第三章 借家/第三節 定期建物賃貸借等
借地借家法 第38条(定期建物賃貸借)
この条の要点
- 定期借家の事前説明:定期借家は書面等の契約とは別に、事前の書面交付・説明が必要。
- 満了終了通知:一年以上の定期借家は、満了一年前から六か月前までの終了通知が必要。
- 居住用定期借家の中途解約:二百平方メートル未満の居住用定期借家は、やむを得ない事情なら一か月で中途解約できる。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第38条(定期建物賃貸借)
期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
②前項の規定による建物の賃貸借の契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その契約は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。
③第一項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
④建物の賃貸人は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、建物の賃借人の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。)により提供することができる。この場合において、当該建物の賃貸人は、当該書面を交付したものとみなす。
⑤建物の賃貸人が第三項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。
⑥第一項の規定による建物の賃貸借において、期間が一年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の一年前から六月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から六月を経過した後は、この限りでない。
⑦第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。
⑧前二項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
⑨第三十二条の規定は、第一項の規定による建物の賃貸借において、借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しない。
条文の要点
定期建物賃貸借とは、公正証書による等書面で契約することを条件に、更新がない旨を定められる建物の賃貸借です(38条1項)。
更新なしの定めには、事前の別個の説明書面の交付と説明が要ります。4項の承諾付き電磁的方法でも代替できます。一年以上の契約では終了通知も必要で、遅れた通知はその後六か月を経て終了を対抗できます。
定期建物賃貸借の方式と説明
契約は公正証書に限らず書面または電磁的記録で足り、方式を欠いても賃貸借自体は普通借家として成立します。事前説明は契約書とは別個の書面を交付して行い、欠くと更新がない旨の定めだけが無効になります。居住用で床面積二百平方メートル未満なら、やむを得ない事情で生活の本拠として使用することが困難になった借主は解約を申し入れられ、一月後に終了します。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項・2項 | 要件 | 更新なしの定めは書面による契約が条件。内容を記録した電磁的記録による契約も書面とみなす |
| 3項・4項 | 手続 | あらかじめ別の書面を交付して更新なし・満了終了を説明する。借主の承諾と政令所定の手続による電磁的方法の提供で書面交付を代替できる |
| 5項 | 効果 | 説明を欠くと更新がない旨の定めは無効になる |
| 6項 | 手続 | 期間一年以上では満了の一年前から六月前までに終了通知をしないと終了を対抗できない。遅れた通知でもその日から六か月経過後は終了を対抗できる |
| 7項 | 例外 | 居住用二百平方メートル未満では、やむを得ない事情による借主の解約申入れが認められる |
| 9項 | 例外 | 借賃改定の特約があれば32条の増減請求は適用されない |
具体例
AがBに店舗を期間三年の定期建物賃貸借で貸し、書面で契約した上で、更新がなく満了で終了する旨の別の書面を契約前に交付して説明した。満了の一年前から六月前までに終了の通知もした。
期間満了で賃貸借は終了し、Bは更新を主張できない。
反例(結論が変わる)
同じ設定で、Aが事前の書面交付と説明をしなかった場合に変える。
更新がない旨の定めは無効になる。契約は普通借家として残り、法定更新の対象になる。
関連条との違い
- 借地借家法 第26条:普通借家は所定の通知がなければ法定更新され、拒絶には正当事由が要る。定期借家は定めと手続を守れば正当事由なしで満了終了できる
- 借地借家法 第29条:普通借家で一年未満の期間は期間の定めがないものとみなされる。定期借家は一年未満でも有効
- 借地借家法 第39条:39条は取壊し予定の建物の賃貸借。目的の限定された制度で、事前説明の仕組みも違う
過去問で誤りとされた肢の型
- 宅建令和4年 問12肢1
賃貸借契約書を交付して説明すれば足りるとする誤り。事前説明の書面は契約書とは別個の書面を要する
- 管業平成29年度 問44肢1
契約は公正証書でなければならないとする誤り。公正証書による等書面で足り、書面があればよい
- 宅建平成30年 問12肢1
更新なしの定めだけで満了時に当然に終了を対抗できると考える誤り。一年以上では所定期間の終了通知が要り、通知が遅れた場合はその通知から六か月を経た後に終了を対抗できる
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
法令版: 2026年5月21日施行版
この条文の〇×問題(3問)
定期借家の事前説明
賃貸人AがBと定期建物賃貸借の書面契約を結び更新なしと定めても、契約前に更新がなく期間満了で終了する旨を書面交付して説明しなかった場合、その更新なしの定めは無効となる。
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正解 ○
正しい。第38条第3項は、契約とは別に、賃貸人があらかじめ更新がなく期間満了で終了する旨を記載した書面を交付して説明することを求め、これを欠くと更新なしの定めは無効となる(同条第5項)。なお、この書面は賃借人の承諾を得て電磁的方法で提供することもでき、その場合は書面を交付したものとみなされる(同条第4項)。
学習ポイント:定期借家は書面等の契約とは別に、事前の書面交付・説明が必要。
第38条第1項・第3項〜第5項
満了終了通知
期間三年の定期借家で、賃貸人Aが満了を一年前から六か月前までに通知しなくても、満了日の翌日から賃借人Bへ当然に終了を対抗できる。
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正解 ×
誤り。第38条第6項は、期間一年以上の定期建物賃貸借で、満了の一年前から六か月前までに賃借人へ終了通知をしなければ、その終了を賃借人に対抗できないとする。通知期間経過後に通知した場合でも、その通知日から六か月が経過するまでは対抗できない。更新がない旨の有効な契約であっても、終了通知の手続は別に守る必要がある。
学習ポイント:一年以上の定期借家は、満了一年前から六か月前までの終了通知が必要。
第38条第6項
居住用定期借家の中途解約
床面積百五十平方メートルの居住用定期借家で、賃借人Bが転勤によって生活の本拠として使えなくなった場合、Bは解約を申し入れることができ、原則として申入れから一か月後に終了する。
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正解 ○
正しい。第38条第7項は、床面積二百平方メートル未満の居住用定期建物賃貸借で、転勤や療養等のやむを得ない事情によって生活の本拠として使用困難となった賃借人に中途解約申入れを認める。終了は申入れから一か月経過後である。定期借家であっても、この法定の居住用中途解約を不利な特約で排除することはできない。
学習ポイント:二百平方メートル未満の居住用定期借家は、やむを得ない事情なら一か月で中途解約できる。
第38条第7項・第8項
この条文を解説で参照する過去問
第38条を解説の根拠とする過去問の肢が37肢あります。条文別の過去問ページで出題形式のまま確認できます。
解説で第38条を参照している問
問題で確認する
第38条の内容は3問の〇×問題と11問の条文穴埋めで確認できます。