第五章 業務/第一節 通則
宅地建物取引業法 第47条(業務に関する禁止事項)
この条の要点
- 重要事項の故意の不告知:35条事項以外でも、判断に重要な利用制限等の故意不告知は第47条で禁止。
- 解除妨害のための不実告知:第47条の不実告知禁止は、勧誘時に加え解除・申込み撤回等の妨害にも及ぶ。
- 不当に高額な報酬の要求:不当に高額な報酬の要求は、実際に受領しなくても禁止行為に当たる。
- 手付貸付けによる契約誘引:手付金の貸付け等による契約締結の誘引は、無利息・短期でも禁止される。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第47条(業務に関する禁止事項)
宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
一 宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の契約の締結について勧誘をするに際し、又はその契約の申込みの撤回若しくは解除若しくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため、次のいずれかに該当する事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為
イ 第三十五条第一項各号又は第二項各号に掲げる事項
ロ 第三十五条の二各号に掲げる事項
ハ 第三十七条第一項各号又は第二項各号(第一号を除く。)に掲げる事項
ニ イからハまでに掲げるもののほか、宅地若しくは建物の所在、規模、形質、現在若しくは将来の利用の制限、環境、交通等の利便、代金、借賃等の対価の額若しくは支払方法その他の取引条件又は当該宅地建物取引業者若しくは取引の関係者の資力若しくは信用に関する事項であつて、宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの
二 不当に高額の報酬を要求する行為
三 手付について貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為
条文の要点
業務に関する禁止事項とは、勧誘等での故意の不告知・不実告知、不当に高額な報酬の要求、手付の貸付け等による誘引を禁じる規定です(47条1項)。
不実告知等は勧誘時だけでなく撤回・解除・債権行使を妨げる場面にも及びます。報酬の要求・手付貸付けの誘引は相手方が応じなくても違反です。
業務に関する禁止事項の3類型
不告知・不実告知は「故意に」が要件で、対象は35条・35条の2・37条の事項のほか取引条件や資力等で判断に重要な影響を及ぼす事項に及びます。手付の貸付け・分割払いの提案は誘引として禁止ですが、手付の減額や代金貸借のあっせん、報酬の分割受領は対象外です。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項1号 | 要件 | 契約締結の勧誘の際や、申込みの撤回・解除・債権行使を妨げるために、重要事項について故意に事実を告げず不実を告げる行為を禁じます。 |
| 1項2号 | 要件 | 不当に高額の報酬を要求する行為を禁じます。要求しただけで足り、受領は要りません。 |
| 1項3号 | 要件 | 手付について貸付けその他信用の供与で契約締結を誘引する行為を禁じます。契約に至らなくても違反です。 |
具体例
宅建業者A社は買主Bに建物の売買を勧める際、手付金を用意できないBへ手付金を貸し付けると提案して契約を誘いました。
手付について信用を供与して契約を誘引する行為なので、47条3号の禁止に該当します。実際に契約できたかは問いません。
反例(結論が変わる)
同じ交渉で、A社がBに手付金を貸すのではなく手付金の額を減らすと提案した場合に変えます。
単なる手付額の減額は貸付け等の信用供与ではないため、47条3号の禁止行為には当たりません。
関連条との違い
過去問で誤りとされた肢の型
- 宅建令和6年 問42肢2
勧誘時に不実を告げても37条書面に正確に記載すればよいとする誤り。勧誘時の不実告知自体が違法で事後の記載では免れません。
- 宅建令和2年12月 問40肢2
手付の貸付けが契約後に償還されたなら違反でないとする誤り。誘引した時点で違反で、償還で違法性は消えません。
- 宅建平成29年 問34肢3
媒介報酬の分割受領に応じる誘引も禁止とする誤り。信用供与の禁止は手付についてだけです。
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
法令版: 2026年4月1日施行版
この条文の〇×問題(4問)
重要事項の故意の不告知
宅建業者Aは建物の購入を勧める際、将来の利用を大きく制限する事実を知りながら買主Bに告げなかった。35条の説明項目にその事実が明記されていなければ、取引判断に重要でも第47条の不告知には当たらない。
正解と解説を見る
正解 ×
誤り。第47条第1号は35条等の列挙事項に限らず、宅地・建物の将来の利用制限など、相手方の判断に重要な影響を及ぼす取引条件等について、勧誘時の故意の不告知や不実告知を禁じる。35条の説明項目に個別列挙されていないというだけで免れることはない。設問では重要な利用制限を知って隠しているので、同号の禁止対象となる。
学習ポイント:35条事項以外でも、判断に重要な利用制限等の故意不告知は第47条で禁止。
第47条第1号ニ
解除妨害のための不実告知
宅建業者Cが、買主Dによる売買契約の解除を妨げるため、解除に関する重要な取引条件について事実と異なる内容を告げた。第47条の不実告知の禁止は勧誘時だけでなく、このような解除妨害の場面にも及ぶ。
正解と解説を見る
正解 ○
正しい。第47条第1号は、契約締結の勧誘に際する場合だけでなく、申込みの撤回や契約解除、取引により生じた債権の行使を妨げるために、列挙された重要事項につき故意に事実を告げず、または不実を告げる行為も禁じる。解除を思いとどまらせるための虚偽説明も対象であり、契約前の説明義務違反だけに限定されない。
学習ポイント:第47条の不実告知禁止は、勧誘時に加え解除・申込み撤回等の妨害にも及ぶ。
第47条第1号
不当に高額な報酬の要求
宅建業者Eが媒介の依頼者Fに対し、国土交通大臣の定める報酬上限を大幅に超える報酬を要求した。Fが拒否して実際には支払わなかったとしても、不当に高額な報酬を要求する行為自体が第47条の禁止対象となる。
正解と解説を見る
正解 ○
正しい。第46条は大臣が定めた上限を超える報酬の受領を禁じ、第47条第2号は不当に高額の報酬を要求する行為を別に禁じる。依頼者が拒んで報酬が実際に支払われなくても、著しく過大な額の要求自体が問題となる。受領の有無だけで第47条第2号の成否を判断しないことが重要である。
学習ポイント:不当に高額な報酬の要求は、実際に受領しなくても禁止行為に当たる。
第47条第2号、関連:第46条第2項
手付貸付けによる契約誘引
宅建業者Gは、自己が媒介する売買の契約を成立させるため、買主Hが払う手付金を無利息で一週間だけ貸し付けると提案した。返済を確実にする合意があれば、この誘引方法は第47条で禁じられない。
正解と解説を見る
正解 ×
誤り。第47条第3号は、手付について貸付けその他の信用供与をすることにより、契約の締結を誘引する行為を禁じる。貸付けが無利息か、返済期限が短いか、返済の合意があるかは、この禁止の例外とされていない。買主の手付資金を業者が貸して契約へ誘う行為は、買主の判断をゆがめるため禁止対象となる。
学習ポイント:手付金の貸付け等による契約締結の誘引は、無利息・短期でも禁止される。
第47条第3号
根拠・関連条文
この条文を解説で参照する過去問
宅建令和7年 問36イ
建物の購入希望者から「契約の締結についてしばらく考えさせてほしい。」という申し出があったので、Aの従業者は、他に買い手がいないにもかかわらず、「他に買い手がいるので、今日中しか契約の締結はできない。」と当該購入希望者に告げた。
正誤と理由を見る
禁止
禁止。事実に反する告げ方で契約を急がせる行為は禁止。
宅建令和7年 問36エ
建物の売買を媒介しているAの従業者は、手持ち資金がない購入希望者に対して「手付金は当社が貸し付けるので後から返してくれれば構わない。」と告げて、契約の締結を誘引したが、契約には至らなかった。
正誤と理由を見る
禁止
禁止。手付金の貸付による誘引は契約に至らなくても禁止行為。
宅建令和6年 問42肢2
宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買の契約の締結の勧誘をするに際し、宅地建物取引業者の相手方等に対し、宅地又は建物の引渡しの時期について故意に不実のことを告げた場合であっても、契約が成立したときに宅地建物取引業法第37条の規定により交付すべき書面に当該事項を正確に記載すればよい。
正誤と理由を見る
誤り
誤り。勧誘時に故意に不実のことを告げる行為自体が違法で、37条書面の正確な記載で免責されない。
宅建令和5年 問28イ
Aの従業員Eは、Fが所有する戸建住宅の買取りを目的とした電話勧誘をFに対して行った際に、不実のことと認識しながら「今後5年以内にこの一帯は再開発されるので、急いで売却した方がよい。」と説明した。
正誤と理由を見る
違反する
違反する。不実のことを告げる行為は禁止(法47条)。
宅建令和5年 問36イ
Aは、売主としてマンションの売買契約を締結するに際して、買主が手付として必要な額を今すぐには用意できないと申し出たので、手付金の分割払いを買主に提案した。
正誤と理由を見る
違反する
違反する。手付金の分割払いを提案する行為は手付の貸与・立替に準ずる行為として禁止。
宅建令和3年10月 問43ア
マンションの販売に際して、買主が手付として必要な額を持ち合わせていなかったため、手付を分割受領することにより、契約の締結を誘引した。
正誤と理由を見る
違反する
違反する。手付の分割受領等の貸付・信用供与で契約締結を誘引することは禁止。
宅建令和3年10月 問43イ
宅地の売買に際して、相手方が「契約の締結をするかどうか明日まで考えさせてほしい」と申し出たのに対し、事実を歪めて「明日では契約締結できなくなるので、今日しか待てない」と告げた。
正誤と理由を見る
違反する
違反する。事実を歪めて判断のための時間を与えない行為は威迫・欺罔として禁止。
宅建令和2年12月 問26肢1
宅地建物取引業者は、建物の売買に際し、買主に対して売買代金の貸借のあっせんをすることにより、契約の締結を誘引してはならない。
正誤と理由を見る
誤り
誤り。代金貸借のあっせん自体は禁止されておらず、『誘引してはならない』規定の対象は手付貸付等。あっせん行為自体は合法。
宅建令和2年12月 問34肢2
宅地建物取引業者は、その業務に関し、相手方に不当に高額の報酬を要求した場合、たとえ受領していなくても宅地建物取引業法違反となる。
正誤と理由を見る
正しい
正しい。不当に高額の報酬を『要求』した時点で違反(受領は不要)。
宅建令和2年12月 問40肢2
宅地建物取引業者は、契約の相手方に対して資金不足を理由に手付の貸付けを行ったが、契約締結後償還された場合は法に違反しない。
正誤と理由を見る
誤り
誤り。契約締結を誘引する目的での手付貸付は禁止(償還されても違反)。
ほか8肢は、各過去問のページで確認できます。
問題で確認する
第47条の内容は4問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。