本件売買契約の履行又は損害賠償の責任を負う。
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正しい
正しい。本人が追認を拒絶した場合、無権代理人は相手方の選択に従い履行又は損害賠償の責任を負う。
管業令和2年度 問5肢3
Bが本件契約の追認を拒絶した場合には、Cは、Aに対し、Cの選択に従い、損害賠償の請求又は契約の履行を請求することができる。
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正しい
正しい。本人が追認を拒絶した場合、相手方は無権代理人に対し履行又は損害賠償を請求できる。
管業令和2年度 問5肢4
Aが本件契約の締結時に制限行為能力者であった場合に、Aの代理行為が制限行為能力を理由に取り消されたときは、CはAに対し、無権代理人の責任を追及することができない。
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正しい
正しい。無権代理人が行為能力の制限を受けていたときは、民法117条1項の履行・損害賠償責任は適用されない(同条2項3号)。本人Bの責任ではなく、無権代理人Aの責任についての例外である。
管業平成29年度 問4肢3
AC間の委任契約が解除されCの代理権が消滅した後に、CがAの代理人と称してBに対して甲を売却した場合、売買契約締結の際にCに代理権がないことをBが知っていたときは、Cは、Bに対し無権代理人の責任を負わない。
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正しい
正しい。相手方が代理権の不存在を知っていた場合、無権代理人は履行又は賠償の責任を負わない。
問題で確認する
第117条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。