第一編 総則/第二章 人/第三節 行為能力
民法 第9条(成年被後見人の法律行為)
重要度は過去問の出題年度などをもとにした当サイトの評価です。
この条の要点
- 日常生活に関する行為の取消し対象外:日常生活行為は取消しの対象外。保護の必要性はただし書の例外を作らない。
- 行為能力の制限による取消権の消滅時効:取消権は追認可能時から5年、行為時から20年で時効消滅する。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第9条(成年被後見人の法律行為)
成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。
条文の要点
成年被後見人の法律行為とは、後見開始の審判を受けた者がする行為で、日常生活に関する行為以外は取り消せます(9条)。
未成年者の行為と違い同意の制度がなく、成年後見人の事前の同意を得た行為でも取り消せます。取消しは善意の第三者にも対抗でき、詐欺の取消しにある第三者保護の制限は及びません。
成年被後見人の法律行為の取消しの強さ
贈与の受領のように本人に有利に見える行為も取消しの対象で、保護の必要性とは別の画一的な仕組みです。日常生活に関する行為だけが条文上の例外で、後見人が必要と認めてもその範囲を取り消せません。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項本文 | 効果 | 成年被後見人の法律行為は取り消せる |
| 1項ただし書 | 例外 | 日用品の購入その他日常生活に関する行為は取り消せない |
具体例
成年被後見人Aが、自分の土地をBに売る契約を結びました。成年後見人Cの同意もありました。
成年後見人には同意権がなく、同意を得ていてもその契約は取り消せます。
反例(結論が変わる)
同じAが、日用品の購入をした場合に変えます。
日常生活に関する行為はただし書の例外で、取り消せません。
関連条との違い
過去問で誤りとされた肢の型
- 司法書士令和5年度 問4ア
成年後見人の同意を得た行為は取り消せないとする誤り。成年後見人には同意権がない
- 司法書士平成25年度 問4ア
被後見人の日用品の購入を取り消せるとする誤り。ただし書の例外に当たる
- 司法書士令和2年度 問7イ
制限行為能力を理由とする取消しを善意の第三者に対抗できないとする誤り。第三者保護の制限は詐欺の場合に限られる
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
法令版: 2026年6月24日施行版
この条文の〇×問題(2問)
日常生活に関する行為の取消し対象外
成年被後見人が日用品の購入その他日常生活に関する行為をした場合でも、成年後見人が本人の財産を保護するため必要があると認めるときは、その行為を取り消すことができる。
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正解 ×
誤り。民法9条ただし書は、日用品の購入その他日常生活に関する行為を取消しの対象から除外する。成年後見人が保護上必要と判断しても、この範囲の行為を取り消すことはできない。ただし書の除外は取消権者の裁量による例外を許さない明確な限定である。
学習ポイント:日常生活行為は取消しの対象外。保護の必要性はただし書の例外を作らない。
第9条ただし書
行為能力の制限による取消権の消滅時効
成年被後見人のした取消し可能な行為について、追認をすることができる時から五年間取消権を行使しないときは、その取消権は時効によって消滅し、行為の時から二十年を経過したときも同様である。
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正解 ○
正しい。民法126条は、取消権は追認をすることができる時から五年間行使しないときは時効によって消滅し、行為の時から二十年を経過したときも同様とすると定める。この規定は取消権一般に適用され、9条本文に基づく成年被後見人の行為の取消権にも及ぶ。保護のための権利でも永久に存続するわけではない。
学習ポイント:取消権は追認可能時から5年、行為時から20年で時効消滅する。
関連:第126条・第9条本文
根拠・関連条文
この条文を解説で参照する過去問
司法書士令和5年度 問4ア
成年被後見人が成年後見人の同意を得てした不動産の取得を目的とする売買契約は、行為能力の制限を理由として取り消すことができない。
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誤り
誤り。成年被後見人は、成年後見人の同意を得てした法律行為についても取り消すことができる(9条本文・判例通説)。
司法書士令和3年度 問4オ
家庭裁判所は、被保佐人の請求により、被保佐人が日用品の購入をする場合にはその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。
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誤り
誤り。被保佐人の請求により保佐人の同意を要する旨の審判を拡張することはできるが、日用品の購入その他日常生活に関する行為は同意の対象とすることができない(13条2項・9条)。
司法書士令和2年度 問7イ
成年被後見人であるAがその所有する甲土地をBに売却してその旨の登記がされ、Bが、Aが成年被後見人であることを知らないCに甲土地を売却してその旨の登記がされた後、AがBとの間の売買契約を取り消したときは、Aは、Cに対し、甲土地の所有権のAへの復帰を対抗することができない。
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誤り
誤り。制限行為能力を理由とする取消しは善意の第三者に対しても対抗できる(民法5条2項・9条参照。96条3項の第三者保護は詐欺の場合に限られる)。AはCに対して所有権の復帰を対抗できる。
司法書士令和2年度 問21ア
成年被後見人の法律行為は、日用品の購入その他日常生活に関する行為である場合には、これを取り消すことができない。
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正しい
正しい。成年被後見人の法律行為は取り消すことができるが、日用品の購入その他日常生活に関する行為は取り消すことができない(民法9条ただし書)。
司法書士平成27年度 問21ア
成年被後見人が成年後見人の同意を得てした行為は、取り消すことができない。
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誤り
誤り。成年被後見人が成年後見人の同意を得てした行為であっても、取り消すことができる(民法9条)。
司法書士平成25年度 問4ア
成年被後見人が日用品の購入をした場合には、成年後見人は、これを取り消すことができるが、被保佐人が保佐人の同意を得ないで日用品の購入をした場合には、保佐人は、これを取り消すことができない。
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誤り
誤り。日用品の購入その他日常生活に関する行為は成年被後見人の行為でも取り消すことができない(民法9条但書)。
宅建平成26年 問9肢1
成年被後見人が第三者との間で建物の贈与を受ける契約をした場合には、成年後見人は、当該法律行為を取り消すことができない。
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誤り
誤り。成年被後見人のした法律行為は原則として取り消すことができ、贈与の受領も日常生活に関する行為ではないため取消可能(民法9条)。
賃管令和7年度 問1肢1
成年被後見人である賃貸人が賃貸借契約を締結した場合において、締結時に賃貸人の判断能力が回復していたとしても、家庭裁判所により後見開始の審判が取り消されていなければ、成年後見人は、賃貸人本人が3か月前に締結した賃貸借契約を取り消すことができる。
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正しい
正しい。成年被後見人の法律行為は、判断能力が回復していたとしても後見開始の審判が継続する間は取り消すことができる。
管業令和2年度 問3肢1
成年被後見人であるAが、甲を第三者に売却した場合に、Aが成年後見人Bの事前の同意を得ていたときは、Aは、甲の売買を取り消すことができない。
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誤り
誤り。成年後見人は同意権を有せず、成年被後見人が後見人の事前同意を得てした売却も取り消すことができる。
管業令和元年度 問1肢1
未成年者が法定代理人の同意を得ずに相続を放棄した場合において、当該未成年者及びその法定代理人は、制限行為能力を理由に、相続の放棄の意思表示を取り消すことができない。
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誤り
誤り。未成年者が法定代理人の同意なくした相続放棄の意思表示は、制限行為能力を理由に取り消すことができる。
問題で確認する
第9条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。