第三章 宅地建物取引士
宅地建物取引業法 第18条(宅地建物取引士の登録)
この条の要点
- 実務経験と登録実務講習:登録は原則2年以上の実務経験または登録実務講習等による同等能力で可能。
- 試験地の知事への登録:最初の宅建士登録は、勤務先でなく合格試験を実施した都道府県知事へ申請。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第18条(宅地建物取引士の登録)
試験に合格した者で、宅地若しくは建物の取引に関し国土交通省令で定める期間以上の実務の経験を有するもの又は国土交通大臣がその実務の経験を有するものと同等以上の能力を有すると認めたものは、国土交通省令の定めるところにより、当該試験を行つた都道府県知事の登録を受けることができる。ただし、次の各号のいずれかに該当する者については、この限りでない。
一 宅地建物取引業に係る営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者
二 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
三 第六十六条第一項第八号又は第九号に該当することにより第三条第一項の免許を取り消され、その取消しの日から五年を経過しない者(当該免許を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の期日及び場所の公示の日前六十日以内にその法人の役員であつた者で当該取消しの日から五年を経過しないもの)
四 第六十六条第一項第八号又は第九号に該当するとして免許の取消処分の聴聞の期日及び場所が公示された日から当該処分をする日又は当該処分をしないことを決定する日までの間に第十一条第一項第五号の規定による届出があつた者(宅地建物取引業の廃止について相当の理由がある者を除く。)で当該届出の日から五年を経過しないもの
五 第五条第一項第四号に該当する者
六 拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者
七 この法律若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反したことにより、又は刑法第二百四条、第二百六条、第二百八条、第二百八条の二、第二百二十二条若しくは第二百四十七条の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者
八 暴力団員等
九 第六十八条の二第一項第二号から第四号まで又は同条第二項第二号若しくは第三号のいずれかに該当することにより登録の消除の処分を受け、その処分の日から五年を経過しない者
十 第六十八条の二第一項第二号から第四号まで又は同条第二項第二号若しくは第三号のいずれかに該当するとして登録の消除の処分の聴聞の期日及び場所が公示された日から当該処分をする日又は当該処分をしないことを決定する日までの間に登録の消除の申請をした者(登録の消除の申請について相当の理由がある者を除く。)で当該登録が消除された日から五年を経過しないもの
十一 第六十八条第二項又は第四項の規定による禁止の処分を受け、その禁止の期間中に第二十二条第一号の規定によりその登録が消除され、まだその期間が満了しない者
十二 心身の故障により宅地建物取引士の事務を適正に行うことができない者として国土交通省令で定めるもの
②前項の登録は、都道府県知事が、宅地建物取引士資格登録簿に氏名、生年月日、住所その他国土交通省令で定める事項並びに登録番号及び登録年月日を登載してするものとする。
条文の要点
宅地建物取引士の登録とは、資格試験の合格者が実務経験または同等の能力認定を条件に、その試験を行った都道府県知事から受ける登録です(18条1項)。
登録先は勤務先や居住地ではなく試験を行った県の知事です。実務経験がなくても登録実務講習等の同等認定で登録でき、合格に期限はありません。
宅地建物取引士の登録の欠格と登録先
欠格事由は免許の5条と似た体系ですが別の規定で、役員・使用人の欠格ではなく本人の事由だけが問題になります。成年被後見人等であること自体は欠格ではなく、事務禁止の処分期間中に登録が消除された者はその期間が満了するまで再登録できません。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項柱書き | 要件 | 試験合格に加え、省令の期間以上の実務経験または大臣が認める同等以上の能力が要り、登録は試験を行った知事から受けます。 |
| 1項ただし書1号・2号 | 要件 | 宅建業に係る営業で成年者と同一の行為能力を持たない未成年者と、破産手続開始の決定を受け復権を得ない者は登録できません。 |
| 1項ただし書3号〜8号 | 要件 | 免許の不正取消しや聴聞中の逃げ込み廃止から5年、拘禁刑以上または列挙罪の罰金から5年、暴力団員等は登録できません。 |
| 1項ただし書9号〜11号 | 要件 | 不正による登録消除や聴聞中の消除申請から5年、事務禁止期間中の消除は禁止期間の満了まで登録できません。 |
| 2項 | 手続 | 登録は都道府県知事が取引士資格登録簿に氏名・生年月日・住所・登録番号等を登載して行います。 |
具体例
Aは甲県で取引士資格試験に合格し、乙県の宅建業者B社に就職しました。Aは2年以上の実務経験があります。
勤務先は乙県でも、登録の申請先は試験を行った甲県知事です。乙県知事に新規登録はできません。
反例(結論が変わる)
同じAがすでに甲県知事の登録を受けた後で、乙県のB社の事務所の業務に従事する場合に変えます。
すでに登録があるため新規登録ではなく、19条の2の登録移転の申請ができます。
関連条との違い
- 宅建業法 第19条の2:19条の2は登録済みの者が他県の事務所に従事するときの登録移転、本条は試験地の知事への最初の登録です。
- 宅建業法 第5条:5条は業者の免許の欠格で役員・政令使用人の欠格が法人に及ぶ点が特徴、本条は取引士個人の登録の欠格です。
- 宅建業法 第22条の2:22条の2は登録済みの者への取引士証の交付手続、本条はその前提となる資格登録です。合格・登録だけでは取引士になりません。
過去問で誤りとされた肢の型
- 宅建令和2年10月 問34肢1
勤務先の県の知事に登録を申請するとする誤り。登録先は試験を行った県の知事で、勤務地は関係しません。
- 宅建令和2年10月 問28肢1
合格から10年以内に登録しないと合格が無効になるとする誤り。合格に期限はありません。
- 宅建令和4年 問33ア
未成年者はどんな場合も登録できないとする誤り。宅建業の営業で成年者と同一の行為能力があれば登録できます。
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
法令版: 2026年4月1日施行版
この条文の〇×問題(2問)
実務経験と登録実務講習
宅建士試験に合格したAは宅地建物取引の実務経験が2年未満である。Aが所定の登録実務講習を修了して同等以上の能力があると認められ、欠格にも当たらないなら、実務経験が2年未満というだけでは登録を拒まれない。
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正解 ○
正しい。第18条第1項は、所定期間の取引実務経験を有する合格者のほか、国土交通大臣が実務経験者と同等以上の能力を有すると認める合格者にも登録を認める。省令上の登録実務講習修了は後者の方法に当たる。したがって2年の実務経験がない場合でも、講習修了等により要件を満たし、欠格事由がなければ登録を受け得る。
学習ポイント:登録は原則2年以上の実務経験または登録実務講習等による同等能力で可能。
第18条第1項、宅地建物取引業法施行規則第13条の15・第13条の16
試験地の知事への登録
甲県で宅建士資格試験に合格したBが、乙県の宅建業者に就職した。Bの最初の宅建士登録は勤務先の乙県知事が行い、甲県知事へ申請する必要はない。
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正解 ×
誤り。第18条第1項による資格登録を行うのは、合格した資格試験を実施した都道府県知事である。甲県の試験に合格したBは、乙県で就職したというだけで最初から乙県知事へ登録できない。登録後に乙県の事務所の業務に従事するなど所定の条件を満たせば登録の移転を申請し得るが、初回登録の申請先とは区別する。
学習ポイント:最初の宅建士登録は、勤務先でなく合格試験を実施した都道府県知事へ申請。
第18条第1項、関連:第19条の2
根拠・関連条文
この条文を解説で参照する過去問
宅建令和7年 問42ア
二つ以上の都道府県において宅地建物取引士資格試験に合格した者は、当該試験を行った都道府県のうち試験日が遅い都道府県知事の登録以外を受けることができない。
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誤り
誤り。複数県で合格しても、いずれの試験地の知事の登録も受けられる(遅い試験地限定ではない)。
宅建令和6年 問29肢1
宅地建物取引士資格試験に合格した者は、宅地又は建物の取引に関する実務の経験期間が2年に満たない場合であっても、試験に合格した日から1年以内に登録を受けようとするときには、都道府県知事が指定する講習を受講することにより、宅地建物取引士の登録を受けることができる。
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誤り
誤り。実務経験2年未満の登録には指定講習の受講が必要だが、『試験合格日から1年以内に登録する場合』という限定の記述は誤り(期間制限はない)。
宅建令和4年 問33ア
宅地建物取引士資格試験は未成年者でも受験することができるが、宅地建物取引士の登録は成年に達するまでいかなる場合にも受けることができない。
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誤り
誤り。未成年者でも宅建業に係る営業に関し成年者と同一の行為能力を有すれば登録を受けられる。
宅建令和3年10月 問28肢4
甲県で宅地建物取引士資格試験を受け、合格したFは、乙県に転勤することとなったとしても、登録は甲県知事に申請しなければならない。
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正しい
正しい。登録は試験を実施した都道府県知事(甲県)に申請する。
宅建令和3年10月 問35イ
宅地建物取引士(甲県知事登録)が宅地建物取引士としての事務禁止処分を受け、その禁止の期間中に本人の申請により登録が消除された場合は、その者が乙県で宅地建物取引士資格試験に合格したとしても、当該期間が満了していないときは、乙県知事の登録を受けることができない。
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正しい
正しい。事務禁止期間中の登録消除後は、期間満了まで再登録できない。
宅建令和2年12月 問38イ
未成年者も、法定代理人の同意があれば、宅地建物取引業者の事務所に置かれる専任の宅地建物取引士となることができる。
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誤り
誤り。未成年者は専任の宅地建物取引士になれない(欠格事由)。
宅建令和2年12月 問38エ
成年被後見人又は被保佐人は、宅地建物取引士として都道府県知事の登録を受けることができない。
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誤り
誤り。成年被後見人・被保佐人は『心身の故障により取引士の事務を適正に行うことができない者』の欠格事由に該当しなければ登録できる(被後見人等であること自体は欠格事由でなくなった—法改正後は能力条項)。
宅建令和2年12月 問43肢4
宅地建物取引士が、刑法第222条(脅迫)の罪により、罰金の刑に処せられ、登録が消除された場合、刑の執行を終わり又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過するまでは、新たな登録を受けることができない。
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正しい
正しい。罰金以上の刑による登録消除後は、刑の執行終了等から5年経過まで再登録できない。
宅建令和2年10月 問28肢1
宅地建物取引士資格試験に合格した者は、合格した日から10年以内に登録の申請をしなければ、その合格は無効となる。
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誤り
誤り。合格に有効期間はなく、登録申請に10年の制限はない。
宅建令和2年10月 問34肢1
甲県で宅地建物取引士資格試験に合格した後1年以上登録の申請をしていなかった者が宅地建物取引業者(乙県知事免許)に勤務することとなったときは、乙県知事あてに登録の申請をしなければならない。
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誤り
誤り。宅地建物取引士の登録は、試験を行った都道府県知事に対して申請する(宅建業法18条1項)。甲県で合格した者は、乙県知事免許の業者に勤務する場合でも、甲県知事に登録を申請する。
ほか4肢は、各過去問のページで確認できます。
問題で確認する
第18条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。