資格ジュピター条文穴埋め・判例演習

第三編 債権/第二章 契約/第七節 賃貸借/第二款 賃貸借の効力

民法 第608条(賃借人による費用の償還請求)

分野:賃貸借

出題試験:宅建重要度 中行政書士重要度 中司法書士重要度 中賃貸不動産経営管理士重要度 高マンション管理士重要度 高管理業務主任者重要度 中

重要度は過去問の出題年度などをもとにした当サイトの評価です。

この条の要点

  • 有益費の償還請求時期:直ちに償還請求できるのは必要費のみ。有益費は賃貸借終了時の償還にとどまる。
  • 有益費償還における増価現存の要件:有益費償還は増価現存が前提で、額は支出額か増価額の賃貸人の選択による。

条文原文

色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。

第608条(賃借人による費用の償還請求)

賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。

②賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

条文の要点

必要費と有益費とは、賃借人が賃借物に支出する費用の2分類で、貸主負担の必要費は直ちに償還を請求できます(608条)。

必要費は支出後すぐ請求でき賃料との相殺も可能ですが、有益費は賃貸借の終了時に価格の増加が現存する場合に限り、貸主の選択で支出額か増価額を償還させます。

必要費と有益費の償還の違い

両者は請求の時期と要件が違います。必要費の請求は賃貸借の終了や返還で消えませんが、貸主が返還を受けた時から1年の期間制限があります。有益費の償還は増価の現存が前提で、裁判所は貸主の請求により償還の期限を許与できます。

項役割内容
1項効果貸主の負担に属する必要費を支出した借主は、直ちに償還を請求できる
2項効果有益費は賃貸借の終了時に、価格の増加が現存する限り貸主の選択で支出額か増価額を償還させる
2項ただし書例外裁判所は貸主の請求により、有益費の償還について相当の期限を許与できる

具体例

Aから建物を借りるBが、貸主負担の雨漏り修繕費10万円を立て替えました。

Bは支出後すぐにAへ償還を請求でき、賃料債務と相殺することもできます。

反例(結論が変わる)

同じ設定で、Bが建物の価値を高める改良工事の費用を支出した場合に変えます。

有益費は支出時に請求できず、賃貸借の終了時に増価が現存する場合だけ、Aの選択で支出額か増価額を償還してもらえます。

関連条との違い

  • 民法 第606条:修繕は貸主の義務。借主が貸主負担の修繕を立て替えたときが1項の必要費になる
  • 民法 第600条:必要費の償還請求は貸主が賃借物の返還を受けた時から1年の期間制限がある
  • 民法 第196条:占有者の有益費の償還ルールを2項が参照する。悪意の占有者への期限許与は196条2項ただし書

過去問で誤りとされた肢の型

  • 賃管令和元年度 問16肢1

    貸主負担の修繕費を終了時まで待たなければ請求できないとする誤り。必要費は直ちに請求できる

  • 賃管平成29年度 問17肢1

    修繕費に増価現存の要件を当てはめる誤り。増価の現存は有益費だけの要件

  • マン管平成28年度 問14肢4

    賃貸人の地位が移転しても旧貸主が償還義務を負うとする誤り。費用償還債務は新貸主に承継される

ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。

法令版: 2026年6月24日施行版

この条文の〇×問題(2問)

有益費の償還請求時期

賃借人が賃借物の価値を増加させる費用を支出したときは、賃貸人の負担に属する必要費を支出した場合と同様に、賃貸借の終了を待たず直ちにその償還を請求することができる。

正解と解説を見る

正解 ×

誤り。支出時に直ちに償還を請求できるのは、賃貸人の負担に属する必要費を支出した場合に限られる。有益費については賃貸借の終了の時に償還すれば足り、しかも価格の増加が現存する場合に限って賃貸人の選択に従い支出額又は増価額が償還される。支出の時点で請求することはできない。

学習ポイント:直ちに償還請求できるのは必要費のみ。有益費は賃貸借終了時の償還にとどまる。

第608条第1項・2項、関連:第196条第2項

有益費償還における増価現存の要件

賃借人が賃借物の改良のために有益費を支出した場合でも、賃貸借の終了時にその費用による価値の増加が現存しないときは、賃貸人は償還をする義務を負わない。

正解と解説を見る

正解 ○

正しい。有益費の償還は、賃貸借の終了時に価格の増加が現存する場合に限られる。増加した価値が終了時に消滅していれば償還義務は生じない。現存する場合でも償還額は支出した金額又は増価額のいずれかを賃貸人の選択に従って定めるので、支出すれば常に全額が戻るわけではない。

学習ポイント:有益費償還は増価現存が前提で、額は支出額か増価額の賃貸人の選択による。

第608条第2項、関連:第196条第2項

この条文を解説で参照する過去問

第608条を解説の根拠とする過去問の肢が16肢あります。条文別の過去問ページで出題形式のまま確認できます。

問題で確認する

第608条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。