第一編 総則/第五章 法律行為/第三節 代理
民法 第108条(自己契約及び双方代理等)
重要度は過去問の出題年度などをもとにした当サイトの評価です。
この条の要点
- 債務の履行における自己契約規制の除外:自己契約・双方代理でも債務の履行は規制の対象外。履行だけの行為は有効。
- 利益相反行為の規制範囲:利益相反行為は自己契約・双方代理以外の形でも無権代理とみなされる。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第108条(自己契約及び双方代理等)
同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
②前項本文に規定するもののほか、代理人と本人との利益が相反する行為については、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
条文の要点
自己契約と双方代理とは、同一の法律行為について相手方又は双方の代理人となる行為で、原則として無権代理の行為とみなされます(108条1項)。
無効ではなく無権代理とみなされるだけなので、本人の追認で有効になります。債務の履行と本人があらかじめ許諾した行為は規制されず、利益相反行為も同様にみなされます。
自己契約と双方代理の規制の範囲
規制は2類型に限らず、代理人と本人の利益が相反する行為全般に及びます(2項)。本人の許諾は行為の前に要り、事後の同意は追認としてはたらきます。本人に損害がなくても規制されます。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項本文 | 効果 | 同一の法律行為で相手方又は双方の代理人としてした行為は無権代理とみなす |
| 1項ただし書 | 例外 | 債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為は除く |
| 2項本文 | 効果 | 代理人と本人の利益が相反する行為も無権代理とみなす |
| 2項ただし書 | 例外 | 本人があらかじめ許諾した行為は除く |
具体例
BがAの代理人であると同時にCの代理人として、A・C間の土地売買を成立させました。A・Cの許諾はありません。
双方代理として無権代理とみなされ、本人の追認がなければ契約の効力は本人に生じません。
反例(結論が変わる)
同じ設定で、Bの行為がすでに成立していた売買の代金支払という債務の履行だった場合に変えます。
債務の履行は但書の例外で規制されず、Bの行為は有効に効力を生じます。
関連条との違い
過去問で誤りとされた肢の型
- 司法書士平成30年度 問5ウ
双方代理を無効とする誤り。無権代理とみなされるだけで、追認があれば有効になる
- 宅建令和2年12月 問2肢2
本人に損害が発生しなければ無権代理とみなされないとする誤り。損害の有無は要件ではない
- 宅建平成30年 問2肢3
許諾の有無にかかわらず契約は無効になるとする誤り。あらかじめ許諾があれば有効
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
法令版: 2026年6月24日施行版
この条文の〇×問題(2問)
債務の履行における自己契約規制の除外
本人から金銭を借り入れている代理人が、本人を代理して、自己の本人に対する借入金の弁済を受領した場合、その行為は債務の履行に当たるため、自己契約としての規制を受けず有効である。
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正解 ○
正しい。民法108条1項ただし書は、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為を自己契約・双方代理の規制から除く。借入金の返済は新たな利害対立を生じさせない債務の履行であり、形式的に自己契約の外観を備えていても有効である。
学習ポイント:自己契約・双方代理でも債務の履行は規制の対象外。履行だけの行為は有効。
第108条1項ただし書
利益相反行為の規制範囲
代理人と本人との利益が相反する行為であっても、代理人が相手方の代理人となる行為や代理人自身を相手方とする行為に当たらないものは、代理権を有しない者がした行為とみなされない。
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正解 ×
誤り。民法108条2項は、1項本文の自己契約・双方代理以外でも、代理人と本人の利益が相反する行為を広く無権代理行為とみなす。ただし本人があらかじめ許諾した行為は除かれる。規制は例示された二類型に限定されない。
学習ポイント:利益相反行為は自己契約・双方代理以外の形でも無権代理とみなされる。
第108条2項
根拠・関連条文
この条文を解説で参照する過去問
司法書士令和7年度 問6イ
Aは、B及びCからあらかじめ許諾を得た場合には、B及びCの双方を代理してBC間の契約を締結することができる。
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正しい
正しい。双方代理は原則禁止だが、本人があらかじめ許諾した行為はこの限りでない(108条ただし書)。
司法書士令和4年度 問5エ
同一人物が、債権者及び債務者双方の代理人として代物弁済をする場合であっても、債権者及び債務者双方があらかじめ許諾していたときは、無権代理行為とはみなされない。
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正しい
正しい。双方代理は無権代理行為とみなされるが、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為は例外である(108条ただし書)。
司法書士平成30年度 問5ウ
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誤り
誤り。双方代理は代理権を有しない者がした行為とみなされ(民法108条1項)、無権代理となるだけで無効とはならず、本人の追認により有効となる(113条1項)。
宅建令和2年12月 問2肢2
BがCの代理人も引き受け、AC双方の代理人として甲土地に係るAC間の売買契約を締結した場合、Aに損害が発生しなければ、Bの代理行為は無権代理とはみなされない。
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誤り
誤り。双方代理はAの承諾があるか債務の履行の場合を除き無権代理であり、Aに損害が発生しなくても無権代理とみなされる(民法108条)。
宅建平成30年 問2肢3
BがCの代理人にもなって本件契約を成立させた場合、Aの許諾の有無にかかわらず、本件契約は無効となる。
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誤り
誤り。双方代理は本人の許諾があれば有効(民法108条は原則禁止だが許諾等で例外あり)。
宅建平成24年 問2肢3
不動産の売買契約に関して、同一人物が売主及び買主の双方の代理人となった場合であっても、売主及び買主の双方があらかじめ承諾をしているときには、当該売買契約の効果は両当事者に有効に帰属する。
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正しい
正しい。双方代理は原則として禁止されるが、本人双方があらかじめ承諾していれば有効となる(民法108条ただし書・判例)。
管業平成29年度 問4肢1
AB間の売買契約の成立後に、甲についてAからBへの所有権移転登記手続を行う場合、Cは、AとBの双方を代理することができる。
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正しい
正しい。移転登記手続のような債務の履行については双方代理の禁止が及ばず、CはA・B双方を代理できる。
問題で確認する
第108条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。