第一編 総則/第五章 法律行為/第四節 無効及び取消し
民法 第120条(取消権者)
重要度は過去問の出題年度などをもとにした当サイトの評価です。
この条の要点
- 瑕疵ある意思表示の取消権者に同意権者は含まれない:瑕疵ある意思表示の取消権者は本人・代理人・承継人のみ。同意権者は含まれない。
- 無効行為の主張には取消権者の限定が及ばない:取消権者の限定は取消可能行為に限る。無効は原則として利害関係人が主張できる。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第120条(取消権者)
行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
②錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
条文の要点
取消権者とは、取り消すことができる行為を取り消せる者で、行為能力の制限による取消しは制限行為能力者・その代理人・承継人・同意権者に限られます(120条1項)。
錯誤・詐欺・強迫による取消しは、瑕疵ある意思表示をした者・その代理人・承継人に限られ、同意をすることができる者は含まれません。制限行為能力者本人も法定代理人の同意なく単独で取り消せます。
取消権者の範囲の非対称
同意をすることができる者が取消権者になるのは行為能力の制限による取消しだけです。保証人はいずれの列挙にも当たらず取消権がありません。無効な行為の主張にはこの限定はなく、利害関係人なら主張できます。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項 | 要件 | 行為能力の制限による取消しは、制限行為能力者・その代理人・承継人・同意をすることができる者に限る |
| 2項 | 要件 | 錯誤・詐欺・強迫による取消しは、瑕疵ある意思表示をした者・その代理人・承継人に限る |
具体例
被保佐人Aが保佐人Bの同意なく土地をCに売却しました。Aはこの売買を取り消そうとしています。
行為能力の制限による取消しは制限行為能力者本人にも取消権があるため、AはBの同意なく取り消せます。
反例(結論が変わる)
同じ設定で、取り消そうとするのがAの債務の保証人Dだった場合に変えます。
保証人は1項の列挙のどれにも当たらないため、Dはこの行為を取り消せません。
関連条との違い
過去問で誤りとされた肢の型
- 司法書士令和4年度 問4ウ
未成年者は法定代理人の同意がないと自分の行為を取り消せないとする誤り。制限行為能力者本人も取消権者
- 行政書士平成24年 問27肢4
成年被後見人本人は審判の取消しまで取り消せないとする誤り。本人も取消権者だが、追認は124条の要件を別に満たす必要がある
- 司法書士令和3年度 問5オ
契約上の地位の承継人は錯誤を理由に取り消せないとする誤り。承継人も2項の取消権者
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
法令版: 2026年6月24日施行版
この条文の〇×問題(2問)
瑕疵ある意思表示の取消権者に同意権者は含まれない
被保佐人が第三者の詐欺によって取り消すことができる意思表示をした場合、代理権の付与の審判を受けていない保佐人は、同意権者としての地位のみでは、その意思表示を取り消すことはできない。
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正解 ○
正しい。錯誤・詐欺・強迫によって取り消すことができる行為の取消権者は、瑕疵ある意思表示をした者・その代理人・承継人に限定され、「同意をすることができる者」は含まれない。同意権者としての保佐人はこの限定列挙にあたらず、代理権の付与の審判を受けた場合にのみ代理人として取り消せる。同意権者が取消権者となるのは行為能力の制限を理由とする取消しの場合である。
学習ポイント:瑕疵ある意思表示の取消権者は本人・代理人・承継人のみ。同意権者は含まれない。
第120条2項、関連:第120条1項・第876条の4第1項
無効行為の主張には取消権者の限定が及ばない
無効な行為についても、取り消すことができる行為と同様に、その無効を主張することができるのは、行為能力の制限を受けた者やその代理人・承継人などの一定の者に限られ、それ以外の利害関係人は無効を主張できない。
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正解 ×
誤り。取消権者を限定する120条は、取り消すことができる行為の取消しを誰ができるかを定めるもので、無効な行為の主張には適用されない。無効は原則として利害関係のある者なら誰でも主張できる。ただし、意思無能力による無効のように表意者の保護を目的とする無効では、相手方からの主張が制限されると解される場合もある。
学習ポイント:取消権者の限定は取消可能行為に限る。無効は原則として利害関係人が主張できる。
第120条1項・2項、関連:第119条
根拠・関連条文
この条文を解説で参照する過去問
行政書士平成24年 問27肢4
成年被後見人の法律行為について、成年後見人は、これを取り消し、または追認することができるが、成年被後見人は、事理弁識能力を欠く常況にあるため、後見開始の審判が取り消されない限り、これを取り消し、または追認することはできない。
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妥当ではない
妥当ではない。成年被後見人本人も、後見開始の審判の取消しを待たずに自己の行為を取り消せる(120条)。追認は別に124条の要件を満たす必要があり、本人が追認するには原則として取消原因の消滅と取消権の認識が必要である。
司法書士令和4年度 問4ウ
未成年者が法定代理人の同意を得ないで法律行為をした場合には、当該未成年者は、法定代理人の同意がなければ行為能力の制限を理由として当該法律行為を取り消すことができない。
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誤り
誤り。取消権者は制限行為能力者本人を含み(120条1項)、未成年者は法定代理人の同意なく単独で取り消せる。
司法書士令和3年度 問5オ
AのBに対する意思表示を錯誤により取り消すことができる場合であっても、その意思表示によって生じた契約上の地位をAから承継したCは、錯誤を理由としてその意思表示を取り消すことができない。
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誤り
誤り。錯誤・詐欺・強迫により取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人もしくは承継人に限り取り消すことができる。契約上の地位を承継したCは承継人に当たり、取り消すことができる(120条2項)。
司法書士平成30年度 問4ア
被保佐人Aは、その所有する甲土地を、保佐人Bの同意を得ずにCに売却した。この場合において、Aは、Bの同意がなくても、Cとの間の甲土地の売買契約を取り消すことができる。
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正しい
正しい。行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者自身が法定代理人・保佐人の同意なく単独で取り消すことができる(民法120条1項)。
司法書士平成25年度 問5ウ
主たる債務者が行為能力の制限によってその債務を生じさせた行為を取り消すことができる場合であっても、当該債務の保証人が当該行為を取り消すことはできない。
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正しい
正しい。制限行為能力を理由とする取消権者は制限行為能力者又はその代理人・承継人・同意をすることができる者に限られ(民法120条1項)、保証人に取消権はない。
管業平成28年度 問1肢1
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正しい
正しい。アは保佐人も取消権を有するため誤り、ウは被保佐人への催告に追認を得た旨の通知を発しないときは取り消したものとみなされるため誤り(民法120条・20条)。
問題で確認する
第120条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。