資格ジュピター条文穴埋め・判例演習

第三編 債権/第二章 契約/第七節 賃貸借/第二款 賃貸借の効力

民法 第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)

分野:賃貸借

出題試験:宅建重要度 高行政書士重要度 高司法書士重要度 高賃貸不動産経営管理士重要度 高マンション管理士重要度 高管理業務主任者重要度 高

重要度は過去問の出題年度などをもとにした当サイトの評価です。

この条の要点

  • 無断転貸の効果:無断転貸で生じるのは賃貸人の解除権。当然終了や無効ではない。
  • 無断転貸を理由とする解除と催告の要否:無断転貸による解除は催告を要しない。ただし背信性のない特段の事情があれば解除できない。

条文原文

色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。

第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)

賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。

②賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

条文の要点

賃借権の譲渡・転貸とは、借主が賃借権を第三者に移し又は賃借物を貸す行為で、貸主の承諾がなければできません(612条1項)。

承諾なく第三者に使用収益させると貸主に解除権が発生しますが、転貸借契約自体は有効で、承諾は口頭でも足り、解除に催告は要りません。

賃借権の譲渡・転貸の制限と解除の境目

禁止は契約書の定めがなくても法律上あり、譲渡と転貸の両方に承諾が要ります。もっとも、無断転貸が貸主に対する背信行為と認められない特段の事情を借主が立証すれば解除はできず、第三者が使用収益を始める前なら解除も認められません。

項役割内容
1項要件賃借権の譲渡・賃借物の転貸には貸主の承諾が要る(承諾は書面でなくてよい)
2項効果無断で第三者に使用収益させると貸主に解除権が生じるが、契約は当然には終了しない

具体例

Aから建物を借りるBが、Aの承諾を得ずCにその建物を転貸し、Cが住み始めました。

AはBとの賃貸借を解除できますが、BC間の転貸借契約は有効で、解除権を行使するまで賃貸借は続きます。

反例(結論が変わる)

同じ設定で、Bが転貸借の契約を結んだだけでCがまだ住み始めていない場合に変えます。

第三者の使用収益が始まっておらず信頼関係を破壊したとはいえないため、Aはまだ解除できません。

関連条との違い

  • 民法 第541条:2項の解除は催告を要しない。一般の履行遅滞による解除は催告が要る
  • 民法 第613条:適法な転貸では、転借人は借主の債務の範囲で貸主に直接履行する義務を負う
  • 借地借家法 第19条:借地上の建物を第三者に譲渡するときは、土地の賃借権の譲渡・転貸について貸主の承諾に代わる裁判所の許可の制度がある

過去問で誤りとされた肢の型

  • 賃管令和6年度 問25肢3

    禁止の定めがなければ自由に譲渡・転貸できるとする誤り。禁止は法律上の規定で契約の定めを要しない

  • 宅建令和6年 問9肢4

    転貸には貸主の承諾が要らないとする誤り。譲渡と同じく承諾が要る

  • マン管平成29年度 問13肢3

    無断転貸の転貸借契約を無効とする誤り。解除事由になるだけで転貸借自体は有効

ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。

法令版: 2026年6月24日施行版

この条文の〇×問題(2問)

無断転貸の効果

建物の賃借人が賃貸人の承諾を得ないでその建物を第三者に転貸しても、賃貸借は直ちには終了せず、賃貸人が契約を解除してはじめて終了する。

正解と解説を見る

正解 ○

正しい。民法612条2項は、賃借人が承諾なく第三者に賃借物を使用収益させた場合に、賃貸人が「契約の解除をすることができる」と定めるにとどまる。解除権が発生するだけで契約は当然には終了せず、賃貸人が解除を行使しない限り賃貸借は存続する。

学習ポイント:無断転貸で生じるのは賃貸人の解除権。当然終了や無効ではない。

第612条1項・2項

無断転貸を理由とする解除と催告の要否

賃借人が賃貸人の承諾を得ないで賃借物を第三者に転貸した場合、賃貸人が契約を解除するには、あらかじめ相当の期間を定めて転貸をやめるよう催告しなければならない。

正解と解説を見る

正解 ×

誤り。612条2項は、賃借人が承諾なく第三者に賃借物を使用収益させたときの賃貸人の解除権を直接定めており、541条のような履行の催告を要しない。もっとも判例は、無断転貸が賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合には解除できないとする(信頼関係破壊の法理)。

学習ポイント:無断転貸による解除は催告を要しない。ただし背信性のない特段の事情があれば解除できない。

第612条2項、関連:第541条

この条文を解説で参照する過去問

行政書士令和4年 問32肢4

賃貸人たる地位がCに移転した場合、Bは、Cの承諾を得なければ、甲建物の賃借権を譲り渡すことはできないが、甲建物を転貸するときは、Cの承諾を要しない。

正誤と理由を見る

誤り

賃借権の譲渡も転貸も賃貸人の承諾を要する(民法612条)。『転貸は承諾不要』は誤り。

行政書士平成25年 問32エ

Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建てている場合、Aが、Cに対して乙建物を売却するためには、特段の事情のない限り、甲土地にかかる賃借権を譲渡することについてBの承諾を得る必要がある。

正誤と理由を見る

正しい

賃借権の譲渡は賃貸人の承諾を要するので(民法612条)、建物売却に伴う土地賃借権の移転には特段の事情がない限りBの承諾が必要である。正しい。

司法書士令和7年度 問58ア

敷地権が賃借権である敷地権付き区分建物について売買を原因とする所有権の移転の登記を申請する場合には、当該賃借権の設定の登記に賃借権の譲渡を許す旨の定めがないときであっても、当該賃貸借の賃貸人の承諾を証する情報の提供を要しない。

正誤と理由を見る

誤り

誤り。敷地権が賃借権である場合、区分建物の所有権移転に伴い賃借権も移転する。賃借権の譲渡には賃貸人の承諾が必要であり(民612条1項)、賃借権譲渡許可の登記がないときは賃貸人の承諾を証する情報を提供しなければならない。

司法書士平成31年度 問13オ

正誤と理由を見る

誤り

誤り。建物の競落人Cが土地の賃借権を取得するには、賃貸人Bの承諾又はこれに代わる裁判所の許可(借地権の譲渡・転貸の許可、民法612条・借地借家法20条)を要する。承諾・許可なく賃借権の取得を主張することはできない。

司法書士平成25年度 問10ア

Bの承諾を得ずにAから当該利用権を譲り受け、甲土地を使用しているCがいるときは、Bは、Cに対し、甲土地の明渡しを請求することができる。

正誤と理由を見る

賃借権の場合にのみ正しい。賃借権の譲渡には賃貸人の承諾を要するが(民法612条1項)、地上権は物権として自由に譲渡できるためBはCに明渡しを請求できない。

宅建令和6年 問9肢4

賃借人が賃貸借契約の目的物を第三者に転貸する場合、賃貸人の承諾は不要である。

正誤と理由を見る

誤り

誤り。転貸には賃貸人の承諾が必要(民法612条)。

宅建平成27年 問9肢3

土地の賃借人が無断転貸した場合、賃貸人は、賃貸借契約を民法第612条第2項により解除できる場合とできない場合があり、土地の賃借人が賃料を支払わない場合にも、賃貸人において法定解除権を行使できる場合とできない場合がある。

正誤と理由を見る

正しい

正しい。612条2項の解除が認められる場合と背信性により認められない場合があり、賃料不払いでも信頼関係破壊の有無により法定解除の可否が分かれる(判例)。

賃管令和6年度 問25肢3

賃貸借契約に、賃借権を無断で譲渡し又は無断で転貸することを禁ずる定めがない場合、賃借人は自由に賃借権を譲渡又は転貸することができる。

正誤と理由を見る

誤り

誤り。無断譲渡・無断転貸の禁止は法律上当然であり、禁止の定めがなくても自由にはできない。

マン管令和元年度 問12肢3

Bは、Aの書面による承諾を得ていなくても、口頭による承諾を得ている場合は、Dに対し、101 号室を転貸することができる。

正誤と理由を見る

正しい

正しい。賃借権の譲渡・転貸の承諾は書面によることを要せず、口頭の承諾でも有効である。

マン管平成29年度 問13肢1

Bが101号室を、Aの承諾を得ずにCに転貸した場合において、Bの転貸がAに対する背信行為と認めるに足りない特段の事情の存在をBが主張立証したときは、AはBとの賃貸借契約を解除できない。

正誤と理由を見る

正しい

正しい。承諾のない転貸でも、それが賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があれば賃貸借を解除できない(判例)。

ほか3肢は、各過去問のページで確認できます。

問題で確認する

第612条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。