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第五編 相続/第四章 相続の承認及び放棄/第一節 総則

民法 第919条(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)

分野:相続の承認・放棄・財産分離

出題試験:宅建重要度 中行政書士重要度 中司法書士重要度 高マンション管理士重要度 中管理業務主任者重要度 中

重要度は過去問の出題年度などをもとにした当サイトの評価です。

この条の要点

  • 限定承認・放棄の取消しにおける申述の要否:限定承認・放棄の取消しは家裁への申述を要する。相手方への意思表示だけでは足りない。
  • 承認・放棄の取消権の消滅時効の特則:承認・放棄の取消権は特則により追認できる時から六箇月・行為時から十年で消滅。

条文原文

色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。

第919条(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)

相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。

②前項の規定は、第一編(総則)及び前編(親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。

③前項の取消権は、追認をすることができる時から六箇月間行使しないときは、時効によって消滅する。相続の承認又は放棄の時から十年を経過したときも、同様とする。

④第二項の規定により限定承認又は相続の放棄の取消しをしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

条文の要点

相続の承認・放棄の取消しとは、熟慮期間内でも承認や放棄を撤回できない一方、錯誤・詐欺・強迫等を理由に取り消せることです(919条1項・2項)。

取消しの権利は、追認をすることができる時から6か月、承認・放棄の時から10年で時効消滅します。限定承認・放棄の取消しは家庭裁判所への申述で行います。

相続の承認・放棄の取消しの手続

撤回は一方向の意思の巻き戻しで一切認められず、取消しは意思表示の瑕疵を理由にする別の仕組みです。取消権の期間は一般の取消権(5年・20年)より短い特則があります。限定承認・放棄は家裁への申述でするので、その取消しも家裁への申述が要ります。

項役割内容
1項効果承認・放棄は熟慮期間内でも撤回できない
2項例外総則・親族編の規定による取消しは妨げない
3項期間取消権は追認できる時から6か月、承認・放棄から10年で時効消滅する
4項手続限定承認・放棄の取消しは家庭裁判所に申述する

具体例

A死亡後、相続人Bは熟慮期間内に相続の放棄をしましたが、後で借金がほとんどなかったと分かりました。

単に判断を変えただけでは、期間内でも放棄を撤回できません。錯誤などの取消原因があるかは別の問題です。

反例(結論が変わる)

同じ設定で、Bの放棄がCの強迫によるものだった場合に変えます。

強迫を理由に取り消すことはでき、その場合は家庭裁判所に取消しの申述をします。ただし追認できる時から6か月などの期間制限があります。

関連条との違い

  • 民法 第915条:熟慮期間は承認・放棄の判断期限。撤回不可なので期間内の再考は効かず、救済は取消しに限られる
  • 民法 第126条:一般の取消権は追認できる時から5年・行為時から20年。承認・放棄の取消権は6か月・10年の特則
  • 民法 第938条:放棄は家裁への申述でする。同じ申述の方式が放棄の取消しをするときにも要求される(4項)

過去問で誤りとされた肢の型

  • 司法書士令和7年度 問21ウ

    熟慮期間内なら放棄を撤回できるとする誤り。1項は期間内の撤回も禁じる

  • 司法書士平成25年度 問22イ

    期間内の撤回の意思表示を前提に相続分を計算する誤り。撤回自体が認められないので計算も変わる

ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。

法令版: 2026年6月24日施行版

この条文の〇×問題(2問)

限定承認・放棄の取消しにおける申述の要否

錯誤や詐欺など意思表示の瑕疵を理由として限定承認又は相続の放棄を取り消そうとする相続人は、家庭裁判所に対してその旨を申述しなければならない。

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正解 ○

正しい。限定承認及び相続の放棄は家庭裁判所への申述によってなされるため、これらの取消しをしようとする者もその旨を家庭裁判所に申述しなければならないと定められている。一般の意思表示の取消しのように相手方への意思表示だけでは足りず、裁判所を通した手続が要求される。

学習ポイント:限定承認・放棄の取消しは家裁への申述を要する。相手方への意思表示だけでは足りない。

第919条4項、関連:第919条2項

承認・放棄の取消権の消滅時効の特則

相続の承認又は放棄を取り消す権利についても、取り消すことができる行為の取消権に関する一般原則がそのまま適用され、追認をすることができる時から五年間行使しなければ時効で消滅し、行為の時から二十年が経過したときも同様に消滅する。

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正解 ×

誤り。相続の承認又は放棄の取消権には特則があり、追認をすることができる時から六箇月間行使しないとき、または承認・放棄の時から十年を経過したときに時効によって消滅する。一般の取消権の五年・二十年という期間ではなく、より短い特別の期間が適用される。

学習ポイント:承認・放棄の取消権は特則により追認できる時から六箇月・行為時から十年で消滅。

第919条3項、関連:第126条

この条文を解説で参照する過去問

司法書士令和7年度 問21ウ

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内は、既にした相続の放棄を撤回することができる。

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誤り

誤り。相続の承認及び放棄は撤回することができない(919条1項本文)。

司法書士令和2年度 問22エ

相続の放棄をした者が、強迫を理由として相続の放棄の取消しをしようとする場合には、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

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正しい

正しい。相続の放棄をした者が詐欺又は強迫を理由として放棄の取消しをしようとする場合、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない(民法919条3項・4項)。

司法書士平成26年度 問22エ

相続の承認又は放棄をした場合であっても、相続の承認、又は放棄をすべき期間内であれば、これを撤回することができる。

正誤と理由を見る

誤り

誤り。相続の承認及び放棄は、熟慮期間内であっても撤回することができない(民法919条1項)。

司法書士平成25年度 問22イ

C及びDが相続の放棄をしたものの、Cが自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にこれを撤回する旨の意思表示をした場合には、Bの相続分は、450万円となる。

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誤り

誤り。一度した相続の放棄は撤回できないため(民法919条2項)、相続人はB・EとなりBの相続分は600万円である。

マン管平成28年度 問17肢1

Bが、自己のためにAの相続の開始があったことを知った時から3ヵ月(以下「熟慮期間」という。)以内に、相続の放棄をしても、熟慮期間内であれば相続の放棄を撤回することができる。

正誤と理由を見る

誤り

誤り。相続の承認及び放棄は、熟慮期間内であっても撤回することができない(民法919条1項)。

問題で確認する

第919条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。