第三編 債権/第二章 契約/第九節 請負
民法 第641条(注文者による契約の解除)
重要度は過去問の出題年度などをもとにした当サイトの評価です。
この条の要点
- 完成前の自由解除権の主体の限定:完成前に賠償して自由に解除できるのは注文者だけ。委任の双方解除と混同しない。
- 注文者による解除後の既遂部分の報酬請求:完成前に解除されても、注文者の利益となる可分部分は完成とみなされ利益割合の報酬を請求できる。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第641条(注文者による契約の解除)
請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
条文の要点
注文者の任意解除とは、請負人が仕事を完成しない間に、注文者が損害を賠償していつでもできる契約の解除です(641条)。
請負人にはこの解除権はなく、相手方の債務不履行も要りません。仕事の完成後は使えず、引渡しが残っていても完成の時点で区切られます。解除後も、可分な給付で注文者が利益を受けた部分は完成とみなされ、請負人は利益の割合に応じた報酬を請求できます。
注文者の任意解除の損害賠償
賠償と引き換えの留保された解除権で、請負人の側に落ち度がなくても使える点が債務不履行解除と違います。賠償は解除によって請負人に生じた損害を埋めるもので、既遂部分に対する利益割合の報酬請求は別に存続します。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項 | 要件 | 請負人が仕事を完成しない間であること |
| 1項 | 効果 | 注文者はいつでも損害を賠償して契約を解除できる |
具体例
AがBに家のリフォーム工事を注文しましたが、工事の途中でAが不要になったため、Bの損害を賠償して解除を申し出ました。
仕事が未完成の間なので、AはBの損害を賠償して契約を解除できます。
反例(結論が変わる)
同じ設定で、Bが工事を完成させた後にAが解除を試みた場合に変えます。
仕事の完成後はこの解除は使えず、Aは引渡しと引き換えに報酬を支払う義務が残ります。
関連条との違い
過去問で誤りとされた肢の型
- 司法書士令和5年度 問18イ
仕事の完成後でも引渡し完了までは賠償して解除できるとした誤り。使えるのは仕事を完成しない間だけ
- マン管令和元年度 問16肢2
請負人も賠償していつでも解除できるとした誤り。この解除権は注文者だけにある
- 管業令和6年度 問3肢2
工事に着手した後は注文者も賠償して解除できないとした誤り。完成前なら着手後でも解除できる
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
法令版: 2026年6月24日施行版
この条文の〇×問題(2問)
完成前の自由解除権の主体の限定
請負契約においては、請負人が仕事を完成しない間、注文者だけでなく請負人も、いつでも損害を賠償して契約を解除することができる。
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正解 ×
誤り。請負人が仕事を完成しない間に損害を賠償していつでも契約を解除できるのは注文者だけであり、請負人にはこのような自由な解除権はない。各当事者がいつでも解除できるという規定は委任に関するものである。請負では仕事の完成と報酬支払が対価関係にあるため、請負人の自由な途中解除は認められない。
学習ポイント:完成前に賠償して自由に解除できるのは注文者だけ。委任の双方解除と混同しない。
第641条、関連:第651条1項
注文者による解除後の既遂部分の報酬請求
注文者が損害を賠償して仕事の完成前に契約を解除した場合でも、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分は仕事の完成とみなされ、請負人は利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
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正解 ○
正しい。注文者は仕事の完成前であれば損害を賠償していつでも契約を解除できるが、完成前に契約が解除された場合には、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付により注文者が利益を受けるとき、その部分を仕事の完成とみなし、利益の割合に応じた報酬請求が認められる。解除によって既遂部分に関する報酬請求の根拠まで失われるわけではない。
学習ポイント:完成前に解除されても、注文者の利益となる可分部分は完成とみなされ利益割合の報酬を請求できる。
第641条、関連:第634条2号
根拠・関連条文
この条文を解説で参照する過去問
行政書士令和5年 問33ウ
請負契約においては、請負人が仕事を完成しているか否かにかかわらず、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
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請負の注文者の任意解除は仕事完成前に限られる(民法641条)。完成後は解除できない。誤り。
司法書士令和5年度 問18イ
目的物の引渡しを要する請負契約においては、請負人が仕事を完成した後であっても、その目的物の引渡しが完了するまでは、注文者は、いつでも損害を賠償して契約を解除することができる。
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誤り
誤り。注文者が損害を賠償していつでも解除できるのは請負人が仕事を完成しない間に限られ(641条)、完成後は解除できない。
司法書士平成30年度 問19ア
この契約は、各当事者がいつでもその解除をすることができるが、相手方にとって不利な時期に解除をするには、やむを得ない事由が必要である。
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誤り
誤り。委任はいつでも解除でき、不利な時期の解除にはやむを得ない事由がなければ損害賠償義務を負うにすぎず(民法651条)、請負も注文者は損害賠償していつでも解除できる(641条)。いずれでも正しくない。
マン管令和7年度 問16肢3
Bの仕事が完成するまでの間であれば、Aはいつでも請負契約を解除することができるが、やむを得ない事由があるか否かにかかわらず、Bの損害を賠償しなければならない。
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正しい
正しい。注文者は仕事が完成するまでいつでも契約を解除できるが、解除によって生じた請負人の損害を賠償しなければならない。
マン管令和元年度 問16肢2
Bは、リニューアルの工事を完成させるまでの間であれば、いつでもAに生じた損害を賠償して請負契約を解除することができる。
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誤り
誤り。損害を賠償して解除できるのは注文者Aであり、請負人Bはその解除権を有しない。
管業令和7年度 問3肢3
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正しい
正しい。アは損害を賠償して解除できるのは注文者Aで請負人Bではないため誤り、イ・ウは材料提供者による帰属と給付不能時の報酬拒絶として適切である。
管業令和6年度 問3肢2
管理組合が発注した大規模修繕工事契約は、施工会社がその修繕に着手した後は、管理組合の側からは、その損害を賠償しても当該契約を解除することができない。
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誤り
誤り。請負契約は仕事が完成する前なら注文者は損害賠償をして解除できる。
管業令和2年度 問2肢3
Bが本件契約内容に適合した工事を完成させた場合であっても、Aは、Bに生じる損害を賠償すれば、本件契約の解除をすることができる。
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誤り
誤り。仕事完成後は請負人に生ずる損害を賠償しての解除はできず、解除は仕事が未完成の間に限られる。
管業平成28年度 問5肢4
Bが本件工事を完成しない間は、Aは、いつでも損害を賠償して契約を解除することができる。
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正しい
正しい。請負人が仕事を完成しない間は、注文者はいつでも損害を賠償して契約を解除できる(民法641条)。
問題で確認する
第641条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。