第一編 総則/第七章 時効/第一節 総則
民法 第150条(催告による時効の完成猶予)
重要度は過去問の出題年度などをもとにした当サイトの評価です。
この条の要点
- 催告による完成猶予の効果内容:催告は六か月の猶予だけでリセットしない。更新には承認や判決確定などの事由が要る。
- 猶予期間中の再度の催告の効力:猶予中の再度の催告は無効力。猶予を延ばすには提訴や協議合意など別の事由が必要。
条文原文
色付きの語句は試験で問われる重要な語句です。
第150条(催告による時効の完成猶予)
催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
②催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
条文の要点
催告による時効の完成猶予とは、催告の時から6か月の間時効の完成を遅らせる制度で、時効期間が新たに進行を始めるわけではありません(150条1項)。
猶予されている間の再度の催告には完成猶予の効力がありません。時効を確定的に防ぐには6か月以内に裁判上の請求等に出る必要があり、催告の方法に制限はなく普通郵便でも足ります。
催告による時効の完成猶予の限界
完成猶予は期間の進行を止める制度ではありません。本来の時効期間が催告から6か月以内に満了する場合、完成が6か月経過時まで延び、そこから残り期間を加算しません。本来の満了がもっと後なら、その満了時まで時効は完成しません。
| 項 | 役割 | 内容 |
|---|---|---|
| 1項 | 効果 | 催告があったときは、その時から6か月の間時効は完成しない |
| 2項 | 例外 | 猶予されている間の再度の催告には完成猶予の効力がない |
具体例
本来の時効完成まで1か月の時点で、債権者Aが債務者Bに普通郵便で支払を催告しました。その4か月後に再度催告しましたが、訴えは提起せず、他の完成猶予・更新事由もありません。
本来の期間は最初の催告から1か月後に満了していますが、完成は6か月経過時まで猶予されます。再度の催告で延長されず、残り1か月をその後に足すこともありません。
反例(結論が変わる)
同じ設定で、Aが最初の催告から6か月以内に支払を求める訴えを提起した場合に変えます。
裁判上の請求という別の事由が生じ、その事由が終了するまでの間は時効が完成しません(147条)。
関連条との違い
過去問で誤りとされた肢の型
- 司法書士令和4年度 問6エ
猶予中の再度の催告で新たに6か月の猶予が始まるとする誤り。再度の催告は効力を有しない
- 管業令和4年度 問9肢1
6か月以内の再度の請求で改めて猶予効力が生じるとする誤り。確定的に防ぐには訴えの提起等が要る
- 司法書士平成28年度 問6エ
一部請求を明示した訴えは残部に裁判上の催告の効力を生じないとする誤り。一部明示なら残部にも及ぶ
ほかの誤り肢は「この条文を解説で参照する過去問」で確認できます。
判例
明示的一部請求と残部の時効の取扱い最高裁判所 2013年6月6日
一部請求を明示した訴えの提起は残部に裁判上の催告の効力を生じる。本来の時効期間が満了している場合、訴訟終了後6か月以内に別の措置を取らなければ残部の時効は完成する
法令版: 2026年6月24日施行版
この条文の〇×問題(2問)
催告による完成猶予の効果内容
債権者が債務者に対して支払を求める旨の催告をした場合、催告の時点で時効期間がリセットされ、そこから改めて消滅時効の期間が進行する。
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正解 ×
誤り。催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間時効が完成しないにすぎず、時効期間が新たに進行を始めるわけではない。時効の更新には権利の承認や確定判決による権利の確定などが必要で、催告は訴訟準備のための一時的な猶予にすぎない。
学習ポイント:催告は六か月の猶予だけでリセットしない。更新には承認や判決確定などの事由が要る。
第150条1項、関連:第147条2項・第152条1項
猶予期間中の再度の催告の効力
催告によって時効の完成が猶予されている間に、債権者が債務者に対して何度も催告を繰り返しても、二度目以降の催告によって新たな完成猶予の効力は生じない。
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正解 ○
正しい。催告による時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、時効の完成猶予の効力を有しない。催告は訴えの提起などの準備のための暫定的な猶予であり、繰り返しによって猶予期間を延長することは認められていない。
学習ポイント:猶予中の再度の催告は無効力。猶予を延ばすには提訴や協議合意など別の事由が必要。
第150条2項
根拠・関連条文
この条文を解説で参照する過去問
司法書士令和8年度 問6ア
Aは、令和7年9月1日、Bに対し、売買代金の支払を催告し、令和8年2月1日、再度その支払を催告した後、同年5月1日、その支払を求める訴えを提起した。この場合には、Bは、同年7月1日、本件債権の消滅時効を援用することができる。
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正しい
正しい。繰り返しの催告には完成猶予の効力がない(150条2項)。R7.9.1の催告による猶予期間(6か月)経過後に時効が完成しており、その後の訴え提起では更新されないので、R8.7.1に援用できる。
司法書士令和4年度 問6エ
催告によって時効の完成が猶予されている間に、再度の催告があった場合には、再度の催告があった時から6か月を経過するまでの間は、時効は完成しない。
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誤り
誤り。催告による完成猶予中の再度の催告は、時効の完成猶予の効力を有しない(150条2項)。
司法書士平成30年度 問6イ
売買契約において、売主が、自己の目的物引渡債務を履行していないにもかかわらず、代金の支払期限が到来したことから買主に対し売買代金支払債務の履行を催告した場合において、催告の時から6か月以内に支払督促の申立てをしたときは、その売買代金支払債務について消滅時効は中断する。
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正しい
正しい。催告の後6か月以内に支払督促の申立てをすれば、時効は中断する(出題当時の民法153条・147条1号)。自己の債務を履行していない売主がした催告であっても、時効中断の効力は妨げられない。(現行法では、催告により6か月間時効の完成が猶予され(150条1項)、その間に支払督促の申立てをすれば、その事由が終了するまで時効は完成しない(147条1項2号))
司法書士平成28年度 問6エ
Aは、約定の履行期に本件自動車を引き渡したが、Bが残代金の支払をしないため、Bに対し、残代金のうち60万円について、一部請求である旨を明示して、代金支払請求の訴えを提起した。この訴えの提起によっては、残代金のうち残部の40万円の支払請求権について、裁判上の催告としての時効中断の効力は生じない。
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誤り
誤り。数量的一部請求であることを明示した訴えの提起は、残部について裁判上の催告としての効力を生じ、時効が中断する(最判平25.6.6。現行法では催告による時効の完成猶予(民法150条1項))。
マン管令和3年度 問13肢1
管理組合が、管理費を滞納している区分所有者Aに対して、内容証明郵便をもって累積している滞納管理費分の支払の請求をした場合には、6ヵ月間の時効の完成猶予の効力が生じるが、その期間中になされた再度の支払の請求には、時効の完成猶予の効力が生じない。
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正しい
正しい。催告による完成猶予は6か月間で、猶予期間中の再度の催告に猶予効力は生じない(民法150条)。
管業令和7年度 問40肢2
管理組合が、管理費を滞納している区分所有者に対し書面で支払の催告を行う場合には、内容証明郵便でなく普通郵便であっても、時効の完成猶予としての効力が生じる。
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正しい
正しい。催告は内容証明郵便に限られず、普通郵便による書面の催告でも時効の完成猶予の効力が生じる。
管業令和4年度 問2肢3
債権者が、債務者に対して金銭の支払を求めて訴えを提起した場合に、確定判決によって権利が確定したときは、時効が更新される。
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正しい
正しい。確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は更新する。
管業令和4年度 問9肢1
管理組合が、管理費の滞納者に対し、滞納管理費の支払を内容証明郵便で請求した後、その時から6箇月を経過するまでの間に、再度、滞納管理費の支払を内容証明郵便で請求すれば、あらためて時効の完成猶予の効力が生じる。
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誤り
誤り。催告による時効の完成猶予は6箇月を経過するまでの間に行う訴えの提起等で確定し、再度の催告だけでは新たな猶予効力は生じない。
管業令和3年度 問5肢2
Aが、管理費を滞納している区分所有者Cに対して、管理費の支払を催告した場合に、その時から6箇月を経過するまでに管理組合が再度催告をしたときには、再度の催告は時効の完成猶予の効力を有しない。
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正しい
正しい。催告による時効の完成猶予は6箇月を限り、6箇月内の再度の催告は完成猶予の効力を有しない。
管業平成28年度 問10肢2
滞納者に対して、普通郵便による督促をした場合、その後6箇月以内に裁判上の請求をすれば、普通郵便が滞納者に到達した時に、管理費債権の消滅時効が中断したこととなる。
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正しい
正しい。催告後6か月以内に裁判上の請求をすれば、催告到達時に消滅時効が中断する(民法150条)。
問題で確認する
第150条の内容は2問の〇×問題と1問の条文穴埋めで確認できます。