第二編 株式会社/第一章 設立/第二節 定款の作成
会社法 第28条
この条の要点
- 変態設立事項の効力要件:変態設立事項は定款記載が効力要件。記載がなければ効力を生じない。
- 事後設立の定款記載:財産引受は変態設立事項で定款記載が必要。成立後の事後設立(467条)とは別。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第28条
株式会社を設立する場合には、次に掲げる事項は、第二十六条第一項の定款に記載し、又は記録しなければ、その効力を生じない。
一 金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合にあっては、設立時発行株式の種類及び種類ごとの数。第三十二条第一項第一号において同じ。)
二 株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称
三 株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称
四 株式会社の負担する設立に関する費用(定款の認証の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。)
条文の要点
変態設立事項とは、現物出資・財産引受・発起人の特別利益・会社負担の設立費用の四つの事項で、定款に記載又は記録しなければ効力を生じないものです(28条)。
四つの事項は、発起人間の合意だけでは定款の記載・記録に代えられません。定款に記載のない財産引受については、成立後の会社の承認決議でも無効は治癒しないと判例が示します。成立後に必要な手続を経て新たな契約を結ぶこととは区別します。
変態設立事項の対象範囲
現物出資ができるのは発起人に限られ、発起人以外の設立時募集株式の引受人の出資は含まれません。設立費用でも、認証手数料や払込取扱金融機関への手数料のように法務省令で損害のおそれがない費用と定めたものは除かれます。検査役の報酬は裁判所が定めるもので、定款記載事項ではありません。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 本文 | 効果 | 列挙する四つの事項は定款への記載又は記録がないと効力を生じない |
| 1号 | 要件 | 金銭以外の財産を出資する者の氏名・目的財産と価額・割り当てる設立時発行株式の数 |
| 2号 | 要件 | 会社の成立後に譲り受けることを約した財産と価額・譲渡人の氏名(財産引受) |
| 3号 | 要件 | 発起人が会社設立に伴って得る特別な報酬や利益と、その発起人の氏名 |
| 4号 | 要件 | 株式会社が負担する設立に関する費用 |
| 4号括弧書 | 例外 | 法務省令で損害のおそれがない費用と定めたものは、定款記載を要さず会社が負担できる |
具体例
発起人Aは、株式会社Xの成立を条件として、XがBから機械を300万円で買う財産引受契約を結びました。定款には機械・価額・Bの氏名を記載し、ほかに現物出資財産等はなく、他の設立手続にも問題はありません。
財産引受の定款記載を満たしています。現物出資財産等の総額も500万円以下で検査役の調査を要しないため、この財産引受に基づいて設立手続を進められます。
反例(結論が変わる)
同じ設定で、この財産引受についての定款の記載だけがない場合に変えます。
定款記載を欠く財産引受は効力を生じません。会社成立後に承認決議をしてもこの契約は有効にならず、Bも無効を主張できます。新たに必要な手続を経て契約を結ぶことは別です。
関連条との違い
過去問で誤りとされた肢の型
- 行政書士令和7年 問37肢4
特別利益を全員同意や創立総会の決議だけで決められるとする誤り。28条3号は定款への記載・記録を効力要件とし、別の意思決定手続では代えられない
- 行政書士平成24年 問37ア
発起人以外の設立時募集株式の引受人の現物出資を定款記載事項とする誤り。対象は発起人に関する事項で、引受人はそもそも金銭出資しかできない
- 司法書士令和3年度 問27ア
検査役の報酬を定款記載事項とする誤り。検査役の報酬は裁判所が定めるもので変態設立事項ではない
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
判例
定款に記載のない財産引受と会社成立後の承認最高裁判所第一小法廷 1953年12月3日
定款に記載のない財産引受は、会社成立後に株主総会が特別決議で承認しても有効にならず、譲渡人も無効を主張できる。成立後に法定手続を経て新たな財産取得契約を結ぶこととは区別される
法令版: 2026年8月12日施行版
この条文の〇×問題(2問)
変態設立事項の効力要件
発起人が金銭以外の財産を出資する場合、当該財産及びその価額並びに割当てる設立時発行株式の数は、発起人間の契約で定めておけば定款への記載がなくてもその効力を生じる。
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正解 ×
誤り。現物出資・財産引受・発起人の特別利益・会社負担の設立費用は、定款に記載し、又は記録しなければ、その効力を生じない。記載がなくても外部効力を主張できる事項ではなく、変態設立事項として定款記載を効力要件とする。
学習ポイント:変態設立事項は定款記載が効力要件。記載がなければ効力を生じない。
第28条
事後設立の定款記載
発起人が、株式会社の成立後に特定の不動産を譲り受けることを当該不動産の所有者と約束した場合、当該財産及びその価額並びに譲渡人の氏名又は名称は、定款に記載しなければその効力を生じない。
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正解 ○
正しい。株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産(財産引受)は、当該財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称を定款に記載し、又は記録しなければ効力を生じない(28条2号)。財産引受は変態設立事項の一つである。成立後2年以内に一定の財産を取得する事後設立(467条1項5号)とは別の制度である。
学習ポイント:財産引受は変態設立事項で定款記載が必要。成立後の事後設立(467条)とは別。
第28条2号、関連:第467条1項5号
この条文を解説で参照する過去問
行政書士令和7年 問37肢4
株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益について定款の定めがない場合には、株式会社の成立の時までに、発起人の全員の同意または創立総会の決議によって当該事項を決定することができる。
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誤り
発起人の特別利益は定款の記載事項(会社法28条)で、定款に定めがなければ創立総会等で事後決定できない。
行政書士令和元年 問37ア
株式会社の定款には、設立に際して出資される財産の価額またはその最低額を記載または記録しなければならない。
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定款には設立時発行株式に係る出資財産の価額または最低額を記載・記録する(会社法28条)。正しい。
行政書士平成29年 問37肢2
金銭以外の財産を出資する場合には、株式会社の定款において、その者の氏名または名称、当該財産およびその価額、ならびにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数を記載または記録しなければ、その効力を生じない。
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正しい
現物出資は、者の氏名・財産と価額・割当株式数を定款に記載しなければ効力を生じない(28条1号)。正しい。
行政書士平成28年 問37ア
株式会社の定款には、株式会社の設立に際して出資される財産の額またはその最低額を記載または記録しなければならない。
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設立に際して出資される財産の額または最低額は定款の絶対的記載事項(28条)。妥当。
行政書士平成24年 問37ア
発起人以外の設立時募集株式の引受人が金銭以外の財産を出資の目的とする場合には、その者の氏名または名称、目的となる財産およびその価額等を定款に記載または記録しなければ、その効力を生じない。
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妥当ではない
定款への記載・記録を効力要件とする変態設立事項(28条)が対象とするのは発起人に関するもので、発起人以外の設立時募集株式引受人の現物出資は定款記載を要しない。妥当ではない。
行政書士平成24年 問37イ
発起人が会社のために会社の成立を条件として特定の財産を譲り受ける契約をする場合には、目的となる財産、その価額および譲渡人の氏名または名称を定款に記載または記録しなければ、その効力を生じない。
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妥当
会社の成立を条件とする財産譲受け(財産引受、28条2号)は定款への記載・記録がないと効力を生じない。妥当。
行政書士平成24年 問37ウ
会社の成立により発起人が報酬その他の特別の利益を受ける場合には、報酬の額、特別の利益の内容および当該発起人の氏名または名称を定款に記載または記録しなければ、その効力を生じない。
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妥当
発起人が受ける報酬その他の特別の利益(28条1号)は定款への記載・記録が効力要件。妥当。
行政書士平成24年 問37エ
会社の設立に要する費用を会社が負担する場合には、定款の認証手数料その他会社に損害を与えるおそれがないものを除いて、定款に記載または記録しなければ、その効力を生じない。
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妥当
会社負担の設立費用(28条4号)は、定款認証手数料等損害を与えるおそれがないものを除き定款への記載・記録が必要。妥当。
司法書士令和7年度 問27ウ
定款に記載せず、又は記録しないで行われた財産引受けは、株式会社の成立後に株主総会の決議によって承認を受けた場合であっても、遡って有効とはならない。
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正しい
正しい。財産引受けは定款への記載・記録が効力要件であり(28条2号・26条2項)、これを欠いた財産引受けは会社成立後の株主総会の承認によっても遡って有効とならない(最判昭28.12.3)。
司法書士令和5年度 問27ウ
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正しい
正しい。現物出資は発起人のみがすることができ(発起設立28条・募集設立63条)、発起人でない設立時募集株式の引受人は現物出資をすることができない。
ほか5肢は、各過去問のページで確認できます。
問題で確認する
第28条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。