資格ジュピター条文穴埋め・判例演習
教室の黒板の前で、紫の蝶ネクタイの黒猫のすみちゃんが指し棒で黒板を指し、机に座った赤い首輪の茶白の猫のそらちゃんが鉛筆でノートをとっている色鉛筆のイラスト
きょうの論点所有権の登記は
「誰が」
申請できるか
すみちゃんそらちゃん

授業2026年10月17日(土)・司法書士すみそら教室

所有権の登記は誰が申請できるか

この授業で扱う条文
不動産登記法 74条・2条・32条・60条・62条・63条・64条・69条・70条・77条・93条・98条・107条・111条・113条・118条・69の2条
中心の概念
所有権の保存の登記
照合した法令
不動産登記法(2026-06-24施行版)

すみちゃん

今日は「所有権の登記を申請できるのは誰か」の問題を出します。

第1問 所有権の保存の登記

すみちゃん

表題登記だけがある建物に、初めて所有権の登記、つまり所有権の保存の登記をします。この登記を申請できる人を5通り答えてください。

ヒントを見る
  • 登記の表題部に記録されている人と、その権利を一般承継した人が出発点です。
  • 確定判決・収用・区分建物も手掛かりになります。
答え・解説を見る

正解の一覧

  1. 表題部所有者
  2. 表題部所有者の相続人その他の一般承継人
  3. 所有権を有することが確定判決によって確認された者
  4. 収用によって所有権を取得した者
  5. 区分建物の場合の、表題部所有者から所有権を取得した者

すみちゃん

気になるポイントはありますか?

そらちゃん

区分建物だけ、買った人も申請できるのはどの条文ですか?

すみちゃん

74条2項です。区分建物では、表題部所有者から所有権を取得した者も、保存の登記を申請できます。1項の各号に、この2項を足して5通りです。

すみちゃんひとつずつ条文で確かめましょう。

  • 表題部所有者 — 74条1項1号のとおりです。74条1項1号
  • 表題部所有者の相続人 — 74条1項1号は「その相続人その他の一般承継人」です。相続人だけでなく、合併で権利を承継した法人なども含みます。74条1項1号
  • 確定判決で所有権を確認された人 — 74条1項2号のとおりです。74条1項2号
  • 表題部所有者から買った人(区分建物だけ) — 74条2項により、申請できるのは区分建物の場合だけです。一戸建てなど区分建物でない建物では申請できません。74条2項
  • 収用で所有権を取得した人 — 74条1項3号のとおりです。74条1項3号

すみちゃん

区分建物の特別ルールには続きがあり、敷地権付き区分建物なら、敷地権の登記名義人の承諾を得なければなりません(74条2項)。

すみちゃん

では、一戸建てを表題部所有者から買った人はどうするのか。32条にこうあります。まず表題部所有者の名義で保存の登記をして、そのあと買主への移転の登記をする、という順番になります。

表題部所有者又はその持分についての変更は、当該不動産について所有権の保存の登記をした後において、その所有権の移転の登記の手続をするのでなければ、登記することができない。不動産登記法 32条1項

そらちゃん

1項の各号と2項を分けて覚えます。

その場で○×

所有権を有することが確定判決によって確認された者や、収用によって所有権を取得した者は、表題部所有者でなくても、当該不動産について所有権の保存の登記を申請することができる。

正解と解説を見る

正解は○。正しい。保存登記を申請できる者は、表題部所有者及びその一般承継人のほか、所有権を有することが確定判決によって確認された者、収用によって所有権を取得した者に限られる。列挙された者以外は申請できない。保存登記の申請権者は表題部所有者とその一般承継人、確定判決確認者、収用取得者の法定列挙に限られる。

表題部所有者から売買によって不動産の所有権を取得した者は、どのような種類の不動産であっても、自ら所有権の保存の登記を申請することができる。

正解と解説を見る

正解は×。誤り。表題部所有者から所有権を取得した者に保存登記の申請が認められるのは区分建物に限られ、しかも当該建物が敷地権付き区分建物であるときは当該敷地権の登記名義人の承諾を要する。表題部所有者からの取得者の申請は区分建物に限られ、敷地権付き区分建物ではさらに敷地権の登記名義人の承諾を要する。

区分建物でない建物について、所有権の登記がないまま表題部所有者から売買で所有権を取得した買主は、表題部所有者の変更の登記によることはできず、表題部所有者による保存の登記を経て所有権の移転の登記を受けることになる。

正解と解説を見る

正解は○。正しい。表題部所有者又はその持分の変更は、所有権の保存の登記をした後に移転の登記をする方法でなければ登記できない(32条)。区分建物でない建物の買主は保存登記の申請人になれないため(74条1項)、表題部所有者の保存登記を経て移転登記を受ける。なお、表題部所有者の相続人は直接保存登記ができ(同項1号)、区分建物では表題部所有者からの取得者も保存登記ができる(同条2項)。

この○×を演習で解く

第2問 売買による所有権の移転の登記

すみちゃん

売買を原因とする所有権移転登記です。この登記の申請人をそれぞれ答えてください。

ヒントを見る
  • 登記上、直接に利益を受ける側と不利益を受ける側に注目。
答え・解説を見る

正解の一覧

  1. 登記権利者である買主
  2. 登記義務者である売主

すみちゃん

気になるポイントはありますか?

そらちゃん

60条の「別段の定め」って、どういう場合のことですか?

すみちゃん

法令が単独での申請を認めている場合です。代金を払い終えたことは、これに当たりません。売買による移転の登記は、買主と売主が共同して申請します。

すみちゃんひとつずつ条文で確かめましょう。

すみちゃん

60条は、権利に関する登記の申請を、登記権利者と登記義務者が共同してするのが原則だと定めています。

権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。不動産登記法 60条1項

すみちゃん

言葉の意味も2条で確かめましょう。仲介業者のように間接に関わる人は、どちらにも入りません。

用語条文の定義売買の場合
登記権利者(2条12号)権利に関する登記をすることにより、登記上、直接に利益を受ける者(間接に利益を受ける者を除く)買主
登記義務者(2条13号)権利に関する登記をすることにより、登記上、直接に不利益を受ける登記名義人(間接に不利益を受ける登記名義人を除く)売主(所有権の登記名義人)

その場で○×

売買を原因とする所有権の移転の登記は、買主である登記権利者が単独で申請するのではなく、売主である登記義務者と共同して申請しなければならない。

正解と解説を見る

正解は○。正しい。権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。売買による所有権移転登記はこの共同申請原則の典型例である。権利に関する登記は登記権利者と登記義務者の共同申請が原則であり、売買による移転登記はその典型である。

売買契約の仲介業者や決済の立会人のような関係者も、その売買による所有権移転登記によって間接的な影響を受ける以上、当該登記の登記義務者に含まれる。

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正解は×。誤り。登記義務者は登記により登記上直接に不利益を受ける登記名義人に限られ、間接に不利益を受ける者は除かれる。仲介業者や立会人は直接の利益・不利益を受けないため当事者に含まれない。取引関与と登記上の当事者性は別の問題である。

権利に関する登記を共同して申請する当事者は、その登記によって登記上直接に利益を受ける者と直接に不利益を受ける登記名義人に限られ、間接に利益や不利益を受ける者は当事者とならない。

正解と解説を見る

正解は○。正しい。登記権利者は登記上直接に利益を受ける者、登記義務者は登記上直接に不利益を受ける登記名義人に限られ、いずれも間接に利益・不利益を受ける者は除かれる。そのため共同申請の当事者も直接の利害関係者に限定される。間接的な利害関係人を当事者に含めると共同申請の要件判断自体を誤るため、定義の限定まで確認する必要がある。

この○×を演習で解く

第3問 単独で申請できる移転の登記

すみちゃん

60条の共同申請の例外です。権利の移転の登記を、相手方と共同せずひとりで申請できる場合を4つ答えてください。

ヒントを見る
  • 相続・合併のほか、登記手続を命ずる確定判決に注目。
  • 遺贈は受ける人の立場が鍵です。公共事業のために取得する場面も考えましょう。
答え・解説を見る

正解の一覧

  1. 相続又は法人の合併による権利の移転の登記
  2. 登記手続を命ずる確定判決による登記
  3. 相続人に対する遺贈による所有権の移転の登記
  4. 収用による所有権の移転の登記(起業者が申請)

すみちゃん

気になるポイントはありますか?

そらちゃん

ひとりで申請できる場合は、どの条文にまとまっていますか?

すみちゃん

移転の登記なら、63条1項から3項と、収用の118条1項です。どれも「単独で申請することができる」と書かれていて、共同申請の例外だと分かります。

すみちゃんひとつずつ条文で確かめましょう。

  • 相続(法人の合併も) — 63条2項は「相続又は法人の合併」です。登記権利者が単独で申請できます。63条2項
  • 登記手続を命ずる確定判決 — 63条1項。共同して申請すべき者の一方に登記手続をすべきことを命ずる確定判決があれば、他方が単独で申請できます。63条1項
  • 遺贈(相続人に対する遺贈だけ) — 63条3項が単独申請を認めるのは、相続人に対する遺贈だけです。相続人でない人への遺贈は、60条の共同申請に戻ります。63条3項60条1項
  • 収用による所有権の移転 — 118条1項により、起業者が単独で申請できます。118条1項

すみちゃん

判決は、第1問と混同しやすいところです。63条1項が求めるのは登記手続を命ずる確定判決で、74条1項2号の所有権を確認する確定判決(保存の登記)とは、条文の言葉が違います。

すみちゃん

収用で起業者が国や地方公共団体のときは、官庁や公署が登記所に嘱託します(118条2項)。

すみちゃん

他にも次の登記を単独で申請できる場合があります。 氏名・名称・住所の変更・更正(64条) 死亡・解散で権利が消滅する旨が登記され、実際に消滅したときの抹消(69条) 契約日から10年を経過した買戻し特約の抹消(69条の2) 登記義務者が所在不明で、公示催告を経て除権決定を得たときの抹消(70条3項)

すみちゃん

次の例もあります。 根抵当権者の確定請求で元本が確定した場合の、元本確定の登記(93条) 受託者による信託の登記(98条2項) 仮登記義務者の承諾又は仮登記を命ずる処分があるときの仮登記(107条) 仮処分債権者による所有権等の登記や保全仮登記の本登記に伴う、後れる登記の抹消(111条・113条) など

その場で○×

相続により不動産の所有権を取得した相続人は、被相続人の相手方となるべき者がすでに存在しないため、登記権利者として単独で所有権の移転の登記を申請することができる。

正解と解説を見る

正解は○。正しい。相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。共同申請の相手方が存しない一般承継には単独申請が認められる。相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、共同申請の相手方が存しないため登記権利者の単独申請が認められる。

被相続人から相続人ではない第三者への遺贈によって不動産の所有権を取得した受遺者も、相続の場合と同様に、登記権利者として単独で所有権の移転の登記を申請することができる。

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正解は×。誤り。遺贈による所有権の移転の登記で単独申請が認められるのは相続人に対する遺贈に限られる。相続人以外の第三者への遺贈では遺贈義務者との共同申請が必要である。遺贈による所有権移転で単独申請ができるのは相続人に対する遺贈に限られ、第三者への遺贈は共同申請が必要である。

土地収用法による収用の裁決があった場合の当該不動産の所有権の移転の登記は、被収用者と共同せず、起業者が単独で申請することができる。

正解と解説を見る

正解は○。正しい。不動産の収用による所有権の移転の登記は、共同申請の原則にかかわらず起業者が単独で申請できる。公権力による強制的な権利取得であり、被収用者の協力を要件としない。国等が起業者のときは官庁・公署が嘱託する。

この○×を演習で解く

第4問 登記前に売主が亡くなったとき

すみちゃん

土地の売買契約をしたあと、登記をする前に売主が亡くなりました。買主への所有権の移転の登記は、誰と誰が申請しますか。

ヒントを見る
  • 買主の立場は変わりません。亡くなった売主の立場を引き継ぐのは誰でしょう。
答え・解説を見る

正解の一覧

  1. 登記権利者である買主
  2. 登記義務者である売主の相続人

すみちゃん

気になるポイントはありますか?

そらちゃん

売主の相続人は、どの条文で申請人になるんですか?

すみちゃん

62条です。登記義務者に相続があったときは、相続人がその地位で登記を申請できます。

すみちゃんひとつずつ条文で確かめましょう。

  • 買主(ひとりではない) — 買主は申請人ですが、ひとりではできません。63条2項は相続による権利の移転の登記の規定で、この事例の登記は売買による移転です。63条2項60条1項
  • 売主の相続人 — 62条により、登記義務者である売主の相続人が、その地位で申請します。62条1項

すみちゃん

そのうえで、60条のとおり、買主と売主の相続人が共同して申請します。登記するのは、相続ではなく売買による移転です。

当該登記権利者、登記義務者又は登記名義人について相続その他の一般承継があったときは不動産登記法 62条1項

そらちゃん

売主の相続人が、売主の地位で共同して申請するんですね。

その場で○×

所有権移転登記の登記義務者が死亡した場合、その相続人は被相続人の登記義務者としての地位を承継し、登記権利者と共同して当該登記を申請することができる。

正解と解説を見る

正解は○。正しい。登記権利者・登記義務者・登記名義人が申請人となれる場合に一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人も当該権利に関する登記を申請することができる。権利に関する登記でも申請人となれる者に一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人が申請権を承継する。

登記義務者から対象の不動産を譲り受けた買主は、特定承継人として譲渡人の登記義務者としての申請権を承継するから、自らが登記義務者となって当該権利に関する登記を申請することができる。

正解と解説を見る

正解は×。誤り。申請権が承継されるのは相続その他の一般承継の場合に限られる。売買による特定承継人は譲渡人の申請権を承継せず、義務者としての地位も当然には引き継がない。申請権の承継は一般承継に限定され、売買による特定承継人は譲渡人の申請権や義務者としての地位を承継しない。

この○×を演習で解く

まとめ

場面申請できる人条文
所有権の保存の登記表題部所有者・その相続人その他の一般承継人・確定判決で所有権を確認された者・収用で取得した者、区分建物なら表題部所有者から取得した者74条1項・2項
売買による所有権の移転登記権利者(買主)と登記義務者(売主)の共同60条、2条12号・13号
単独で申請できる移転相続・法人の合併、相続人に対する遺贈、登記手続を命ずる確定判決、収用(起業者)63条、118条1項など
当事者が亡くなったとき相続人その他の一般承継人が、その地位で申請62条
所有権の登記の抹消(参考)所有権の移転の登記がない場合に限り、所有権の登記名義人が単独で77条

間違えやすい点

  • 表題部所有者から買った人が保存の登記を申請できるのは、区分建物だけ
  • 単独で申請できる遺贈は、相続人に対する遺贈だけ
  • 単独申請の判決は、登記手続を命ずる確定判決(保存の登記の所有権確認の判決とは別)

関連する条文(不動産登記法)

くわしい解説

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