第三章 国民の権利及び義務・人身の自由・刑事手続
日本国憲法 第31条
法定手続の保障(適正手続)
第31条は、法律の定める手続によらなければ生命・自由を奪われ、刑罰を科せられないことを定める適正手続保障(デュー・プロセス)の条文です。刑事手続だけでなく行政手続にも及ぶと解釈されています。
条文原文
第31条
何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
条文の要点
法定手続の保障とは、生命・自由を奪い又は刑罰を科すには法律の定める手続によらなければならないとする原則です(31条)。
実体上の根拠だけでなく手続の適正そのものを国に課します。直接には刑事手続を対象としますが、行政手続にも及び、罰則の構成要件の明確性や行政処分における事前手続の要否を判断する基盤になります。
法定手続の保障の及ぶ範囲
行政手続が刑事手続でないとの理由だけで、すべてが保障の枠外とはいえません(判例)。行政処分で事前の告知・弁解・防御の機会を与えるかは、制限される権利利益の内容・程度と、達成しようとする公益の内容・程度・緊急性を総合較量して決まり、常に必要とはされません。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 本文(対象) | 要件 | 生命や自由を奪う処置、刑罰を科す行為には法律で定められた手続を経ることが要件 |
| 本文(射程) | 効果 | 手続の内容自体の適正が保障され、刑事手続に限らず行政手続にも及びうる |
具体例
密輸事件で有罪となったBに対する付加刑として、第三者Aの所有する船舶が没収されようとしています。Aにはその没収について告知・弁解・防御の機会がなく、Bには刑事手続の中でその機会が与えられています。
被告人BではないAの所有物を、Aに告知・弁解・防御の機会を与えず没収することは31条に違反します(判例)。
反例(結論が変わる)
同じ設定で、没収される物がAではなく被告人B自身の所有物である場合に変えます。
Bには防御の機会が与えられているため、この没収には第三者所有者に機会を与えないという本判例の違憲の問題は生じません。適正手続一般が不要になるわけではありません。
関連条との違い
過去問で誤りとされた肢の型
- 司法書士令和2年度 問2オ
法定手続の保障は刑事手続に限られるとする誤り。行政手続にも及びうると判示されている
- 行政書士令和5年 問25肢4
成田新法訴訟で同法が31条違反とされたという誤り。保障の射程は行政手続に及ぶとしつつ、同法の規定は違憲とはされなかった
- 司法書士令和2年度 問2ア
広く不明確な処罰規定をそのまま合憲とする誤り。『淫行』を限定解釈して初めて明確性の要件を満たすとされた
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
判例
第三者所有物没収事件最高裁判所大法廷 1962年11月28日
被告人以外の第三者の所有物を、告知・弁解・防御の機会を与えることなく没収することは、適正な法律手続によらない制裁として31条(および29条)に違反する
成田新法事件最高裁判所大法廷 1992年7月1日
31条の保障は行政手続にも及びうるが、事前の告知・弁解・防御の機会を与えるかは、制限される権利利益と公益の内容・程度・緊急性の総合較量で決まり、常に必要ではない
法令版: 1947年5月3日施行版
この条文の〇×問題(2問)
法定手続保障の意義
生命・自由を奪い又は刑罰を科すには、法律の定める手続を経ることが必要とされ、実体上の根拠だけでなく手続の適正も要求される。
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正解 ○
正しい。生命・自由を奪い又は刑罰を科すには法律の定める手続が必要とされ、実体法上の根拠だけでなく手続法の適正も要求される。デュープロセスの保障として、手続の内容自体の適正性も問題となる規定である。手続の内容自体の適正も要求される。
学習ポイント:法定手続の保障は実体根拠だけでなく手続の適正を要求する。
第31条
法定手続保障の適用範囲
法定手続の保障は刑事手続における手続の適正に限られ、行政手続における手続保障は憲法上の要請ではない。
正解と解説を見る
正解 ×
誤り。法定手続の保障は刑事手続に限られず、行政手続においても適正な手続の保障として及ぶと解される。対象行為が刑罰に限られない以上、手続保障の要請は行政分野にも広がる。刑事手続だけの問題ではない。手続保障は行政分野にも及ぶと解される。
学習ポイント:法定手続の保障は刑事手続に限らず行政手続にも及ぶ。
第31条、関連:第32条・第34条
MEMORY POINTS
穴埋めで覚えるポイント
- 「法律の定める手続によらなければ」
- 「その生命若しくは自由を奪はれ」
- 「その他の刑罰を科せられない」
関連判例
よくある疑問
第31条の適用範囲は刑事手続だけ?
いいえ。判例・通説では刑事手続に限らず、行政上の不利益処分にも適正手続の保障が及ぶと解釈されています(成田新法事件など)。
関連条文
この条文の過去問
第31条を解説の根拠とする過去問です。実際の出題形式で確認できます。
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