資格ジュピター条文穴埋め・判例演習

第二編 物権/第二章 占有権/第二節 占有権の効力

民法 第192条(即時取得)

分野:占有権

出題試験:宅建重要度 中行政書士重要度 高司法書士重要度 高マンション管理士重要度 中

重要度は過去問の出題年度などをもとにした当サイトの評価です。

この条の要点

  • 即時取得の無過失要件:即時取得は善意だけでは足りず無過失も必要。注意すれば知り得たなら取得しない。
  • 即時取得される権利の範囲(質権):即時取得の対象は占有者が行使しようとした権利で、所有権以外の質権等も含む。

条文原文

色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。

第192条(即時取得)

取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

条文の要点

即時取得とは、取引により動産の占有を平穏・公然に始めた善意で無過失の者が、その物の権利を直ちに得ることです(192条)。

占有の公信力を根拠に、無権利者からでも権利を取得させて取引の安全を保ちます。取得は原始取得で、所有権に限らず質権など行使しようとした権利も対象です。

即時取得の要件の厳しさ

相続など取引によらない占有取得には適用されません。善意・無過失は即時取得の要件を満たす占有取得時に判断します。占有改定だけでは即時取得できず、後に現実の引渡しを受けるならその時点が基準です。指図による占有移転では、譲受人が承諾した時点が基準になります。

項役割内容
1項要件取引行為によって、平穏かつ公然に動産の占有を始めること
1項要件占有開始時に、相手方の無権利について善意で過失がないこと
1項効果その動産について行使する権利を直ちに原始取得する

具体例

Aから時計を預かったBが、無断で自分の物としてCに売りました。CはBの所有を過失なく信じ、平穏かつ公然に時計の引渡しを受けました。

Cは無権利者Bからでも時計の所有権を即時取得し、AはCに返還を求められません。

反例(結論が変わる)

同じ設定で、Cが売買ではなくBの相続人として時計を占有していた場合に変えます。

相続は取引行為ではないため即時取得の対象外で、Cは善意でも所有権を取得せず、Aに返還を求められます。

関連条との違い

  • 民法 第193条:盗品・遺失物は即時取得しても被害者・遺失者が2年間回復請求できる。ただし詐取された物は盗品・遺失物に当たらない
  • 民法 第177条:不動産は登記で対抗する前提があり即時取得はない。動産は占有の公信力が取引安全を保護する
  • 民法 第188条:188条は占有者の権利の適法性を推定する規定。192条は無権利者からでも権利を取得させる実体規定

過去問で誤りとされた肢の型

  • 司法書士平成25年度 問8肢1

    相続による占有取得に即時取得を適用する誤り。取引行為による取得が前提の規定

  • マン管令和5年度 問12肢3

    善意無過失の立証責任を取得者に負わせる誤り。善意は推定される

  • 行政書士平成23年 問29ウ

    占有改定だけで一応所有権を取得し、後の引渡しで確定するとする誤り。占有改定だけでは即時取得は成立しない

ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。

判例

  • 占有改定による即時取得の否定最高裁判所第一小法廷 1960年2月11日

    占有改定だけでは外観上の占有状態が変わらないため、即時取得は成立しない

  • 強制競売と即時取得最高裁判所 1967年5月30日

    債務者の所有でない動産が強制競売に付されても、善意無過失の競落人は所有権を取得できる

法令版: 2026年6月24日施行版

この条文の〇×問題(2問)

即時取得の無過失要件

取引行為によって平穏かつ公然と動産の占有を始めた者は、譲渡人がその動産について権利を有しないことにつき善意であれば、取引上通常払うべき注意を尽くせば知り得た事情があったとしても、即時にその動産について行使する権利を取得する。

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正解 ×

誤り。即時取得には善意であることに加えて無過失が求められる。注意を尽くしていれば知り得た事情がある場合は過失があると評価され、権利の取得を否定される。善意は無過失とは独立の要件であり、一方だけを満たせば足りるものではない。

学習ポイント:即時取得は善意だけでは足りず無過失も必要。注意すれば知り得たなら取得しない。

第192条

即時取得される権利の範囲(質権)

動産の所有者を装う者から、その動産に質権を設定する旨の取引で目的物の引渡しを受けた債権者は、設定者が無権利であることを知らず、かつ知らなかったことに過失がなければ、質権を即時に取得し得る。

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正解 ○

正しい。即時取得で取得されるのは「その動産について行使する権利」であり、占有者が善意で行使しようとした権利が取得の対象となる。所有権に限られず、質権設定のために引渡しを受けた者は質権を即時取得し得る。目的物の引渡しを伴う質権設定も取引行為に当たる。

学習ポイント:即時取得の対象は占有者が行使しようとした権利で、所有権以外の質権等も含む。

第192条、関連:第344条

この条文を解説で参照する過去問

行政書士令和7年 問29ア

Aは、相続により、被相続人Bが現に占有していた動産甲を、それが設置された不動産と共に承継したが、甲はCの所有物であった。この場合、甲がBの所有物でないことにつきAが善意・無過失であれば、Aは甲を即時取得する。

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即時取得は取引行為による取得が前提。相続による承継取得には適用されない(民法192条は取引を前提)。

行政書士令和7年 問29ウ

Aは、売買により動産丙を、現にそれを占有するBから購入して現実の引渡しを受けた。丙が自動車である場合、丙が登録済みであるか否かにかかわらず、Aは丙を即時取得しない。

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自動車も民法上は動産であり、登録の有無にかかわらず即時取得の対象になりうる。『即時取得しない』とする点が誤り。

行政書士令和7年 問29エ

Aは、売買により動産丁を、それを占有代理人Cによって占有するBから購入し、BはCに今後Aのために占有するように指示してAがそれを承諾した。丁はAからBに寄託されているものであった場合、承諾時において丁がBの所有物でないことにつきAが善意・無過失であれば、後にその事実を知るに至ったとしても、Aは丁を即時取得する。

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妥当

妥当。指図による占有移転では、譲受人が承諾した時点で善意・無過失なら即時取得が成立し、後に譲渡人が無権利者だと知っても取得は妨げられない。占有改定とは異なる。

行政書士令和7年 問29オ

Aは、売買により動産戊を、現にそれを占有するBから購入したが、その際、AがBの元に戊を引取りにいくこととし、それまでの間、BがAのために占有することが合意された。戊はBが他から賃借したものであった場合、AがBから戊の現実の引渡しを受ける時点において、戊がBの所有物でないことにつきAが善意・無過失であれば、Aは戊を即時取得する。

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現実の引渡しを受ける時点で善意・無過失であれば即時取得が成立する(占有改定前の合意ではなく現実の引渡し時が基準)。

行政書士令和元年 問31肢3

債務者が他人の所有に属する動産につき質権を設定した場合であっても、債権者は、その動産が債務者の所有物であることについて過失なく信じたときは、質権を即時取得することができる。

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妥当である

他人の動産の質権設定でも債権者が善意無過失なら即時取得できる(民法192条・判例)。妥当。

行政書士平成27年 問31肢3

債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が占有する時計を引き渡した場合、当該時計が他人から借りた時計であったとしても、債権者が、善意、無過失で、平穏に、かつ、公然と占有を開始したときには、時計の所有権を取得できる。

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妥当

借りた時計の引渡しでも、債権者が善意・無過失で平穏かつ公然に占有を開始すれば即時取得により所有権を取得できる(192条)。妥当。

行政書士平成23年 問29ア

CがAのカメラを即時取得するのは、Bの占有に公信力が認められるからであり、その結果、Bがカメラの所有者であったとして扱われるので、Cの所有権はBから承継取得したものである。

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妥当ではない

即時取得は占有の公信力に基づく原始取得であって、Bが所有者であったとして扱われての承継取得ではない(192条)。妥当でない。

行政書士平成23年 問29ウ

Bは、Cにカメラを売却し、以後Cのために占有する旨の意思表示をし、引き続きカメラを所持していた場合、Cは、一応即時取得によりカメラの所有権を取得するが、現実の引渡しを受けるまでは、その所有権の取得は確定的ではなく、後に現実の引渡しを受けることによって確定的に所有権を取得する。

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妥当でない

妥当でない。占有改定だけでは外観上の占有状態が変わらないため、即時取得は成立しない。一応所有権を取得して後の引渡しで確定するという扱いでもない(最判昭和35年2月11日)。

行政書士平成23年 問29エ

Bは、Cにカメラを売却する前にカメラをDに寄託していたが、その後、BがCにカメラを売却するに際し、Dに対して以後Cのためにカメラを占有することを命じ、Cがこれを承諾したときは、たとえDがこれを承諾しなくても、Cは即時取得によりカメラの所有権を取得する。

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妥当

指図による占有移転は本人が占有代理人に命じ第三者が承諾すれば足り(184条)、占有者Dの承諾は不要で即時取得が成立する。妥当。

司法書士令和7年度 問9ウ

A所有の甲動産をAから預かっていたBが、甲動産がBの所有であると過失なく信じていたCとの間で甲動産の売買契約を締結した後、Cが、甲動産についてBが無権利であることを知り、甲動産の現実の引渡しを受けた場合には、Cは、甲動産を即時取得することができない。

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正しい

正しい。即時取得の善意・無過失は現実の引渡しの時点で判断される(判例)。引渡し時に無権利を知っていたCは即時取得できない。

ほか9肢は、各過去問のページで確認できます。

問題で確認する

第192条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。